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藤井フミヤ「TRUE LOVE」ツアー総括。10/31、中野サンプラザをレポ。

藤井フミヤ | 2014.11.18

 2013年からデビュー30周年&ソロデビュー20周年のダブルアニバーサリーイヤーを展開していた藤井フミヤ。このダブルアニバーサリーを記念して、2年連続でロングツアーを行った。1年目の昨年はバンド時代の楽曲を中心にした『30TH ANNIVERSARY TOUR vol.1青春』。2年目の本年はソロ楽曲で構成された『30th Anniversary Tour vol.2 TRUE LOVE』を開催。8月16日~11月9日まで、全国で35公演を行った。
 この『30th Anniversary Tour vol.2 TRUE LOVE』も残すところ6公演となった終盤。10月31日、東京・中野サンプラザでの模様をレポートする。

 ハロウィンだったこの日。フミヤのライブもハロウィン・モードだった。一夜限りの“ハロウィン・スペシャル・ライブ”を楽しもうと集まった観客で、中野サンプラザは超満員。ナース、メイド、ボディコン&扇子、タキシード姿の男性など、仮装をしているファンも目立つ。目を凝らせば、ナース帽には藤井フミヤのシンボルマークが、メイドの襟元には、ダブルアニバーサリイヤーのロゴマークがプリントされていた。いつもとは違うちょっと浮足立ったムードが、この日のスペシャル感を醸し出していた。

 客席が暗転する。真っ暗な中、ギターの優しいアルペジオが響く。ステージ上空からの何本もの白い光が、ステージ中央にゆっくり集まる。重なった光の中には、両手を広げた藤井フミヤがいた。
 ライブは「エンジェル」からスタート。サビのロングトーンが特徴の雄大なバラードだ。フミヤの声がどこまでも伸びていく。いつも以上の歌の音量と声の密度に、喉がよく開いているのがわかる。ファルセットの切れ味も抜群だ。静寂が張り詰める。空気を揺らすのは、バンドのサウンドとフミヤの声だけだった。
 一転、アップチューン「女神(エロス)」へ。オリジナルよりもジャジーなビートがクールで大人っぽい。フミヤは ♪俺の夜になりな ♪ という歌詞に合わせて、左足をしなやかに蹴り上げた。ホンキートンクなミディアムチューン「ストレイキャット」では、ブルースハープも披露。ブルージーなオールド・ロックンロール「嵐の海」では、曲に合わせてパフォーマンスしながら、ジャケットを綺麗に脱ぎ捨てた。
 いちいち絵になる。動いても歌がぶれない。バラードもアップチューンも、声量も滑舌も変わらない。序盤から本領発揮だ。藤井フミヤの全方位全開のライブに、観客の集中力も研ぎ澄まされていった。
 最初のMC。「Yeah!」とフミヤからいつもの第一声。野太い声が同じように返すと、少し驚きながら笑ったフミヤ。「エロエロで始まりましたが、次はポップでいきたいと思います」と次のブロックへ。赤いタンバリンを空中に放り投げながら、「彼女のタンバリン」。赤いタンバリンを赤いギターに持ち替え「GIRL FRIEND」などを歌う。アップチューン、ミディアム、バラードを混ぜながら、中野サンプラザをブライトに、ハッピーに、そしてロマンチックに染めていく。
 「次はプラトニックな歌を…」と紹介された「下北以上 原宿未満」では、サビの歌詞&コーラスをこの日バージョンにアレンジ。 バンドメンバーとともに ♪ ラララ 爆風以上、スランプ未満~(サンプラザ~) ♪ と歌い、80年代に青春時代を過ごした観客から大喝采を受けた。長いツアーを自分自身も楽しむため、新鮮な気持ち&モチベーションを維持するための遊び心が、ショウアップされた1曲と言えるだろう。この遊び心は、形こそ違えどきっと他の会場でも披露され、観客たちを喜ばせたのではあるまいか。
 続く「映画みたいに」で、ムードはガラリと変わる。今度はライティングを使ってエンターティンメントを見せていく。向かってステージ左には薄いピンクの円。逆には水色。ステージ中央に寄り添うように配置されたふたつのライトの円は、男女の関係を想起させた。右側、水色の円の中で、フミヤは歌う。後半、ひざまずき、右手をピンクの円の中にかざす。少しずつ重なっていくふたつの色、踊りながら少しずつセンターに移動するフミヤ。フミヤがセンターに立つと同時に、二つの色が混ざり、フジイロ(藤色)=薄いパープルに変わった。
 藤井フミヤは、声、歌、身体、そして自分も含んだステージの演出を使い、私たちに、素敵なラブストーリーを見せてくれた。
 この日3度目のMCでは、バラードについて「ハートブレイクか、とっても幸せな歌か、メッセージソングが多いよね」と持論を展開。この言葉の後に続いたブロックでは、「TRUE LOVE」や「Another Orion」などの大ヒット曲はもちろん、スケール感が魅力の「DO NOT」など、バラード曲を続けて聴かせた。
 全国ツアースタート時から、このブロックのシャープさが、今回のセットリストのひとつの肝だと感じていた。バラードが5曲も続いたら、普通、観客は集中力が途切れてしまうこともある。しかし、本ツアーはそれが無かった。観客の緊張感をキープしたのは、タイトなバンドサウンドと、フミヤの曲に対する感情移入にあると思った。次曲へのつなぎまで含めて非常にタイトだと感じたサウンドは、初日と比べてもより一層、引き締められていたし、フミヤのボーカルもより切実に感じられた。歌に対する感情移入という点では、この数年のフミヤのバラードは、一段ステージが上がったような印象だ。包容力と浸透力が、格段に違う。ゆえに説得力が強力に増している。そんな数々のバラードを、フミヤは5曲続けて満員の客席に染みこませた。

