ソロデビューから15年目に突入したことを記念して、その集大成として“超コラボ・アルバム”『ガチダチ』を今年１月にリリースした浜崎貴司。浜崎がライフワークとして行なっている弾き語りツアー「LIFE WORKS LIVE?Since2011/終わりなきひとり旅」、その42回目の公演は“『ガチダチ』スペシャル”と銘打たれ、アルバムでコラボしたアーティストが、shibuya duo MUSIC EXCHANGEに大集合したのだった。

　挨拶MC代わりに、♪たくさん旅して東京に戻ってきたぜ♪とトーキング・ブルース風に歌う「今日のブルース」で始まったライブは、次々とゲストが登場する。まずトップはボーカリスト＆ギタリストのおおはた雄一だ。「焼けちゃったような色のギターですが、いい音するんです」と、おおはたの持っているギターを紹介して、ゆったりとしたシャッフルのリズムで名曲カバー「プカプカ」からコラボ曲「ウィスキー」へのメドレー。昔の酒場で鳴っていたラグタイム風のアレンジは、大人の男たちの魅力を漂わせる。終わって「ウィスキー、飲みたくなっちゃいますよね」と浜崎がニッコリおおはたを送り出す。「次は紅一点、中村 中ちゃん！」と呼び込むと中村は「上から読んでも下から読んでも中村 中です」と自己紹介した後、浜崎と斉藤和義の楽屋での笑えるエピソードを色っぽく話す。すると場内が急に華やいだ。コラボ曲「セナカアワセ」はそんな雰囲気が似合うデュエット・ナンバーで、中村はピアニカの演奏と同じビブラートで歌って、オーディエンスの心を揺さぶった。

　２曲、浜崎のソロに戻った後、中盤の盛り上がりは斉藤和義。この二人ならではのコラボ曲「デタラメ」が楽しい。でたらめなことが多い世の中を皮肉る痛快ソングで、会場はハンドクラップの嵐。「せっかく来てくれたので、やります」と浜崎が言って歌ったのは、二人の地元・宇都宮を舞台にして04年に共作した「オリオン通り」だった。先日、インタビューした際、浜崎に「この二人が歌うと“栃木なまり”になる」と話したら「そんなことはない」と怒っていたが、「オリオン通り」では栃木メロディが炸裂(笑)。久々の名曲生演奏は素晴らしい出来だった。次なる大暴れは、佐藤タイジ。リズムの切れではロックシーン屈指のギタリスト佐藤は、サンプラ―を使ってパワフルなグルーヴを紡ぎ出す。アコースティック・ライブの域を超えてダイナミックなサウンドがデュオのフロアを埋め尽くしたのだった。対照的にシブかったのが高木 完の「ヒバナ」。ヒップホップとフォークをミックスした独特の味わいは、この日も健在。ライブのいいアクセントになる。

　本編ラストは「幸せであるように」。浜崎の永遠の名曲は、静かなたたずまいの中に強靭な哲学を感じさせて、今日のライブの中心人物の揺るぎない姿勢をオーディエンスに伝えてくれた。

　アンコールの「君と僕」は、奥田民生とのコラボ曲。当初は浜崎が一人で歌う予定だったのだが、ＯＴの飛び入りに会場は大喜び。が、この予定外のゲストをいちばん喜んだのは浜崎自身だった。「これは再会をテーマに作った歌ですが、僕とＯＴの歌ではなく、僕とみなさんの歌です」と紹介して「じゃ、練習も兼ねて」と歌い出す。と、奥田がピックを落とすハプニング。いちばん先に浜崎が笑いだし、続いて場内に大爆笑が巻き起こる。そんな爆笑シーンがあっただけに、ゆっくりと友との再会を味わうこの歌がよけいに光ったのだった。

　さらにゲスト全員がステージに並んで歌った沢田研二カバー「勝手にしやがれ」が凄かった。浜崎のアイデアで、ハーモニーは無し。全員が同じメロディを歌う。それぞれ超個性的なボーカリスト７人が歌い出す最初の一瞬が、このライブの最高の瞬間だった。同時に、“お互いの歌を楽しむ”という傑作アルバム『ガチダチ』のリアル版として、アーティストの交流の美しさを体感させてくれたのだった。文字どおり「ひとつになること」のエネルギーは、それぞれの違いがあればこそだという真実が、音楽になった一瞬だった。

【取材・文：平山雄一】