6月20日、昨年11月にリリースされたベストアルバム『BEST STORY?Love stories?』『BEST STORY?Life stories?』を引っさげたライヴを国立代々木第一体育館にて行ったJUJU。ホールからアリーナへと会場も大きくなり、内容も一新して望んだアリーナツアーももう終盤戦だ。ライヴは「奇跡を望むなら...」でスタート。目の前で本人が唄っているという臨場感がもっとも伝わる歌唱スタイルであろうアカペラで唄い始めた。15000人がその歌声に聞き入っていると、ストリングスとピアノが静かに重なる。曲が進むにつれ、どんどん楽器が増え、ダイナミックに展開。音が重なるにつれ、場内の空気の振動も大きくなり、鳥肌が立つような感動を覚える。なんて贅沢なんだろう。これぞ、ライヴ会場に足を運んだ人だけが味わえる空気感だ。あいにくの雨模様だったこの夜にも似合う「桜雨」、夜景を映し出したスクリーンをバックに唄った「素直になれたら」と、じっくり歌を堪能するような曲が続く。しっとりした会場の雰囲気に合わせ、JUJUの「コンバンワ」の挨拶も柔らかだ。

「デビューして初めて東京でライヴをやらせてもらったときは、こんなアリーナでライヴをやらせてもらえるようになるとは思わなかった」と、ここにたどり着くまで、決して平坦ではなかったことをうかがわせる最初のMC。言葉の一つ一つに、目の前にいるファンへの感謝がこもる。中盤には、ネコに扮したキャラクターをJUJUに見立てたアニメで、JUJUのヒストリーを紹介。JUJUがいかに音楽と出会い、彼女のルーツミュージックであるジャズに傾倒し渡米したのかがスクリーンで流れる。ストリートで売られていたカセットをすり切れるまで聞いたというエピソードの後、細身のセクシーなドレスに着替えたJUJUが登場し、件のフェイバリットソングであるウエイン・ショーターの「Lullaby Of Birdland」のカバーを披露。6月26日にリリースのジャズアルバム『DELICIOUS?JUJU’s JAZZ 2nd Dish?』からも「Take Five」を聞かせてくれた。

　ジャズセクションで軽く体がスウィングしつつ、後半はまるでクラブのようなメドレーが待っていた。「Voice」「光の中へ」「Cravin’」「LOVE TOGETHER」、そして再び「Voice」に戻るというこのメドレー。客席が自然と総立ちになり、「LOVE TOGETHER」では一緒に振り付けを楽しむ場面も。聴くライヴから、参加するライヴに変化し、まだアンコールでもないのに、JUJUコールが客席からわき起こるほどの盛り上り。「Wonderful Life」の前のMCでは「デビューしてからの9年間は決して順風満帆ではなかったし、大きな危機もあったけど、みんながCDを聞き続けてくれる中で、今まで唄い続けてこれました」と、再び感謝の言葉を伝えるJUJU。そして、「人生って素晴らしいって思わせてくれた皆さんと、あの頃を思ってTogetherしたいと思います」と、場内を2パートに分けてサビでコーラス。代々木第一体育館に集まった総勢15000名のコーラス隊とJUJUの見事なコラボレーションだった。本編ラストはファンからの人気も高いミディアムバラード「やさしさで溢れるように」。来場したすべての人の周りが優しさで包まれるように……そんなJUJUからの祈りもこもった優しい歌声だった。

　アンコールは「ありがとう」の一曲だったが、彼女のあふれんばかりの気持ちが詰まった最高の「ありがとう」を聞かせてくれた。若干涙目のJUJUに思わずこちらももらい泣きしそうになる。
　以前、JUJUはインタビューでこんな話をしてくれた。
「私はライヴを大切にしていきたいんです。聴いてくれている人に直接ありがとうを言えるのってライヴのときしかないから」
　まさにこの言葉通りのラストシーン。
　生楽器で音楽を伝えるという彼女のこだわりや、これまでの楽曲の懐の広さ、シンガーとしての表現力など、JUJUというアーティストの底知れない魅力をたっぷり味わえたひとときだった。

【取材・文：大橋美貴子】