 再びMC。「みんな、どんな格好してんだ?」という言葉に、客席が少し明るくなる。ライブスタッフとの息もぴったり。観客のコスプレを見ながら「日本のハロウィンは、世界のコスプレ祭りになるかもしれないね」と感想をひとこと。そしてこう続けた。
「ロックンロールもたくさん歌ってきました。元々(ルーツは)ロックだからね。ロックンロールにもいろいろありますが、暗いのは外しました。だって、30周年!誕生日に暗い歌、歌わないでしょ? だから今日は明るいロックンロールで上がっていきます! カモーン!」
 カラフルな照明が空間を旋回する。フミヤが回すスタンドマイクが宙を切る。一斉に立ち上がる観客。その両手がリズムに合わせて揺れる。80年代ポップスを彷彿させるブライトなアップチューン「Stay with me.」から、ライブはラストへ向け加速していく。ツアーの途中からセットリストに加えられた「UPSIDE DOWN」。ダンサブルなパーティー・トラックを、原曲よりもギターを前面に押し出し、ロック色を強めたアプローチだ。しかしながらアプローチが変わったのは、サウンドだけではなかった。フミヤのダンスである。久々に歌われたこの曲のダンスは、これまでは4つうちのリズムを軸にしたパターンだったと思う。それが今回は、ギターリフやサウンドのブレイクで見せるダンスに変わっていた。簡単に言えば、滑らかに踊り続けるハウスの踊りから、要所要所でポーズを決めていくロックの踊りへ。フミヤのダンスが、いつでも音楽とともにあることを目の当たりにした瞬間だった。
「ラスト、ロックンロール!」というシャウトから「ヘブンの入り口」へ。最後は、ダイナミックなポップチューンを派手にぶち上げ、フミヤはステージを後にした。

 アンコール。一夜限りの“ハロウィン・スペシャル”は、これからが本番だ。観客の期待が止まらない。会場中がそわそわしている。再びステージにフミヤ&バンドメンバーが登場した瞬間、期待が興奮に変わった。
 ミイラ男が6人! そのうちの1人が、ステージ中央でマイクをとった。
「お前ら、何しにここに来たんだ!」
声も低く、口調もぶっきらぼうに変えてくる徹底ぶりだ。「誰だフミヤって言うのは、あの小っちゃい男か」という台詞で、観客は大爆笑。背格好だけは見まごうことなきフミヤのミイラ男が続ける。
「あいつは、俺が息の根を止めてやった。今日は俺たちがこのステージを乗っ取ったぞ。じゃあまずはこの曲から “HORROR LOVE”。」
 誰もが知るフレーズが、おどろおどろしく蘇る。
 冒頭の ♪ 振りかえると~ に合わせ、振り返り“うわー!”と両手を広げたフミヤ。鉄板のコント(?)に、会場がドッと沸いた。満足げなミイラ男が、ハッとあることに気が付く。ステージ上の同朋たちを指で数え「1人足りない……」とひとこと。「もう1人、いたはずだが」と低い声で告げる。シーン……。誰も出てこない。すかさず「もう1人! いたはずだが!」と語気も粗くシャウトすると、7人目のミイラ男が登場した。サックスを持ったその姿に、会場から黄色い声があがる。藤井フミヤの実弟・藤井尚之だ。兄・藤井フミヤが「遅い!」と一喝すると、弟ミイラは軽く頭を下げた。「鼻が苦しくて鼻声だが」と、苦笑しながら前置きした後、いつもの声で「いくぜ!」と曲へ。弟ミイラのサックスがブロウし「NANA」。バンド初期からのライブのキラーチューン「REVOLUTION 2007」。その間奏では、フミヤがハープ、尚之がサックスを吹き絡むレアなシーンもあった。スカビートとケルティッシュなギターフレーズが楽しい「HEART IS GUN ~ピストルを手に入れた夜~」で、両手を交互にあげながら観客が躍り出す。中野サンプラザが揺れる。ラストを飾ったのは「お前が嫌いだ」。 ♪ お前が嫌いだ ♪ と連呼する少しコミカルなパンクチューンに、客席のテンションは最高潮に。満員の観客に充実感と日本武道館ライブへの余韻を残し、藤井フミヤは、この言葉とともにステージを後にした。
「サンキュー、あばよ! この続きは日本武道館で!」

