東京カランコロン、最高傑作『UTUTU』完成!! メンバー全員インタビュー!

東京カランコロン | 2015.01.08

 3rdアルバム『UTUTU』。収録されている各曲が多彩な風味を発揮しつつ、「東京カランコロン」というバンドの唯一無二の魅力を鮮やかに示す1枚となっている。そして、「ウツツ=現」というワードがタイトルに盛り込まれていることにも表れているが、日々の暮らしの中で向き合わざるを得ない現実に対する想いが、様々な形で描かれているのも注目すべきポイントだ。アイディア満載のサウンド、粋な切り口の歌詞、絶妙なボーカルコンビネーション……5人が紡ぎ出した世界の数々は、あらゆるリスナーの心に大きなときめきと潤いを届けるだろう。本作についてメンバーに語ってもらった。

EMTG:今回のアルバムを作るにあたって、どんな構想がありました?
いちろー:前作の『5人のエンターテイナー』はセルフプロデュース。この5人で出せる音で作っていって、ライブでも100%再現できるものを目指してやり切ったんです。でも、その後にツアーをやって感じたのは、「どんなにライブに近い音源を作ってもライブには勝てない」っていうことだったんですよ。「勝てない」ってあんまりいい言い方ではないけど、ライブが勝っちゃうような感覚があるんですよね。生で出す音って何にも増したパワーがあるので。だから今回は楽曲1つ1つのキャラクターを華やかにして、いろいろインプットしてきたものも反映して世に出したいと思っていました。
EMTG:今作に至るまでの一連のシングルでプロデューサーさんに参加して頂いたのも、そういう考えがあったから?
いちろー:そうですね。「恋のマシンガン」っていうすごくポップなやつを出して、次にサイケな「笑うドッペルゲンガー」を出して、その後に泣けるいい曲を出して。それが1枚の中で普通に並んでいるアルバム……っていうようなことも、なんとなく思い描いていました。あと、「ライブハウス」っていう枠に収まらないスケール感のあるものにしたいっていうのもありましたね。
せんせい:私は東京カランコロンの5人の中の1つの色ですけど、「自分はどういう存在なのか? 何ができるか?」っていうのを考えながら作ったのが今回のアルバムです。アルバム全体の構成、どういう曲を作っていくのか……っていうようなことは完全にいちろーさんにお任せしました。「舵を切るのはいちろーさん」っていう形にしたので、その分、曲毎の方向性がハッキリ決まったと思います。
おいたん:今回は「音源としていいものを作って表現するにはどうしたらいいか?」っていうことをすごくやっていきました。だから「音源にするならこうだよね?」っていうことをイメージしながらフレーズやアンサンブルを考えていったし、それを形にすることができました。
かみむー氏:今回は全部の曲でドラムのテックさんに入って頂いて、チューニングとかをして頂いたんです。叩くことに専念できたのも良かったです。僕やいちろーくんが思っていた「こういう音にしたい」っていうのをお任せして形にすることができましたので。テックさんに足向けて寝られないです。でも、何人かいらっしゃるので……どうしましょう?
EMTG:立って寝れば、どなたにも足を向けないで済むんじゃないでしょうか?
かみむー氏:なるほど。そういう荒技がありますね(笑)。
佐藤全部:僕もね。「今日はどんなドラムテックさんが来るのかな?」って楽しみにしながらレコーディングをしました。毎日ぐっすり寝て、万全の状態で作ることができました。
EMTG:「僕の辞書」では「佐藤・マイルス・全部」として魂のトランペットを吹いていますよね?
佐藤全部:はい。渾身のプレイです!
EMTG:各曲のキャラがすごく立っているっていうのは、今回のアルバムに関してまず1つ言えることだと思います。
いちろー:どの曲も「どうすれば良くなるか?」っていうことをすごく考えたので、歌詞を何度も書き直したりもありました。せんせいが書いてみたり、僕が書いてみたりを試したのもありますし。個人的には「笑うドッペルゲンガー」を出したことで、「バンドとしてのイメージ」というか、「せんせいと僕の共通項」みたいなことをあまり考えずに歌詞を書けるようになった感じもあります。だからせんせいの書いた歌詞も、すごくせんせいらしいですよ。「まとまっていないことがまとまり」みたいなアルバムにもしたかったので。全部の楽曲が並んでいるのを聴いた時に「意外と東京カランコロンになってる」ってことが今回のアルバムのポイントだと思います。
せんせい:私に関しても「誰かのために」みたいなことを考えなくなった感じがあります。周りを気にしないで思ったことを書く。それが一番聴いてくれる人に響くものになるんじゃないかなと。『5人のエンターテイナー』を作ったことによって、「どういうことをやっても東京カランコロンになる」っていう自信も深まったんです。それが私と、いちろーさん、それぞれならではの言葉で書くことを後押ししてくれた感じもありますね。
EMTG:例えば亀田誠治さんプロデュースの「ヒールに願いを」も、すごくカラーが明確ですよね。スケールの大きいサウンドも含めて、これは名曲だなと。
いちろー:ありがとうございます! この曲、気に入っています。メロディができて、みんなでアレンジをしていく中で、いろんなアイディアが広がっていったんです。「この曲、亀田さんに参加して頂いたらピッタリじゃない?」っていう意見もみんなで一致して。お願いしたら受けて頂けました。
せんせい:「ヒールに願いを」はいちろーさんの歌詞なんですけど、私の中にはない女性像の曲なので、「これをどう歌おう?」っていろいろ悩みました。私、ヒールとか普段、履けへんし(笑)。でも、こうして形になって客観的に聴くと、自分のものとして表現できているのを感じています。
おいたん:亀田さんはすごくバンドの良さを引き出すプロデューサー。その結果がこんなにエモくて肉体的な音だったので、「ウチらってそういうバンドなんだな」って改めて感じました。
EMTG:みなさんのパブリックイメージは柔らかな感じだと思うんですけど、実はすごくエモいバンドなんですよね。
