前へ

次へ

エレファントカシマシの2015年は4年ぶりの日本武道館からスタート

エレファントカシマシ | 2015.01.16

 エレファントカシマシの2015年は4年ぶりの日本武道館から始まった。しかも2daysは15年ぶりであり、初日である3日はひときわ宮本浩次(V、G)に気合いが入っていた。

 このところ幕開けは4人だけで始める事が多かったが,この日はお馴染みのサポート・メンバー、蔦谷好位置(Kb)、ヒラマミキオ(G)も揃ってのスタート。ギターを抱え宮本が歌い始めたのは「部屋」だった。良く通る声で歌い終わると宮本は「エブリバディ、ようこそ武道館へ!」と歓迎の言葉を発し、ギターを弾きながら「2015の幕開けです!」と呼びかけ、「始まりはいつも」へ。石森敏行(G)が弾くヘヴィなリフに乗って、”裸足で駆け出すぜ”と歌いながら走り,”天国へまっしぐら!”と天を指す。全身全霊で歌う宮本の高揚感が広い場内に伝わり3階まで揺れているのが闇の中でも伝わって来た。更に「ココロのままに」「今はここが真ん中さ!」と豪快な曲を続けた後で宮本は黒のジャケットを脱ぐと「始まるぜ,エブリバディ,ロックっぽく、ドーン!とお届けするぜ!」と宣言。

 宮本が何度か「見えますかー!」と叫んだのは、抑えめに美しくステージ全体を照らす照明だったからか。「皆に捧げます」と力強く歌った「悲しみの果て」の後、「この世で一番はお金です,今年は稼ごうぜ!」と煽って「デーデ」を歌うと、「今年はヒット曲狙いで行きますからね」と意気込む。パワフルな歌が圧倒的な「パワー・イン・ザ・ワールド」は赤から青へと変わる照明がバンドを浮かび上がらせ,一転して宮本の弾き語りで始めた「おまえとふたりきり」は歌が染み渡った。「精神暗黒街」も伸びのいいヴォーカルが絶品で,「EMIの今はないスタジオで録りました」と紹介した「季節はずれの男」はスケール感たっぷりの曲になった。

 「スペシャルな,いいスタート切れてよかった」と既に手応えを感じているらしき宮本は、「歌でもどうだい」と呟き軽快な蔦谷の鍵盤と共に「真冬のロマンチック」を歌うと,「素敵な美しいゲスト」と、バイオリンの金原千恵子、チェロの笠原あやのを呼び込んだ。二人が加わる「彼女は買い物の帰り道」は立体感のあるサウンドに導かれるように宮本の歌も一層伸びやかに。続く「昔の侍」では後方に移動した二人に加え6人のストリングス・チームが現われ、総勢14人での演奏が更にダイナミックなサウンドで調子を上げて行く。「もしも願いが叶うなら」は宮本の歌が切実に響き、宮本のギターからジワッと始めた「シグナル」、ヒラマとのギターからストリングスが入ってドラマチックな展開になった「あなたへ」「赤き空よ!」の力強い歌が、スケール感のある照明と相まって感動的な情景を描き出した。

 ジャケットを着直しメンバーを紹介した後で,「俺はまだまだ輝きたい。そういう歌です」と「今宵の月のように」を歌い出す。いつのまにかギターを背中に背負いハンドマイクで歩きながら歌い、そのまま「笑顔の未来へ」に突入すると、高緑成治(B)は力強いダウンピッキングを刻み、冨永義之(D)と小気味よく合わせて行く。石森のギターも力強く、大きな転機になったこの曲を彼等がどれほど大切に思っているか伝わってくる演奏だ。最後をアカペラで「今宵の月のように?」と歌い,そのまま同じく彼等に欠かせない曲のひとつ「笑顔の未来へ」をストリングスとのドラマチックな展開で歌う。「ズレてる方がいい」を経て「最後の曲、聴いてくれ!」と歌いかけた「俺たちの明日」は、大きく手を振るオーディエンスとの一体感が最高潮に。「さあ行くぜ!」と大きくジャンプすると「一部終了だ!」と宮本は一旦ステージを降りた。

 2部は再び落ち着いた雰囲気で歌った「大地のシンフォニー」で幕を開け,「俺たちの新しいシングル」と紹介して「Destiny」。紅白のライトの中,宮本が自分を鼓舞するようにジャンプし拳を振るとオーディエンスも合わせ、「桜の花、舞い上がる道を」へと一気に持っていく。たちまち1部の熱気を取り戻しながらも,少し落ち着いた雰囲気もあったのは、次の新曲への布石だったのだろうか。「いい顔してるぜエブリバディ、見えないけど波動でわかる」「お互い様だ、元気貰ってます。今風の言い方で言えば」と喜ばせる。ほぐれたところで始まった新曲「(仮)なからん」は’13年の「復活の野音」で披露した曲だ。あの時はまだ荒削りな印象だったが,ファルセットで歌う宮本とストリングスとの演奏が荘厳なミッド・バラードに仕上げていた。じっと聴き入るオーディエンスに喝をいれるように宮本はカウントを取り、もう1曲の新曲「(仮)雨の日も」へ。ストリングス入りを前提に作ったかと思えるような起伏に富んだアレンジはプログレッシヴ・ロックめいてもいて、語りかけるような歌と共にエレカシの新境地かもと思えたのだがどうだろう。

 客電に明るく照らされた中で「明日を行け」を歌うと「みんな、歌が届いただろう?」と呼びかけ,「新しい季節へキミと」はステージを走り回りながら歌い,照明をいじり、メンバーに絡み、息切れするほど盛り上げた。ここでストリングス・チームを送り出すと、「OK、トミ!」と声を掛け,石森や蔦谷がヘドバンもした「FLYER」から「ガストロンジャー」、そして「ファイティングマン」とエレカシならではのフィナーレに。この日ずっと交互に使っていたワイヤレスとシールド付きのマイクを忙しなく持ち替えながら走り回った宮本のショウマンシップには感服するしかない。最後は「楽しかった!」と大の字になってジャンプしてみせた。  鳴り止まないアンコールの声に応えてもう一度6人が現れ、宮本が歌い出したのは「so many people」。明日もあるのに大丈夫かと思うほどの絶唱に圧倒されたのだが,本人も歌い終えて気付いたのか「明日もあるから優しい歌」と「ハナウタ?遠い昔からの物語?」。それでも遠慮なく力強く歌い,「素敵な時間ありがとう!」と挨拶してステージを降りた宮本たちだが、すぐに戻り、「花男」を始めた。えらくアグレッシヴな演奏はこの曲の熱気を一気に高めたが,マジで予定外だったのだろう。「サンキュー,エブリバディ!」と投げキッスをした宮本は嬉しそうに輝いていた。

 翌日とは半分程も違うセットリストだったことを後日知り,彼等がこの武道館に込めた気持ちの濃厚さを思い知った。それは2015年のエレファントカシマシを示唆していたようにも思えた。

【取材・文:今井智子】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル エレファントカシマシ

リリース情報

Destiny (初回限定盤) [CD+DVD]

Destiny (初回限定盤) [CD+DVD]

2014年06月11日

ユニバーサル・シグマ

[CD]
1.Destiny
2.明日を行け
3.Destiny (Instrumental)
4.明日を行け (Instrumental)

[DVD]
Destiny Music Video
Destiny Music Video Making
明日を行け レコーディングドキュメント

このアルバムを購入

トップに戻る