今年30周年を迎えた布袋寅泰は、武道館や国立代々木競技場でキャリアを網羅するヒストリカルなライブを行なったり、東日本大震災の復興支援のためにＣＯＭＰＬＥＸとしてステージに立ったり、30周年にふさわしい精力的な活動を展開している。

　今回リリース される『ALL TIME SUPER GUEST』は、彼の長いキャリアの中から厳選された楽曲を、ジャンル・キャリア・レーベル・国境を越えたゲストを迎えて、カバーやコラボレーションで再構築したアルバムだ。

　ポップ・ フィールドからコブクロや大橋トリオなど、イギリスのロックシーンからは鬼才SIGUE SIGUE SPUTNIKなどが参加して、まさにジャンルレス、ボーダレスな活躍を続けてきた布袋にふさわしいメンツになっている。内容的にも、Dragon Ashが布袋の代表曲「DREAMIN’」をミクスチャー・ロック・スタイルでカバーするなど、ハイクオリティな作品ぞろいでスリリングだ。

　前代未聞の “ゲスト・アルバム”を発表する布袋に、自らの思いを聞いてみた。

布袋：今年は僕 の30周年イヤーなんだけど、ファンへの「ありがとう」をステージから直接言いたくて、2011 年はできるだけライブをやろうと思っていて、オリジナル・アルバム作りにはなかなか気が行かなかったんですよ。それで『ALL TIME SUPER GUEST』を作ることにした。これは僕の30thアニバーサリー・パーティーに、いろんなミュージシャンを招待するというコンセプトで、エンタランス・ フィー(入場料)の代わりに僕の曲を一曲ずつ歌ったり演奏してもらおうというアイデアから始まった。25周年のときは『ALL TIME SUPER BEST』を出したので、今回は『ALL TIME SUPER GUEST』っていうシャレですね(笑)。

EMTG：それにしても、いろんなアーティストがいろんなスタイルで参加してますね。

布袋：初めてコ ンタクトするミュージシャンもいましたね。たとえばシドのギターのShinjiくんは「布袋が神だ」って言ってるらしいっていう噂を頼りに連絡を取ってみたり、CORNELIUSの小山田くんとはプラスチックスの打ち上げで面識があったり、永井くんとは単純に、すれ違ったことがあったり。Dragon Ashも、 SOIL&"PIMP"SESSIONSも初めてでしたね。氣志團は前からBO?WYが好きだって言ってたのは知ってたけど、なかなか僕のところに挨拶に来ないし(笑)。

EMTG：中には布袋さん自身が参加しているテイクもある。

布袋：そう、普通のトリビュートやカバーとは違ったものをやりたくて、「必要だったら、僕を呼んでくれ」って言ってたんですよ。「さらば青春の光」は、ファンモンのファンキー加藤くんのために僕がトラックを作った。で、RIP SLYMEもいつ呼んでくれるのかなと思って待ってたら、「もう出来上がりましたよ」って持ってきてくれたり(笑)。ハートフルなアルバムにしたかった。 最高のジョークにしたかった。一曲一曲をそれぞれのスタイル、それぞれのスピリッツで仕上げてくれて、“つながってるな”と思いましたね。しかも、みんな楽しんでやってくれた。Dragon Ashは、自分たちのニューシングルぐらい力を入れて作ってくれたり。“布袋”というアイコンを通じて、自分たちのスタイルを高らかに掲げている。僕のニューアルバムではないけれど、大切なアルバムになりました。

EMTG：コブクロが「YOU」を取り上げてますが。

布袋：紅白歌合戦の楽屋で初めて会ったときに、小渕くんが「大ファンなんです」って言ってくれて、アドレスを交換した。その後、食事に行ったら、「目をつぶってても、布袋さんのギターの模様を描けますよ」って(笑)。彼は大阪のストリートで歌っていたときに、僕の歌も歌っていたらしいんですよ。でも「このままエレキを弾いていても、布袋さんに会えないと思って、アコースティック・ギターに転向した」って聞いて。そういう少年が日本を代表するアーティストになって、どういうカバーをしてくれるのか、すごく楽しみだった。コブクロの「YOU」にはストリングスが入っているんですけど、僕の指がギターの弦をこすった音もストリングスで再現しようっていうコダワリがすごい。小渕くんは、今回参加してくれた人たちの中でも、いちばん熱い布袋ファンのひとりですね。

EMTG：今井美樹さんは「FLY INTO YOUR DREAM」を歌ってますね。

布袋：数年前、ＣＭで流れて好評だったので、今回はフルバージョンで収録しました。美樹さんがアーティストとして悩んでいた時期に、『GUITARHYTHM II』のツアーを見に来てくれて、「自分もプログレッシヴな作品を作りたいので、プロデュースしてくれませんか？」と頼まれた経緯があって、僕たちの出会いでもある大事な曲なんですよ。

EMTG：いいアニバーサリー・アルバムになりましたね。

布袋：30年間に出会ったみんなのことを信頼できたし、ワクワクしたし、僕自身、新しい気持ちで次に向かえると思います。参加してくれたアーティストという“鏡”に映った自分が、自分らしくいられたのが嬉しかったですね。参加ミュージシャンそれぞれのファンのみなさんも、布袋ワールドを感じてくれたら嬉しいな。愛のある、自慢したくなるアルバムです。

EMTG：ありがとうございました。

【 取材・文：平山雄一 】