IKE(Vo)の喉のトラブルによって全国ツアーを中断していたSPYAIRが、2014年12月30日、Zepp DiverCity（Tokyo）で約7ヶ月ぶりとなる単独公演を行った。ライブのタイトルどおり、ここで「復活」を遂げる4人が現われるはずのステージにまず登場したのは、なんと芸人・AMEMIYA。おなじみのあのメロディーに乗せ、SPYAIRの復活劇をユーモアたっぷりに歌った「IKEで焦りました」で会場は大爆笑の渦だ。オーディエンスのテンションもがっつり上がったところで、いつものサイレンが鳴り響く。4人がステージに現われた。

　オープニングはもちろん「OVERLOAD」。そこから「現状ディストラクション」、「Rock’n Roll」とハードなナンバーが続き、メンバーとオーディエンスの間で止まっていた時間が一気に動き出した。「東京！ただいまー！今日は最高の１日になるね！いや、最高の１日にしようね！」とIKE。喋り始めた瞬間はどこか照れ臭さがあるような感じだったが、待っていてくれたオーディエンスに向かう表情はとても晴れやかだ。「WENDY~It’s You~」からのゾーンはダンスビートでフロアを揺らした。

「ライブをやってない期間、いろいろ考える時間がありました。考える時間があり過ぎて、でもやることはなくなっちゃって、ただ空白の時間を過ごしてたように思います。これからまたしっかり活動していくけど、また元のようになれるかはわかりません。だけど今まで支えてくれた人たちがこうやっていてくれるので、これからも自分の出来ることをやって行こうと思ってます。この期間、淋しかった心を支えてくれた曲をみんなに届けたいと思います」

　IKEはそんなふうに自分の正直な胸の内を明かし、「BEAUTIFUL DAYS」を歌い始めた。4人で「復活」をアピールした、そこまでの前のめりなパフォーマンスから一転。一緒に歌っているオーディエンスの声に包まれながらもどこか自分自身と向き合うようにマイクを握るIKEと、その景色を後ろから見守っているようなメンバーの姿がとても印象的だった。楽曲は残っていくかもしれないけど、バンドが止まるということは、このライブという場もなくなってしまうということ。心身共にギリギリの状態から生還したIKEだけでなく、メンバーもきっと、あらためてこの景色をまぶたに焼き付けていたに違いない。その後のアコースティックコーナーでは、活動休止中のリアルな裏話や現在進行形だという音源制作の話から。ニューシングルを3月25日にリリースすることがIKEから正式に発表されると、大歓声の中、UZ(G)がフライング気味で触りのフレーズを弾き始め、MOMIKEN(B)とKENTA(Dr)が慌てて止めるというひと幕も(笑)。リラックスしたムードの中、「いろいろあったけど…、こういう気持ちって大事だなと思う」とIKEが言葉を添え、4人が順番にボーカルをとる「My Friend」のアコースティックバージョンが披露された。決して整ったものではなかったけど、ここからの一歩に不可欠な、深呼吸のような1曲だった。

　ライブ後半は、どこか吹っ切れたような様子で「ジャパニケーション」や「サムライハート(Some Like It Hot!!)」などを畳み掛け、オーディエンスの声があってこそ完成する「虹」で本編終了。アンコールではIKEがメンバーに向き合い、「まだ1回も言ってないんだ。メンバーって近過ぎてさ。この場を借りて、またこうやってここに立てて、本当に嬉しいです。ありがとうございます！」と感謝の気持ちを伝えた。そしてオーディエンスの方へと向き直し、「僕は歌でしか返せないと思うんで、これからもしっかり、歌を歌っていきたいと思います」と宣言。この日がライブ初披露となる新曲「GLORY」をパワフルに歌い上げ、最後はもちろん彼らのライブで欠かすことの出来ない「SINGING」の大合唱で幕を閉じた。4月からは春の全国ツアーも決定。思いがけず訪れたこの転機をバネに、よりタフなバンドになって自分たちのロックンロールを響かせていってくれるはずだ。

【取材・文：山田邦子】
【撮影：石井亜希】