MISIA、「星空のライヴVIII MOON JOURNEY」。5月5日の東京公演をレポート
MISIA | 2015.05.18
最新シングル「白い季節/桜ひとひら」のインタビューの際、MISIAは「今回のシングルは生演奏にもこだわっている作品なので、この楽曲の世界観を表現するにはやっぱり“星空のライヴ”のスタイルがいいだろうと思ってます。バンド・メンバーは、新しい人ともやってみようかな」と語っていた。その言葉どおり、今回のツアーは生演奏主体の“星空のライヴVIII MOON JOURNEY”だ。
バンドの要であるリズム・セクションのドラムはTOMO、ベースはJINOだ。TOMOは以前にMISIAのライヴでプレイしたことはあるが、ツアーを回るのは初めて。JINOとのコンビネーションは切れが鋭く、ロックのニュアンスも含んでいて、これまでのバンドとはそこが大きく違っている。
そんなバンドの良さが、いきなりオープニングで爆発した。1曲目「桜ひとひら」は、ドラマ『永遠のゼロ』の主題歌。MISIAはこの曲について「この歌はいわゆる女性らしい、傷を癒やすタイプの曲ではないと思うんです。真っ向から問題に対して進んでいくような、そういう力強さがあるバラードではあると思います」と位置付けていた。だからサウンドは“男っぽく”仕上げたと言う。その意図がTOMO&JINOのリズム・セクションによってライヴで実現される。バラードなのにグルーヴィーな「桜ひとひら」からスタートしたライヴは、そのままダンサブルなステージに発展していく。「Royal Chocolate Flush」ではリズムの切れがさらにアップして会場が盛り上がる。これまでの“星空のライヴ”にはなかったパワフルな滑り出しとなった。
「Royal Chocolate Flush」はMISIAのヒップホップ・サイドを支えるSAKOSHIN/Shusuiの作曲で、そのことだけでも今回の“星空のライヴ”がバラード中心ではないことが伝わってくる。MISIA自身も「めくばせのブルース」で早くもコール&レスポンスをしたり、超ロングトーンを披露したり、このバンドを得て彼女がシンガーとしてより自由に羽ばたいているのが爽快だった。
「ようこそ!最高の一夜にしたいと思っていますので、最後まで楽しんでいってくださいね」と、MISIAが挨拶する。
このシークエンスも最新シングルからの「真夜中のHIDE-AND-SEEK」などでオーディエンスは身体を揺らす。7曲目の「ANY LOVE」で満を持して静かなバラードが聴けた。その切り替えの見事さに、歌い終えたMISIAが話し始めると、観客は彼女のMCに引き込まれていく。
「初めてアフリカを訪れてから、もう8年になるんですね。その時、感じたことを基にして『ANY LOVE』の歌詞を書きました。大事なものを見失わないで生きていきたいなと思っています。世界には限りがあります。物質的な豊かさだけを求めると、奪い合うことになります。そして、それは戦争に繋がっていきます」と、MISIAは非常にシンプルな論理で、平和を守ろうと訴えた。
MISIAはこれまでも、アフリカの子供たちへの支援や生物多様性の維持に積極的に関わってきた。それを踏まえた言葉なだけに、オーディエンスは真剣に耳を傾け、自分の問題として受け取っていたのが印象的だった。
だから「皆さんに聴いて欲しい曲があります」と言って歌った未発表曲「花」が、心に沁みた。自分を大切にしようというメッセージが、すっと会場に吸い込まれていく。最新シングルを掲げてのツアーでありながら、今聴かせたい歌とメッセージをきちんと届けるMISIAの姿勢は、時代の空気に流されない強さを率直に表現していて感動的だった。
後半はアッパーチューンが並ぶ。バックコーラスに男性のYUHOが加わったことで重厚さが増し、さらにはロックやジャズを新しい感覚で昇華する注目のギタリスト吉田サトシが入って2人になったギター・サウンドが全体に迫力と色彩を与える。前述のリズム・セクションと相まって、“星空のライヴ”としてはこれまでにないエンターテイメントに突入する。ラストの「HOPE&DREAMS」は、MISIAにしかできない4つ打ちの楽しさをたっぷり味あわせてくれた。
「みんな、楽しんでくれたかな?」と、アンコールでMISIAが笑顔で叫ぶ。今日のパワーを持って帰って、明日から素晴らしい1日1日を作っていきましょう」。そうしたメッセージを込めて歌った「One day, One life」が、この日のベストチューンだった。MISIAのボーカルを完璧にサポートするコーラスと、歌を完全に理解したバンド・サウンドが、会場の隅々までを満たす。歌の内容と音楽が高いレベルで一致して、このツアーの目指すものがそこにあるような気がした。
そしてMISIAは「もう1曲、ぜひ歌いたい歌があります」と言って、最後にもう一つの未発表曲「流れ星」を歌った。自分自身が本来持っている良さに気付くことができますようにと願うこの歌は、どこかで「花」とつながっている。
「ANY LOVE」の後に歌われた「花」と、最後に歌われた「流れ星」。ライヴの最も重要なシーンで、MISIAは未発表曲を披露した。いい曲に出会うと、歌いたくなり、聴かせたくなる。アー ティストとしての本能のままに行動するMISIAは、とても素敵だ。その素直さは、もしかすると今回のツアーで解放されたものなのかもしれない。そして、歌うべきことと表現形態がぴたりと一致したとき、何か奇跡が起こる。そんな期待の膨らむツアー序盤のライヴだった。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:田中雅也】
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リリース情報
[DVD] 世界遺産劇場Misia Candle Night at 沖縄
2015年04月01日
アリオラジャパン
お知らせ
MISIA 星空のライヴVIII MOON JOURNEY
2015/05/20(水)静岡県 アクトシティ浜松大ホール
2015/06/05(金)宮崎県 宮崎市民文化ホール
2015/06/07(日)鹿児島県 鹿児島市民文化ホール・第一
2015/06/11(木)宮城県 仙台サンプラザホール
2015/06/12(金)宮城県 仙台サンプラザホール
2015/06/17(水)新潟県 長岡市立劇場
2015/06/18(木)新潟県 新潟県民会館
2015/06/24(水)広島県 ふくやま芸術文化ホール・リーデンローズ
2015/06/26(金)鳥取県 米子コンベンションセンター
2015/06/30(火)大阪府 大阪フェスティバルホール
2015/07/01(水)大阪府 大阪フェスティバルホール
2015/07/07(火)東京都 東京国際フォーラムホールA
2015/07/08(水)東京都 東京国際フォーラムホールA
2015/07/11(土)大阪府 大阪フェスティバルホール
2015/07/12(日)大阪府 大阪フェスティバルホール
2015/07/17(金)石川県 本多の森ホール
2015/07/18(土)長野県 上田市交流芸術文化センター
2015/08/13(木)福岡県 福岡サンパレス
2015/08/15(土)大阪府 大阪フェスティバルホール
2015/08/16(日)大阪府 大阪フェスティバルホール
2015/08/29(土)沖縄県 沖縄コンベンションセンター劇場棟
2015/08/30(日)沖縄県 沖縄コンベンションセンター劇場棟
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。