SEKAI NO OWARIの2014年第2弾作品となるニューシングル「炎と森のカーニバル」。音楽的冒険心と探究心が凝縮されたそのサウンドだけに関して言えば、多幸感に満ちた高純度なポップ・ナンバーである。聴く者すべてをポップの彼方へと導くファンタジックかつ壮大なファンファーレーであると同時に、4人が織り成す独特の「日常風景」越しにしか生まれ得ないポップとアートの結晶でもある。そこにはSEKAI NO OWARIならでは、そしてFukaseならではの「リアルとファンタジー」の絶妙のバランス感が潜んでいるーー。
　アリーナ・ツアーの準備も大詰めを迎えた4人にニューシングルについて訊いた。

EMTG：この曲のバスドラムの音は、「花火ドラム」ですよね。花火の音を録音して、それをリズム音として使ってるっていう。

Fukase： そうですね。Nakajinと一緒に花火大会に行って話すんですよ、「この心臓にくるロー（低音）の感じって、ライブで出せないのかな？」って。でも、バスドラでは出ないんですよ。パワーが違うわけで。で、後日Nakajinが「それをドラムにしてみればいいんじゃない？」って言うから、じゃあ手配してもらおうっていうことで、花火を上げてもらうところに行って。

Nakajin： 今回の“炎と森~”のキックの音を作るのにも、いろんな花火の音を合わせたりしていて。僕のPCの中には、莫大な花火のサンプル音のライブラリがあるんです(笑)。テレビで花火を観た時にーー直接観るのとは当然違うんですけど、何がいちばん違うかなと思った時に、音が違うなって思って。見た目も当然、実物のほうが綺麗ですけど、その場にいて感じる音の迫力がないから物足りないのかなあって。音ってそれだけ、人間の感動に直結してるんだなと思って。

EMTG：そういう音の探求まで含めて、SEKAI NO OWARIの日常になってる感じがしますね。

Fukase：そうですね。結構、外界に触れないでここまで来たから。他のバンドを見てると、「今時、まだギター使ってんの？」とか思うし、「まだギター・ロックやってるんだ？」って思うし。自分たちはそれとは全然違う方向性だから、何とも思わないけど……でも、俺は寂しがり屋だから、自分の音楽がずっと残っていったらいいなと思う。イギリスのロックを真似してるような音楽をやってたら、長い間残ってくれないだろうなと思うから。「自分らしさ」って何だろう？っていうのを追求して、未来永劫残ってくれるものを作っていくためには、やっぱりオリジナリティが不可欠で。でも、奇を衒ってるだけでは人の心は掴めないんで。俺たち自身が楽しんで「いいね」って言いながら進んでいくことが重要なのかなと思ってやってますね。

EMTG：“炎と森のカーニバル”、歌詞についてはどうですか？　「魔法」にまつわるファンタジックな言葉とは裏腹に、かなりミステリアスなストーリーですけど。

Fukase：これは結構、ノンフィクションの曲なんですよ。全部実在するストーリーなんです。今回は珍しくモデルがいるので。「魔法使い」も何かの比喩で……まあ、僕の遊び心です(笑)。

Saori：すごいファンタジーだけど、ちょっとエミネムみたいな要素はあるよね。ヒップホッパーって、曲に入れ込むよね？　自分に起こったこととか、「あいつがああ言った」とか。そういうヒップホッパー精神みたいなものを、ファンタジックに書いてるっていう。

EMTG：ファンタジーと表裏一体でリアルがあるっていうSEKAI NO OWARIのマインドは、やっぱりこの曲にも表れてますよね。

Fukase：ああ、そうですね。リアルとファンタジーっていうのがテーマなので。リアルが入ってることが、今回は見えにくくしてあるだけで、必ずどこかに入ってる。だから、ただのポップ・ミュージックになってないなっていうのは、自分で自信があるから、よかったなあと思って。自分たちで居心地のいい場所を見つけられないまま有名になると、もうほんとに、腐っていくように滅んでいくと思うので。ちょうどいい場所を見つけられてるなっていう気がして。

EMTG：オリジナリティは重要だけど、奇を衒ってるだけでは人の心は掴めないーーっていうのは、SEKAI NO OWARIの核心ですよね。奇を衒っただけの音楽だったら、やってて楽しくないだろうし、その音楽が後々残っていくことに対して自分たちが喜べないですからね。

Fukase：うん。奇を衒ってるだけの音楽なんて腐るほどあるし。それはオリジナリティでも何でもなくて、「みんなやってる変なこと」っていう。俺たちは、なんとなく方法論が変になっちゃってるけど、作ろうとしてるのはポップ・ソングで。「変な手法をしてるからカッコいいでしょ？」っていう自己満足みたいな音楽は作れないというか……その分、恐怖に打ち勝っていくのが楽しいんですよね。普通のバンドってたぶん、このタイミングで冒険したくないと思うんですよ。絶対ハズしたくないだろうし。ハズさない、「ポップに聴こえるアレンジ」ってあるんですよ。ストリングスの入れ方とか。でも、それをやっちゃったら、ファンに対して裏切り行為だなって思うから。ここでビビってそっちに逃げちゃったら、俺たちもそこまでだな、って思ってたけど、結局そっちに逃げなかったし。

EMTG：スイッチをONにしてる意識はないかもしれないけど、日常の中で、4人それぞれに感覚を研ぎ澄ませ合ってるんでしょうね、きっとね。

Fukase：うん、そうですね。生活が普通じゃないからーー今日も一緒に同じ車で、同じ家に帰るわけですし。明日も、この4人で温泉に行くわけなんです(笑)。

Saori：今日はこの後、夜4人でパーティーに行って、そのまま明日旅行に行って……こんなに人と一緒にいたことないでしょ、って思う。家族でもたぶん、こんなに一緒にいたことないし。

Fukase：そういう感じだから、自ずと普通のことが普通じゃなくなってくるのは、仕方のないことなのかなって思いますね。一般常識に驚くことが時々あるよね。「マジで？」とか「そういうもんか」とか(笑)。

Saori：この家の人たちだけで、世界がずっと回り続けてるから。

EMTG：そして、4月12日からは全国ツアー『SEKAI NO OWARI ARENA TOUR 2014-炎と森のカーニバル-スターランド編-』が始まるわけですが。もう準備も着々と？

Saori：そうですね。前回みたいな森の中じゃなくて、今回はコンクリートの中の、無機質な部屋の素材に合うようにして、セットを持っていきます。

EMTG：今回のLOVEさんの見せ場は？

DJ LOVE：大変なんです。やることは決まってるんですけど、全部に遅れが生じてて、完成形が見えなくて……あたふたしてます。

Nakajin： 僕はレコーディングでいろんな楽器を弾いてるんですけど、その一部をライブでやります。新しい楽器をいくつもやりますので、それも観ていただきたいと思います。

Fukase：僕は衣装と、見た目ーーエントランス・セットの担当なんですけど。……今思い出した、セットがどうなってるのかよく知らないね。

Saori：ええーっ？　何回も見せたのに……。

Fukase： や、カッコいいよ。「森と工場」って感じで。俺、前見たけど、暗くてよく見えなかった。

Saori：えーっ、何その言い訳？(笑)。

EMTG：……えー、その確認は後ほどということで。ツアーも楽しみにしてます。今日はどうもありがとうございました。

4人：ありがとうございました！

【取材・文：高橋智樹】