強く美しく前進し続ける、THE NOVEMBERSの10周年記念ツアーファイナル
THE NOVEMBERS | 2015.04.23
10周年を迎えて、ノーベンバーズが旅に出た。このツアーはファンからリクエストを募り、それを織り込んだセットリストでライブを行なうもの。タイトルの“A Decade Of Beauty”は、彼らが独自の“美”を追求してきた10年目のひと区切りといった意味だ。
しかし僕は、渋谷クアトロでのノーベンバーズがどう映るのかに興味を掻き立てられた。オール・スタンディングで最大規模の収容能力を持つスタジオコーストでのライブを成功させたバンドを、クアトロという“普通サイズ”のライブハウスで見るとどんなマジックが起こるのか。しかもノーベンバーズは今、パフォーマーとして充実し切っている。期待を持ってロビーからフロアへの階段を上がっていった。
やたらと男性オーディエンスが増えている。昨年はフェス出演や、ベンジーやCHARAとのコラボもあって、タフなロック・ファンにノーベンバーズの実力が知られるようになったからだろう。
1曲目は最新アルバム『Rhapsody in beauty』から「Romancé」だ。BGMとしてかかっていたループのまま、演奏が始まる。ミドルテンポの美しいコード感に包まれて、まずは小林祐介のボーカルが冴える。ムードにまかせた不明瞭さは微塵もない。高松浩史のベースが自由なラインを描いて、小林の声に色彩を与える。続く「Flower of life」では吉木諒祐のキックドラムが安定して、小林と高松の自由度がさらに高まり、なめらかな盛り上がりを見せる。この“なめらかさ”は、以前にはなかった。大きなステージを経験すると、バンドは必要最小限で効率の良い表現を獲得する。大きなステージでは、細かい音よりーショナルなギター・プレイに如実に表れていた。
一方でオーディエンスは、例によって余計なことをせずにノーベンバーズの演奏に聴き入っている。表面的な盛り上がりより、内面的な興奮を大事にするオーディエンスなのだ。が、それでも身体を揺らしている者もいる。これは大きな変化だ。3曲目「pilica」のイントロのギターが流れた途端、歓声が上がったのも変化の一つだった。つまりノーベンバーズの音楽が秘めている“内なるパワー”が、このクアトロでわずかだが顕在化していた。この事実を確かめられただけでも、クアトロに来た意味があるというものだ。
そして迎えた後半が圧巻だった。前半は“リクエスト”のせいもあってややメローな曲が多かったが、最新アルバムの「236745981」、1st EPからの「ア_-オ」 と急激にロック度を増していく。さらに「primal」、「鉄の夢」がクアトロにとどめを刺す。キックドラムの連打に呼応するように、空間を引き裂く小林のシャウトが素晴らしい。
「今回、リクエストしてもらって、自分たちとは違う意味や価値観で曲と触れ合うことができ て、楽しかったです。ありがとう」と小林が言って始まったラストの「holy」 は、教会のパイプオルガンを彷彿とさせる音色で響くギターのアルペジオが、バンドの底力を見せつけたのだった。
ステージを去ったメンバーを求めて、アンコールの拍手が巻き起こる。しかし、そのハンドクラップが揃わない。これも「それぞれのやり方で楽しむノーベンバーズのファンらしい現象だった。
「結成して10年になりましたが、やりたいこと、やらなきゃいけないことがいっぱいあります。まだまだこれからって感じで、明日からいい1日1日を過ごしていきましょう」と小林はツアー・ファイナルを結んだ。
最後の3rd EPのタイトル曲「GIFT」では、ざらついたコードの端々に美しさをすべり込ませる。この曲からノーベンバーズが外に向かって発信を始めたことを、僕はやっと思い出した。もうそんなことは忘れてしまうほど、ノーベンバーズは今、力強く前進を 続けている。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:OZK】
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