約3年2か月ぶりとなるオリジナルアルバム『ドキッ！』を引っ提げた全国ツアー「AYAKA HIRAHARA Concert Tour 2012 ?ドキッ！?」のファイナル公演１日目。バンドメンバーがステージに現れると徐々に客電が消え、総立ちとなったファンの拍手に迎えられて、華やかなピンクのミニドレス姿で登場した平原綾香。オープニングを飾ったのは「はじまりの風」。1フレーズ歌い終えたところで、“皆さん、こんばんはー！”と元気にあいさつ。客席にカラフルなペンライトが輝く中、“はじまりの風よ 届けメッセージ♪”と観客１人１人に語りかけるように声高らかに歌った。ステージに降り注ぐような拍手の中、地を這うようなドラムが轟き、最新シングル「スマイル スマイル」へ。地球、生き物たち、そして私たち人間……"聴く人すべてが笑顔（スマイル）になりますように"という想いを込めて平原本人が作詞。優しさ溢れる笑みを浮かべて歌った後、“平原綾香”という人間の強い意志や覚悟が感じられる「NOT A LOVE SONG」「ナミダオト」を力強い歌で聴かせた。

　“全国の皆さんの笑顔を見て元気をもらって、ここ東京に帰って来ました。この『ドキッ！』というアルバムは本当に命をかけて作りました。みんなに聴いてほしい曲がたくさんあります”と言って、『ドキッ！』から「あいたくて」、「いつもいつも」を披露。言葉ひと言ひと言、紡いでいくように心を込めて歌う彼女の歌声は、観る者の心を揺さぶり熱くさせた。

　約3000人の人の歌詞を紡いで制作された「星つむぎの歌」では、“東京の皆さん、どうか声を貸してください”と平原。カフォーン、メロディオン、木琴によるシンプルなサウンドで熱唱、最後はファン全員でサビを大合唱した。

　ステージ上でドレスを脱ぎドキッとさせたかと思えば、スパンコールがキラキラまぶしいセクシーな衣装に早変わり。「Night in Tunisia」では、ステージ中央でベーシストと向き合い、ヒューマンビートボックスを織り交ぜた歌で、“楽器”のように声を巧みに操った。そして「Spain」では、靴を履き替えてハットを被り、グッと大人っぽくなった彼女は、カフォーンとベースと共に歌いながらタップダンスを披露。ドキッとするほど大人カッコいい姿でファンを魅了した。また、MCを挟んで歌唱した「HUSH HUSH」では、オーディエンス全員と振り付きで歌う場面も。

　「Circle Game」「Re:PEPPER」「JOYFUL,JOYFUL」と懐かしいメンバーをメドレーで聴かせた後、一旦ステージを降りた平原。バックバンドによるインスト曲の後、裾の長い華やかなドレスで再び登場。ショパンの「ノクターン」をモチーフに英詞で切なく“愛”を綴った楽曲「ノクターン」、“明日”という一筋の光を見つけて生きようする姿を歌った感動的なバラード「明日」、デビュー曲である名曲「Jupiter」と、その紗がかかったような低音と凛とした高音は、身動きが取れないほどの圧倒的なパワーを秘めていた。そんな彼女のスピリチュアルな歌声は、心の奥の柔らかい部分に触れ、熱いものが込み上げた。鳴り止まない賞賛の拍手の中、本編ラストは『ドキッ！』から「この想い届け」。ステージから扇状に広がる光の中、“一瞬一瞬を大切に生きていく”という想いを込めて歌った彼女。歌い終えると場内はスタンディングオベーションとなった。

　来年デビュー10周年イヤーを迎える彼女。“コンサートでステージに立った時、ワクワク、ドキドキする気持ちは10年経っても変わらないです。ステージの上に住みたいくらいコンサートが好きです（笑）。それくらい生きがいです。また来年もよかったら皆さんいらしてください。またお会いしましょう！”と言って、アンコールラストに「My Road」を披露。ステージの上の彼女自身はもちろん、客席も花を咲かせたように笑顔いっぱいにした。

　まさしくツアータイトル通り“ドキッ！”とさせる“あたらしい平原綾香”で魅せた彼女。そして癒し、励まし、救い、気づき……煩悩も邪念も浄化するような、凛々しく生命力に満ちた彼女の歌声は、観る者の心の中に一瞬一瞬を大切に生きていくことの大切さ、生き抜く力を与えた。彼女に贈られた歓声と拍手は、この日の感動と共鳴の大きさを物語っていた。

【取材・文：牧野りえ】