 12月31日には武道館カウントダウンライブ『藤井フミヤ 30th BEST SPECIAL COUNTDOWN』が開催される。バンド時代とソロを網羅した内容になるこのライブは、2年に渡り続いてきたアニバーサリーイヤーのラストを飾るにふさわしい、盛大なパーティーになりそうだ。

【取材・文:伊藤亜希】
【撮影・三浦憲治(アンコール写真のみ)】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 藤井フミヤ

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リリース情報

FUMIYA FUJII SYMPHONIC CONCERT(初回生産限定盤)[2CD +DVD]

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2014年09月24日

SMAR

[DISC 1]
1. Overture ~Another Orion~
2. TRUE LOVE
3. 君が僕を想う夜
4. Life is Beautiful
5. 地上にない場所
6. 鎮守の里
7. 大切な人へ
8. 夜明けの街

[DISC 2]
1. ドヴォルザーク:交響曲8番第3楽章
2. Another Orion
3. トワイライト
4. わらの犬
5. 愚か者の詩
6. なんかいいこと
7. ALIVE
8. Go the Distance
9. Encore) 夜明けのブレス

[DISC 3/DVD]
Overture ~Another Orion~
TRUE LOVE
君が僕を想う夜
Life is Beautifu
地上にない場所
鎮守の里
大切な人へ
夜明けの街
ドヴォルザーク:交響曲8番第3楽章
Another Orion
トワイライト
わらの犬
愚か者の詩
なんかいいこと
ALIVE
Go the Distance
Encore) 夜明けのブレス

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セットリスト

30th Anniversary Tour vol.2 TRUE LOVE
2014.10.31@中野サンプラザ

  1. エンジェル
  2. 女神(エロス)
  3. ストレイキャット
  4. 嵐の海
  5. タイムマシーン
  6. 彼女のタンバリン
  7. GIRL FRIEND
  8. わらの犬
  9. Little Sky
  10. 下北以上 原宿未満
  11. 映画みたいに
  12. SEVEN WONDERS
  13. 今、君に言っておこう
  14. TRUE LOVE
  15. INSIDE
  16. Another Orion
  17. DO NOT
  18. Stay with me.
  19. 恋の気圧
  20. UPSIDE DOWN
  21. ROCK ’N ROLL VAMPIRE
  22. ヘブンの入り口
Encore
  1. NANA
  2. REVOLUTION 2007
  3. HEART IS GUN~ピストルを手に入れた夜~
  4. お前が嫌いだ

お知らせ

■ライブ情報

藤井フミヤ 30th Anniversary Tour vol.2 TRUE LOVE
2014/08/16(土) 東京・府中の森芸術劇場どりーむホール
2014/08/17(日) 東京・府中の森芸術劇場どりーむホール
2014/08/23(土) 兵庫・神戸国際会館こくさいホー
2014/08/24(日) 滋賀・滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール・大ホール
2014/08/30(土) 静岡・静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
2014/08/31(日) 埼玉・東松山市民文化センター
2014/09/03(水) 千葉・君津市民文化ホール
2014/09/06(土) 神奈川・よこすか芸術劇場
2014/09/07(日) 愛知・一宮市民会館
2014/09/14(日) 広島・上野学園ホール
2014/09/15(月・祝) 香川・サンポートホール高松・大ホール
2014/09/20(土) 宮城・東京エレクトロンホール宮城
2014/09/21(日) 東京・東京国際フォーラム・ホールA
2014/09/23(火・祝) 北海道・札幌市教育文化会館大ホール
2014/09/24(水) 北海道・釧路市民文化会館 大ホール
2014/09/27(土) 新潟・南魚沼市民会館
2014/09/28(日) 石川・本多の森ホール
2014/10/01(水) 茨城・龍ヶ崎市文化会館
2014/10/04(土) 大阪・フェスティバルホール
2014/10/05(日) 大阪・フェスティバルホール
2014/10/07(火) 三重・三重県総合文化センター大ホール
2014/10/13(月・祝) 静岡・裾野市民文化センター
2014/10/14(火) 大阪・岸和田市立浪切ホール
2014/10/18(土) 愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール
2014/10/19(日) 奈良・なら100年会館 大ホール
2014/10/21(火) 東京・かつしかシンフォニーヒルズモーツァルトホール
2014/10/25(土) 秋田・能代市文化会館
2014/10/26(日) 青森・五所川原市ふるさと交流圏民センターオルテンシア
2014/10/30(木) 群馬・藤岡市みかぼみらい館 大ホール
2014/10/31(金) 東京・中野サンプラザ
2014/11/02(日) 熊本・市民会館崇城大学ホール(熊本市民会館)
2014/11/03(月・祝) 福岡・福岡サンパレス
2014/11/05(水) 福岡・久留米市民会館
2014/11/08(土) 大阪・フェスティバルホール
2014/11/09(日) 大阪・フェスティバルホール

藤井フミヤ カウントダウンライブ
2014/12/31(水)東京・日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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