竹内まりやの33年ぶりの全国ツアー「souvenir 2014」
竹内まりや | 2015.01.10
竹内まりやの、なんと33年ぶりとなる全国ツアーの最終日。彼女自身の単独コンサートとしても4年ぶりであり、超レアなライブということで、チケットは即日完売。この日の会場となった日本武道館も満員だ。
このツアーのサポート・バンドのバンドマスターは、もちろん山下達郎で、彼のツアー・バンドのメンバーも全員参加している。そして山下達郎のギターが歯切れのいいリズムを刻み、「アンフィシアターの夜」から、コンサートは元気にスタートした。その後「家に帰ろう」「マージービートで唄わせて」「FOREVER FRIENDS」と、彼女の代表曲が次々と続けて歌われていったが、その歌声はとても伸びがあり、まったくブランクを感じさせない。33年ぶりのツアーなのに、この生き生きとした歌声は、驚異的ですらある。
そして、2013年11月でデビュー35周年を迎えた彼女が、“今年は、東京オリンピックから50年、そして日本武道館ができて50年になります。同じ50年前、私はビートルズに出会って、洋楽に目覚めました。そしてここ日本武道館で初めてコンサートを行なったアーティストがビートルズで、そのビートルズと同じステージに、今立てていること、感慨無量です"と話して、デビュー曲の「戻っておいで・私の時間」と、セカンド・シングル「ドリーム・オブ・ユー」をメドレーで歌ったが、35年前の楽曲とは思えない、とても新鮮な響きだったのにも驚かされた。やはりいい曲は、何年経ってもいい曲だなということが、その歌から伝わってくる。さらに特筆すべきは、山下達郎のコンサートもそうだが、たとえ会場が日本武道館であっても、大がかりなステージ・セットや派手な演出もなく、また凝った映像が映し出されたり、ダンサーが登場したりすることもなく、ただ音楽のみを、そのままの形で観客に届けている、ということだ。だが、まったく物足りなさは感じさせない。本来コンサートというものは、いい楽曲と、いい歌と、いい演奏さえあれば、それでもう十分素晴らしいのだということを、あらためて実感させてくれるような、内容の濃いパフォーマンスだ。さらにライブ初披露だという「OH NO, OH YES!」や、緻密なコーラス・ワークなども完璧に再現した「元気を出して」など、高い音楽性と、親しみやすいメロディ、そして彼女の人間味溢れるボーカルで、会場をさらにグイグイと引き込んでいく。
そして圧巻だったのは、「ウイスキーが、お好きでしょ」から始まり、「告白?シングル・アゲイン」「象牙海岸」「駅」と続いたバラード・セクション。切ない歌詞をじっくりと歌い上げる、表現力溢れる歌声は、ほんとうに素晴らしい。特に、ファンの間でも人気ナンバー・ワンだという「駅」の絶唱は感動的だった。これぞまさに“大人のバラード"だ。武道館という広い会場でも、ひとりひとりの観客のハートにまでしっかりと歌を届ける、彼女の歌手としてのすごさを実感させてくれた。
ライブの後半は、「幸せのものさし」「プラスティック・ラヴ」「SWEETEST MUSIC」と元気なナンバーが続き、特に「プラスティック・ラヴ」では、山下達郎がサビを歌う、というサプライズもあった。さらに、彼女の強いメッセージが込められた「静かな伝説」を会場みんなで合唱し、ゴスペル・タッチのバラード「人生の扉」で、コンサートの本編は終了。
そしてアンコールは、「すてきなホリデイ」「不思議なピーチパイ?September」「J-BOY」となつかしのヒット曲でさらに盛り上がり、アカペラ・コーラスで「リンダ」、さらに山下達郎とのデュオで「Let It Be Me」と聴かせ、最後は彼女のピアノの弾き語りでによる「いのちの歌」で、コンサートは感動の中、幕を閉じた。
思えば、今の日本の音楽シーンの中にあって、彼女のように“上質のポップ・ソング"を聴かせてくれるアーティストは、とても少ないと思う。そういう意味でも、竹内まりやというアーティストの存在は本当に貴重だ。その圧倒的な存在感と、とてつもなくクォリティの高い音楽性を見事に融合させ、聴き手をとても豊かな気分にさせてくれる、まさに最上級のコンサートだった。
【取材・文:熊谷 美広】
リリース情報
セットリスト
souvenir 2014
2014.12.21@日本武道館
- アンフィシアターの夜
- 家に帰ろう
- マージービート
- Forever Friends
- 戻っておいで・私の時間~ドリーム・オブ・ユー
- 五線紙
- たそがれダイアリー
- OH NO,OH YES
- 元気を出して
- ウィスキーが、お好きでしょ
- 告白~シングル・アゲイン
- 象牙海岸
- 駅
- 幸せのものさし
- プラスティック・ラブ
- Sweetest Music
- 静かな伝説
- 人生の扉
- すてきなホリディー
- 不思議なピーチパイ~September
- J-BOY
- リンダ
- LET IT BE ME
- いのちの歌