VAMPS、約4年ぶりのオリジナルアルバムはほぼ英詞

VAMPS | 2014.10.31

 VAMPSのニューアルバム『BLOODSUCKERS』が完成した。オリジナルとしては、約4年ぶりとなる今作は、13曲中2曲(内・1曲はインスト)を除いて、英詞となった。VAMPSが真正面から海外というフィールドを睨んだ証拠だろう。
 2008年の始動から、常に海外を見据えて活動を展開してきた彼ら。国内でのライヴ活動を基盤に、デビュー以降、毎年のように海外ツアーも行ってきた。
 憧れではなく、現実を目の当たりにしてきた彼らが、長い時間をかけて作り上げた新作『BLOODSUCKERS』。VAMPSが新たに放り投げたサウンドの宝石は、水面に新たな円を描きながら、VAMPSという才能の深淵にたどりつく1枚となった。
 HYDEとK.A.Zにじっくり話をきいた。

EMTG:長い制作期間になりましたね。
HYDE:そうですね。なんか今回に関しては、これまで以上にこだわりが多くて、結果、制作期間が長くなった。今までOKだったのがOKじゃなくなった。別の形でハードルが上がったんだと思います。冷静に、もっといい曲を作りたいというのが、まずあったんですよね。例えば綺麗なメロディは出てくる。これまではそれで採用してたんだけど、今回は違った。歪んだ声で歌った場合、ハードロックとしては聞けないからダメ、とか。美しいメロディなら誰でも作れると思う。だけど、歪んだ声を乗せても大丈夫なメロディは違うから、そこからまた変えていったりしたんですよね。いい曲ならそれでいいじゃんなら、変えずに終わっていたんでしょうね。
K.A.Z:元々、デモのクオリティもある程度高いから、そこが最低ラインになるんですね。で、もちろん作っていく中で、それこそ最初のうちにレコーディングした楽曲は、何度も聴くことになる。それがある意味、聞き慣れてくるっていうか。いい意味で慣れてきた中で、そこからもっといい音にするには、いい曲にするにはってレコーディングしていくんですね。例えば、ドラムひとつの音に対しても、こういう音はどうか、こっちはどうかって……。そうやってイメージできる期間が長くなったのが、いい結果になったと思います。
EMTG:今“ハードロック”というキーワードが出てきましたが、サウンド面では、どのようなテーマが?
HYDE:やっぱり、ほとんどの曲をライヴで使えるように……っていうのはありましたね。他に大きな流れとしては、僕もK.A.Zくんも打ち込み系の音楽をよく聴いてた時期もあったから、そういう要素は多くなるかなってのいうのもあったかな。
K.A.Z:デジタルよりな要素を入れようとは思ってたんですよね。ただ、難しいのは(ある程度完成した曲に)後からデジタルの音を足していくパターンで。だからまずドラムのリズムを打ち込みで作って、そのリズム合わせて弾いたりして、曲を作っていったんです。機械とセッションする感覚。そうすると、はまりやすかったし、生音の要素を後から足しても大丈夫だった。だからリズムを作っていくのも、その曲の世界観があって、アウトラインと作っていくみたいな感覚でしたね。
EMTG:ということは、かなり明確にその曲に対するイメージがあるところからスタートしてる?
K.A.Z:そうですね。そこからパート毎に作っていったり、リズムのイメージを変えてみて、また構築していったりっていう。方法はいろいろありましたけど、イメージは最初からありましたね。
EMTG:歌詞ありの12曲中、11曲が英詞。その訳詞を拝見した際、全体を通して一貫した美学があると思いました。作詞にあたり具体的なテーマはありましたか?
HYDE:このバンドの個性として、ホラーやオカルトのニュアンスは、どこかに出したいなっていうのは、なんとなくありました。ただそれを死守したというよりも、少し悩んだ時に、意識したというか。例えば「GHOST」って曲だと、ゴーストからの視線だとどうだろう観たいな感じで書いて。結果、すごくロマンチックになったと思うけど、じつはゴーストから始まっているという(笑)。だいたい曲を聴いてテーマを決めて書いていったけど、困ったらホラーを足すっていう感じでした(笑)。
EMTG:何曲かピックアップして伺います。「EVIL」。へヴィな曲ですね。楽曲の世界観も、ギターのリフも。
K.A.Z:そうだね。迫ってくるような恐怖感、激しさ、鋭さみたいな。あとは闇を感じるような雰囲気のものを作りたかったんですよね。途中、ちょっとふざけてメタルっぽいフレーズ弾いたりとか。これまではなかなか出来なかったことをやれないかなと思ってて、ちょっとしたきっかけて、アイデアが出てきた感じでしたね。
EMTG:あははははは(笑)。確かにギターのフレーズと音色はメタルだと思いました。でもなんか、耳触りがメタルじゃないんですよ。そこがすごく不思議で……。
K.A.Z:あぁ、それは、機械的なメタルだからだと思う。ちょっとマシーンっぽい、サイバー的な。ありそうでないのかなっていう。ちょっとしたティストの違いで、デジタルっぽさも感じるし(メタルっぽく)ガシガシもくる(笑)。
EMTG:そういう、サウンドで今までのVAMPSにないティストを出したいという欲求は、K.A.Zさんの中ではずっとあったものだったんですか?
K.A.Z:そこは、今回のアルバムが1番大きいかもしれない。2曲目の「ZERO」とかもそうかな。ポップでキャッチーだから、ちょっと合わないんじゃないかもしれないっていう気持ちもあったけど、でも、その形ですごくのれる曲になった。新しい世界になったと思う。
EMTG:「ZERO」のスケール感は、確かに新しい世界だと思いました。11曲目の「BLOODSUCKERS」は、これまでの「HUNTING」などに通じる雰囲気を持ちつつ、違ったアプローチで。聴いてて楽しかったです。
HYDE:さらにはっちゃける!っていう(笑)曲を作っている時、最後の2曲のうちの1曲だったんですけど、さらにはっちゃける曲が必要だと思ったんですよね。はっちゃけるのは決まっていたけど、どういう風にはっちゃけるかって、いろいろ考えていった結果、こういう形になりましたね。モッシュする感じかな。
K.A.Z:ライヴをイメージしやすい曲って、VAMPSにとっては、絶対に必要で。お客さんが暴れている感じが目に浮かぶし、「BLOODSUCKERS」って曲自体、ちょっと暴れん坊な、突き進んでいく感じがある。(観客の)みんながぐるぐる回ってる光景が目に浮かびますね。
EMTG:そういう曲、たくさんあると思ったんですけど、それでもこういう曲を作ったのは、またみんなと一緒にライヴを作っていきたいという思いもあった?
HYDE:ありましたね。今までのは、さんざんライヴでやってますから。そこも一新したかったんですよね。
EMTG:なるほど。では次にボーカルについて。歌声よりが太くなっている印象でした。もっと言えば声質に変化を感じられたんですよね。ご自分ではどう思われてます?
HYDE:声質はかなり気にしましたね。英語なんで、発音に注意がいきがちなんですよね。結果、歌った時に、喉が開いてないこともよくあったんですよね。これまで英語の発音は、二重チェックしてたんです。日本でネイティブのディレクターがチェックしながら歌う。そこからさらに海外のエンジニア(注釈1)がもう1回チェックし、歌い直してるんですよね。今回はその最初の段階でなるべくのびのび歌おうっていうのがあった。自分の中での歌のイメージを完璧にしとくと、後から楽だなって思ったから、最初のイメージを大事にして、そこで自分の思い通りの完成形を作っていったんです。これまでは、英語の発音をディレクションされると、どんどん発音の方に気を取られて、本来の歌が歌えなくなりがちだった。そこが結構ストレスでもあったんですよね。だから今回はちょっと吹っ切って。発音が多少悪くてもいいから、自分が気に入った音程を作っていった。だからJosh(注釈1)からOKが出ても、僕はこの性質じゃ嫌だってのは、レコーディング中、よくやってましたね。僕自身、ボーカリストとしての重要性というのを意識し出したのが、ついこの数年だと思うんです。“いいメロディなら誰が歌ってもいいメロじゃないの?”っていうのがどこかにあったんですけど、そうじゃないなっていう。かっこいいボーカリストが歌えば、例えば変な曲でもカッコ良くなるんだっていう。そういうところに気が付いたので、じゃあ、僕に出来る限りのことをしよう、と。今、そんな感じなんですよね。
EMTG:では最後に。この『BLOODSUCKERS』が完成して、改めてVAMPSはどういうバンドだと思いました?
HYDE:そうだなぁ……。いい曲作るバンドじゃないですかね、いい曲作るなぁ、K.A.Zくん、みたいな。
K.A.Z:なかなか無いバンドだと思うかな。自画自賛だけど、VAMPSは、クリエイトにおいても、すごく研ぎ澄まされたバンドだと思います。

