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テスラは泣かない。“1秒未満”で見せた成長――全国ツアーセミファイナル

テスラは泣かない。 | 2014.11.01

 時計は間もなく20時になろうとしていた。ステージ上では「テスラは泣かない。」の4人が、楽器をセッティングしている。リハーサルが終わると、ボーカル&ギターの村上学は、マイクの前に立ち、PAに“ちょっといいですか?”とマイクをONにして欲しいとジェスチャーした。そしてマイクを通しこんな言葉を投げた。
「代官山UNITに集まってくれてありがとう!セミファイナルです。最初からぶっ飛ばします、よろしく!」
 この言葉に、大きな拍手で答える観客。「村上!」という男の子の声援も飛んだ。村上学は、手を振り、薄闇に沈むステージ袖に消えた。

 ライヴは、バンドのスキルを叩きつけるようなエモーショナルなナンバー「パルモア」から始まった。3曲目の「Cry Cry Cry」まで一気にたたみかける。サウンドに、パフォーマンスにメンバーのテンションの高さが伺える序盤。このテンションを後半に向けて、どうキープしていいけるかが鍵か。村上がマイクをとる。この日、代官山UNITに集ったファンに改めて感謝の気持ちを述べた後、2014年の自分たちを振り返った。曰く、鹿児島出身ながらほとんどを東京で過ごした、東京にいない時はあちこちツアーに出ていたと振り返った後、9月からの本ツアーについて触れた。

 2014年6月にメジャー1stアルバム『TESLA doesn’t know how to cry.』をリリースした彼ら。9月9日から本作を携えた秋の全国ツアー[tour 2014 “Tell me how to CRY.”]をスタートさせた。全10公演。北は北海道から、南は地元・鹿児島を回る全国ツアーである。ツアー中にも、各地のライヴハウスのイベントに出演。そのすべてをメンバー自らが運転する楽器車で回ったという。走行距離、述べ7000キロ。よく走ったなとステージ上で笑顔をこぼす4人。村上はこう締めくくった。
「7000キロ分の思いを、今、ここに、全部ぶつけていきたいと思います」
 デビューしてからのライヴ三昧の日々は、彼らにとって、じつに充実した半年だったのだろう。その証拠は、ライヴにも現れていた。
 最もそれが顕著に感じられたのは曲間のつなぎである。「my world is not yours」から「Calico」へ。ミディアムからミディアムへの滑らかなつなぎは、ベースの吉牟田直和、ドラムの實吉祐一のスキルが光った。テンポ(=リズム)でつなぐのが王道だとしたら、そこにフレーズの特徴を入れ込み、曲が変わったことをしっかり聴き手に印象づけてきた。アウトロの余韻も楽曲の新たなスケール感になっていた「Calico」が終わると、会場内にまだ漂っていたサウンドの中、村上が台詞のように言葉を放つ。「朝と夜の繰り返し。影ふみ遊びを永遠と繰り返す歌です」観客の身体に残るビートと村上の言葉で空間を紡ぎ「シャドウ」へ。
 テスラは泣かない。のサウンドは、一旦、捕まったらなかなか抜け出せないリピート感が魅力だ。短いフレーズのリピートは、テクノ・ミュージックに通じるトランス感がある。この魅力がストレートに感じられるのがライヴだ。だからライヴでは、どれだけ観客の身体に刻んだリズムを切らさないかが、セットリストの肝になっていると感じていたし、ミディアムやバラードを続けて披露する際には、観客の体に残った前曲のリズムをどれだけ消さずにいられるかが、必要だとも思っていた。
 つまり、ステージも観客も、一旦上がったテンションをどれだけそのままキープできるかが、このバンドがミディアムをしっかり届けるための、もっと言ってしまえば、メロディーをきちんと届けるための鍵だと思っていたのだ。夏の渋谷wwwのライヴは、初の東京ワンマンという緊張感がステージ上のメンバーにプラスに作用し、ライヴ全体のテンションキープにつながっていたと思う。
 果たして、この日はどうだったか。丁寧な曲のつなぎが、緊張感を醸し出し、テンションキープの大切な要素になっていたと思う。曲間をリズムでつないでいくという王道パターンも多かったが、前述したように村上の台詞や、ピアノの飯野桃子の象徴的なフレーズ、そして一瞬……それこそ1秒未満の無音を入れ込み次の曲に展開するなど、つなぎのバリエーションが増えていた。前に比べて、つなぎがタイトになっていたのも含め、流れの起承転結にもなっていて、ライヴ全体にメリハリが大きくなっていた。

 ライヴは終盤へ。イントロで客席からクラップが起こった「fuga」に続き「めんどくせえ」。観客から大歓声があがる。彼らには珍しい、シンプルな歌詞が特徴のアッパー・チューン。サビで大合唱になる。観客の熱気をそのままに、村上と観客の“もうめんどくせえな”のコール&レスポンスもばっちり決まった。
 明滅するライトの中で「アンダーソン」。村上と飯野の叫ぶようなコーラスから始まる「Someday」と続いた後、本編ラストを飾ったのは、アップチューンが多いこのバンドの中でも屈指のスピードナンバー「梵」。ランダムに上下していた観客のウェイヴが揃っていく。リズムに合わせ、♪ オイ!! オイ!! と掛け声がかかる。メンバー4人が、ブレイクに合わせてアクション。呼吸ががっちり揃った瞬間だ。ライヴバンドならばよくある光景だが、その瞬間に出会った時に、胸がざわめくバンドはなかなかいない。この日の「梵」では、胸がざわめく瞬間があった。  アンコールでは、新曲「メロル」も披露。ひとことで言うならば、テスラは泣かない。の王道か。アップチューン、目まぐるしく変わる短いフレーズ、骨太で展開の速いリズム隊、村上と飯野のかけあい、大胆なサビと、彼らの得意技がぎっしり詰まっている。しかしながら歌詞に関しては、これまでのシングルや代表曲になかった趣を感じられた。ライヴで1度聴いただけだが、覚えやすい言葉が連なったシンプルな印象だ。

 最後は「一緒に歌ってください」と「Shake your hands saying good bye.」。ミラーボールが回り、会場に光の破片を落とす。小さな光を宿しながら、ステージと客席に降り注ぐ破片。その輝きが、新曲の歌詞に感じたバンドの新たな破片に重なっていく。小さな光を集め、眩い光にしていくのは、村上、吉牟田、實吉、飯野の4人に他ならない。彼らの次のサウンドは、この半年のライヴの中に、そしてきっと私のざわめきの中にある。

【取材・文:伊藤亜希】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル テスラは泣かない。

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リリース情報

TESLA doesn’t know how to cry.(初回限定盤)[CD+DVD]

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2014年06月25日

ユニバーサル ミュージック

1. Cry Cry Cry
2. Lie to myself
3. My world is not yours
4. fuga
5. めんどくせえ
6. Arc
7. cold girl lost fiction
8. パルモア
9. シャドウ
10. Someday

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お知らせ

■ライブ情報

tour 2014 “Tell me how to CRY.”
2014/11/01(土)鹿児島CAPARVO ホール

FLiP SOME LiKE iT HOT!! TOUR 2014 ~お熱いのがお好き~
2014/11/08(土)大阪MUSE

首謀者:空想委員会 大歌の改新ツアー
2014/11/30(日)秋田Club SWINDLE
2014/12/02(火)盛岡CLUB CHANGE WAVE
2014/12/18(木)立川BABEL

FOLKS企画「CAMP FIRE」
2014/12/04(木)大阪・梅田Shangri-La
2014/12/06(土)東京・渋谷WWW

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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