おいたん:僕もそう思います。サイケだったりオルタネイティヴだったりする部分があるので。そういう要素とポップなメロディが合わさった違和感みたいなことが、バンドとしての存在感になっているのかなと思います。
EMTG:今回のアルバムのタイトルって『UTUTU』ですけど、「現(うつつ)」「現実」と向き合う姿がいろいろな曲で描かれているのも印象的です。「ヒールに願いを」や「終点から始発へ」もそうだし、1曲目の「夢かウツツか」もまさにそうですね。
いちろー:「夢かウツツか」の歌詞は、アルバムのタイトルが決まってから書いたんです。なかなかピンとくるものにならなくて何度も書き直したんですけど、アルバムのタイトルが決まってから“夢かウツツか”っていうテーマで書くことにしました。アルバム全体のテーマを示すようなものになったらいいなというイメージはありましたね。
EMTG:この曲、『花嫁のれん』のエンディングテーマになったんですね。
かみむー氏:僕、昼ドラを結構観ているので、嬉しいです。
佐藤全部:感想はそこかよ(笑)。
かみむー氏:平日に毎日流れるわけじゃないですか。毎日家にいて観るかも。
せんせい:ちゃんと外に出てきて(笑)。
EMTG:かみむー氏さん、実は演技派じゃないですか(『恋のマシンガン』をモチーフにして制作されたショートフィルムでの演技が好評)。いずれ昼ドラ出演も狙います?
かみむー氏:いつでもぜひ。
せんせい:私、マネージャーする!
かみむー氏:頼むわ。
おいたん:何の話だよ(笑)。
EMTG:(笑)せんせいのカラーが前面に出ている曲もすごく楽しいです。「△□」とか「かいじゅうになって」は、まさにせんせいだなと思いました。
せんせい:アルバムの中で1曲、『みんなのうた』で流れるような、子供も歌えるような曲を入れたいっていうのがあるので、「こんなのできたんやけど」って言って、いつも持って行くんです。それで今回入れたのが「かいじゅうになって」。みんなに付き合ってもらった感じです(笑)。
EMTG:「左耳から白旗」の、ちょっと怖い童話っぽい雰囲気も堪らないですよ。
せんせい:これは曲とかメロディは完全にいちろーさん。『アダムス・ファミリー』みたいな雰囲気の曲にしたいって言っていて。それで私が歌詞を書いたんです。私はティム・バートンとかエドワード・ゴーリーとかみたいなシュールでホラーな絵本の感じがすごく好きで。そういうイメージが広がって、歌詞を書いていきました。アレンジに関しても、スタジオでのセッションでみんなからどんどんアイディアが出てきました。
いちろー:この曲の出発点は僕なんですけど、みんなからどんどんアイディアが出たんですよね。そういうのがまとまらなくなっちゃうことがよくあるんですけど、これはまとまりました。
EMTG:東京カランコロンの曲っていろんなアイディアを盛り込んで、思い切った展開をしたりもするんですけど、奇跡的に絶妙なところに着地しちゃう面白さがあると思います。
いちろー:まあ、着地しないことも多いんですけど。例えば『恋のマシンガン』のカップリングだった「及川爆弾」は着地しないまま世に出たパターン(笑)。
おいたん:「着地していないのがいい」ってことにしてもらいたい(笑)。
EMTG:5人で培った奇跡のコンビネーションが、東京カランコロンを成立させているんだと思います。
いちろー:奇跡の胴体着陸。
佐藤全部:機体はボロボロ。
かみむー氏:ひどい……。
いちろー:「胴体着陸をするくらいなら普通に着陸してくれ!」っていう。
せんせい:たしかに(笑)。
おいたん:車輪がいつも出ないんでしょ?
いちろー:うん。いつも車輪が出そうで出ないの。
EMTG:「奇跡の胴体着陸」って、東京カランコロンの一面を言い当てている名言ですね(笑)。5人で歌っている「ネオンサインは独りきり」とかもまさにそうだし。
せんせい:この3人(おいたん、佐藤全部、かみむー氏)が歌っていることを想像しながら歌詞を書いんたんですけど、笑いが止まらなかったです。「絶対に歌ってもらうしかない!」って思っていました。
いちろー:この曲はまたライブでの爆弾要素になりそうです。
EMTG:これ、実はおしゃれだし、王道にいい曲なんですよね。
いちろー:そうなんですよ。メロディも気に入っていたからバンドで普通にやることも考えたんですけど、思い切りました。「ふざけてんのにいい曲」っていうのが余計に面白いと思っていました。「本編に入るのはどうなのか?」っていう感じもあってボーナストラックにする考えもあったんですけど、最終的にはアルバムのど真ん中の7曲目に入りました。
EMTG:2015年はこのアルバムを出すところから始まりますが、今後に関して何か思い描いていることはありますか?
せんせい:初めてのホールツアーがあるんですよ。それがまず大きいですね。
いちろー:ロックシーンで流行りのスタイルみたいなのがある中、そこに敢えて抗うでもなく、寄り添うでもなくという姿勢でやりながら、自分たちなりの立ち位置を作っていきたいです。そういう目標に対する、自分たちなりの現状での答えが『UTUTU』。そして、東名阪のホールツアーは、「自分たちの場所を作っていかなきゃいけないな」っていうことの次の一歩として考えています。たまたまバンドがホールでやるっていうのではなく、ホールらしいライブをやりたいです。「終点から始発へ」とか「左耳から白旗」とか、まさにホールでやることをイメージして作った曲ですし、楽しみですよ。
EMTG:では、取材を終了したいと思いますが、何か言い足りないことはあります?
せんせい:あっ! ジャケットのタイトルの文字の『UTUTU』、横にすると「うつつ」になるんですよ。(ジャケットを横にしてみる)
EMTG:本当だ!
佐藤全部:しかも、このジャケット、食べられるんですよ。
EMTG:何味ですか?
佐藤全部:チョコレートかなあ。
EMTG:……というホラで今回は終了しましょうか?
せんせい:はい(笑)。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

