8月16日より全国ツアー「藤井フミヤ 30th Anniversary Tour vol.2 TRUE　LOVE」をスタートさせた藤井フミヤ。本人がステージ上で「ソロの20年の中からセレクトした曲が中心。だから “TRUE LOVE”」と語った本ツアーは、デビュー30周年、ソロデビュー20周年を迎えた彼のWアニバーサリーツアー第2弾となる。全国31か所で35公演を行う11月9日まで続くロングツアーだ。
　このツアーに先駆け、8月12日、公開ゲネプロが行われた。

　開演。客席から拍手が起こる。FC会員の中から抽選で選ばれた100人がこの日の観客だ。曲のリズムに合わせ、まるでウォーミングアップのようにしなやかにパフォーマンスするフミヤ。動きが軽い。声ものびやかで、ツアーに向けて調整してきた様が、序盤から十分に伺えた。
　ステージセットは、ソロ以降のライヴの中で、藤井フミヤが掲げてきた数あるテーマの中のいくつか……例えば“空間”や“近未来”を彷彿させるものだった。路地裏や倉庫を具現化させた昨年の第1弾ツアーとは、コンセプトから対称的なセットだった。
　サビの広がりが爽快なポップ・チューン「タイムマシーン」では、歌いながらステージ中央にストンと腰を落とすお馴染みのアクションに、観客がワッと沸いた。
　ステージの上には、曲調やキャラクターだけでは得られない、歴史あるからこそ成り立つ、藤井フミヤの様々な個性があった。

　そして、ここは誰もが認める彼のイメージだと思うが、藤井フミヤの代表曲には「TRUE LOVE」や「Another Orion」とったバラードも多い。今ツアーのセットリストには、それらの楽曲を筆頭に、数多くの名曲が連らなっており、藤井フミヤの歌声を楽しむことができる、絶好のチャンスなのではなかろうか。
　MCでは、数日後にスタートを控えた「藤井フミヤ 30th Anniversary Tour vol.2 TRUE LOVE」について触れ、バンドメンバーとどれくらいお酒を飲むんだろう、酒量を記録してみたいなと笑わせた後、ツアーへ向けた想いをこんなシンプルな言葉で語った。
「楽しいツアーにしてきたいと思います」

　この日のライヴは、ひとことで言うならば、じつに“藤井フミヤらしい”セットリストだったように思う。例えるなら、カーブもあるのにストレート1本勝負、しかもストレートを1球、1球、丁寧にテンポよく投げ込んでいくかのような。
　しかしながら、藤井フミヤの面白いところは、その“ストレート”が一種類だけじゃないところだ。
　バラードでのストレート、そしてアップチューンでのストレート。誰もが藤井フミヤだとすぐわかるストレートが、少なくとも２つある。この２種類のストレートが、鮮やかに決まる瞬間が今回のツアーにはたくさん詰まっている。
　瞬間を見逃すな。その瞬間がきっと、これからの藤井フミヤに、そしてゲネプロのステージで本人の口から発表になった年末のカウントダウンライヴにつながっている。

【取材・文：伊藤亜希】
【撮影：西槇太一】