※注釈1:Josh Wilbur。米国在住のエンジニア&プロデューサー。VAMPSとは長年の付き合いがあり、作品作りにおいては欠かせない盟友である。他にニルヴァーナ、リンキンパークなど、著名アーティストのプロデュースも数多く手がける。

【取材・文:伊藤亜希】

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リリース情報

BLOODSUCKERS(初回限定盤A)[CD+Blu-ray]

BLOODSUCKERS(初回限定盤A)[CD+Blu-ray]

2014年10月29日

ユニバーサル ミュージック

[CD]
01. REINCARNATION
02. ZERO
03. LIPS
04. AHEAD
05. EVIL
06. GHOST
07. VAMPIRE’S LOVE
08. DAMNED
09. GET AWAY
10. REPLAY
11. BLOODSUCKERS
12. THE JOLLY ROGER
13. INSIDE MYSELF

[Blu-ray]
AHEAD - Music Video -
REPLAY - Music Video -
GET AWAY - Music Video -
THE JOLLY ROGER - Music Video -
VAMPIRE’S LOVE -Music Video - ※日本語 Ver.

お知らせ

■ライヴ情報

VAMPS LIVE 2014-2015
<ZEPP FUKUOKA -4Days->
2014/11/01(土) 、02(日) 、04(火)、05(水)

<ZEPP NAGOYA -6Days->
2014/11/11(火)、12(水)、14(金)、15(土)、17(月)、18(火)

<ZEPP SAPPORO -3Days->
2014/11/21(金)、23(日)、24(月・祝)

<なんばHATCH -10Days->
2014/12/02(火)、03(水)、05(金)、06(土)、08(月)、09(火)、11(木)、12(金)、14(日)、15(月)

<ZEPP TOKYO -10Days->
2015/01/10(土)、11(日)、13(火)、14(水)、17(土)、18(日)、20(火)、21(水)、24(土)、25(日)

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