青い図書室[初回限定盤]

青い図書室[初回限定盤]

発売日: 2016年09月21日

価格: ¥ 3,000(本体)+税

レーベル: ビクターエンタテインメント

収録曲

01.想秋ノート
02.白薔薇のララバイ
03.ナルキスと人魚
04.海を見つめる日
05.蒼と白~水辺、君への愛の詩~
06.ワインとアンティパスト
07.ミス・ライムの推理
08.Handsome Blue
09.白い街と青いコート
Disc 2
[Aoi Teshima 10th Anniversary Concert]
Live at KATSUSHIKA SYMPHONY HILLS on May 28, 2016
01.岸を離れる日
02.虹
03.朝ごはんの歌
04.1000の国を旅した少年
05.ちょっとしたもの
06.瑠璃色の地球
07.風の谷のナウシカ
08.明日への手紙

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ビデオコメント

リリース情報

UTUTU(初回限定盤)[CD+DVD]

UTUTU(初回限定盤)[CD+DVD]

2015年01月14日

avex trax

[CD]
1.夢かウツツか 
2.恋のマシンガン
3.僕の辞書
4.ヒールに願いを
5.ビバ・ラ・ジャパニーズ
6.△□
7.ネオンサインは独りきり
8.左耳から白旗 
9.笑うドッペルゲンガー
10.そうだ、フェイシャルへ行こう!
11.かいじゅうになって
12.終点から始発へ 
-ホーナストラック-
13.東京カランコロンカラオケメドレー
~メンバー合いの手入りスペシャルver.~
※ボーナストラックはCD+DVDのみとなります

[DVD]
Music Video集(全9曲)/クラブでワンマ ん」@SOUND MUSEUM VISION LIVE映像/
おまけの映像
約60分収録予定

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お知らせ

■ライブ情報

東名阪でワンマ ソツアー~友達になりたい!~
※対バンあり
2015/03/04(水)大阪 梅田 Shangri-La
2015/03/05(木)名古屋 APOLLO BASE
2015/03/12(木)東京 渋谷WWW

ワンマ んツアー2015
2015/04/04(土)高松DIME
2015/04/05(日)徳島club GRINDHOUSE
2015/04/18(土)松本ALECX
2015/04/19(日)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
2015/05/06(水・祝)札幌ペニーレーン24
2015/05/08(金)仙台CLUB JUNK BOX
2015/05/10(日)埼玉HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1
2015/05/14(木)岡山IMAGE
2015/05/16(土)長崎DRUM Be-7
2015/06/06(土)福岡BEAT STATION
2015/06/07(日)広島ナミキジャンクション

ワンマ んツアー2015~ホールでワンマ ん~
2015/06/12(金)名古屋 名古屋市青少年文化センター・アートピアホール
2015/06/13(土)大阪 NHK大阪ホール
2015/07/10(金)東京 中野サンプラザホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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