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KANA-BOONのとぅるとぅるかむとぅるーTOUR 2015 ?夢のアリーナ編? ライブレポート

KANA-BOON | 2015.04.20

 満開の桜のお陰で、九段下の駅は大混雑。靖国神社へ向かう花見客に負けないくらいの数のロック・ファンが、KANA-BOONの“初武道館”に参加すべく階段を急いでいる。立ち見も含めて、武道館 は10代と20代前半の オーディエンスで超満員だ。男女比は4:6くらい。“とぅるとぅるかむとぅるー”ツアーというわけで、開演前のBGMとしてドリカムのヒットナンバーが次々と流れる。僕の後ろに陣取る女の子ファンたちは、それに合わせて歌っている。ロックバンドの開演前にドリカムのシンガロングが起こるなんて、前代未聞。ただただ楽しいだけじゃなく、歌詞もメロディも極上のバンドKANA-BOONのファンらしい光景だった。

 この超元気で若いオーディエンスたちを、KANA-BOONはどこに連れて行こうとしているのだろうか。古時計の映像が12時を差し、ステージを囲った白いカーテンが切って落とされると、「タイムアウト」から注目のライブが始まった。

 最初のひと声から、谷口鮪のボーカルは落ち着いている。ベースの飯田祐馬とドラムの小泉貴裕のリズムが、グルーヴィーで気持ちいい。ギターの古賀隼斗は2番に入ると歌のバックで、スリリングなソロを取り始める。初めてとは思えない安定感のある演奏で、一気に「ターミナル」まで駆け抜けると、後ろの女子たちは「アツイよ!」「ヤバいよ!」を嬉しそうに連発したのだった。

「武道館へようこそ。KANA-BOONです。今日は最後までよろしく! 皆さん、緊張してませんか? 僕は一昨日から寝てないです(笑)」と谷口が言うと、すかさず古賀が「俺はめっちゃ寝て、腰が痛い」と混ぜ返す。4人全員がMCに参加して面白がるのも、このバンドの特長だ。それでいてライブがブレないのは、デビュー以降、ずっと急成長を続けてきた演奏内容がしっかりしているからだ。

 たとえばこの日、メンバーはそれぞれの“夢”を実現した。谷口は鮪匠をステージに招いて「マグロの解体ショー」、飯田はセグウェイでアリーナを練り歩き、小泉は箱脱出のイリュージョン、古賀はワイヤーに吊り上げられて空中ギター・ソロをやってのけた。どれも大爆笑に包まれたのだが、演奏に戻るとしっかり聴かせて感動を呼んでいた。

 その演奏のギアが上がったのは、9曲目の「ロックンロールスター」だった。KANA-BOONはこの曲で独自のグルーヴをつかんだと言っていい。それを武道館のライブで見せつける。一方、「生きてゆく」、「スコールスコール」、「愛にまみれて」では歌をじっくり聴かせて、“歌詞の伝達力”が抜群に上がっていることを証明してみせた。

 そんなライブが頂点に達したのは、本編ラストの「スノーグローブ」と「シルエット」だった。

 ポップな曲調の「スノーグローブ」は、KANA-BOONがロックというジャンル を取り払っても優れたメロディを提供するバンドだということを納得させてくれた。また「シルエット」では、ロックのど真ん中にいて、シーンを切り拓いていくバンドなのだと思い知らされた。♪時計の針は日々は止まらない♪というリリックは、オープニングの古時計の映像とリンクしていることに思い当たって、この曲に込めるKANA-BOONの心意気を感じたのだった。

 もちろん「盛者必衰の理、お断り」などのダンサブルな4つ打ちロックのKANA-BOONも いいが、力強く歌を伝えるロックバンドKANA-BOONも素敵だ。おそらく彼らは、そこにある未来や希望へ、若いオーディエンスたちを連れて行こうとしているのだろう。

 この日の照明は、ロックバンドとしてはごくオーソドックスなものだった。ステージ上部にセットされたピンスポットは、コンピュータ操作ではなく、すべて人間が手でコントロールしていた。“最新”のものでも、ストロボを使うくらいだったから、このバンドがもし最先端の演出を取り入れたらどんなライブを実現するのか想像して、ワクワクしてしまった。つまり、セットリストも演出も、すべてが“この先”に向かっているライブだったのだ。

 夢を果たしながら、楽しくて立派なライブを見せてくれたKANA-BOONには、 武道館がよく似合う。

【取材・文:平山雄一】
【撮影:古溪 一道】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル KANA-BOON

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リリース情報

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2015年05月13日

Ki/oon Music

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3. タイムトリッパー

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セットリスト

KANA-BOONのとぅるとぅるかむとぅるーTOUR 2015 ~夢のアリーナ編~
2015.3.31@日本武道館

  1. タイムアウト
  2. LOL
  3. ウォーリーヒーロー
  4. ターミナル
  5. ワールド
  6. MUSiC
  7. 結晶星
  8. クラクション
  9. ロックンロールスター
  10. ないものねだり
  11. 生きてゆく
  12. スコールスコール
  13. 愛にまみれて
  14. 盛者必衰の理、お断り
  15. フルドライブ
  16. スノーグローブ
  17. シルエット
ENCORE
  1. なんでもねだり
  2. 1.2. step to you
  3. パレード

お知らせ

■ライブ情報

KANA-BOONのとぅるとぅるかむとぅるーTOUR 2015 ~全国とぅるとぅる編~
2015/04/23(木)香川 高松 オリーブホール
2015/04/25(土)広島 BLUE LIVE HIROSHIMA
2015/04/26(日)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
2015/04/29(水)鹿児島 CAPARVO HALL
2015/05/07(木)愛知 Zepp Nagoya
2015/05/08(金)愛知 Zepp Nagoya
2015/05/10(日)福岡 Zepp Fukuoka
2015/05/12(火)大阪 なんばHatch
2015/05/17(日)札幌 Zepp Sapporo
2015/05/21(木)東京 Zepp Tokyo

KANA-BOONのとぅるとぅるかむとぅるーTOUR 2015 ~全国とぅるとぅる編~ 追加公演!
2015/05/22(金)東京 Zepp Tokyo
2015/05/26(火)大阪 Zepp Namba (Osaka)
2015/05/30(土)沖縄 桜坂セントラル

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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