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ねごと、初の全国ワンマンツアーのファイナル公演をレポート。

ねごと | 2015.06.18

 ねごとが全国ワンマンツアー「ねごと presents 『お口ポカーン?! 初の全国ワンマンツアー2015 ~VISIONは続くよどこまでも♪~』」を行った。ニューアルバム『VISION』を携え、初日の地元・千葉LOOKを皮切りに全国16か所を回ったこのツアーは、ねごとにとって初の全国ワンマンツアーとなった。そのファイナル公演が、6月7日、東京・Zepp DiverCity TOKYOで開催された。

 オープニングを飾ったのは「未来航路」。アルバム『VISION』でも1曲目に収録されているこの曲は、ポジティブなミディアム・アップ・チューンだ。エンディングのサビがトランシーで、ねごと独特の浮遊感も楽しめる、じつに“欲張り”な1曲である。ライヴでは、この浮遊感が滑らかなスピード感につながり、一瞬で会場をトリップさせた。

 佑(B)と小夜子(Dr)タイトなリズム隊が走り出す。表情豊かな轟音ギターが、それを追いかける。「sharp♯」。♪ ライラライライラライ…… ♪ 大合唱が起こった。最初の挨拶。幸子(Vo)が話し出そうと思ったら、観客から「待ってたよ!」の声。嬉しそうに幸子が話し出す。

「ねごとです、ツアーファイナル、東京、帰ってきました。1曲目からみんなの顔が良く見えて、こちらもすごく上がってます。ありがとう! ねごとと一緒にいい夜を作っていきましょう、よろしく!」

 コケティッシュでキュートなナンバー「アンモナイト!」では、観客とのコールアンドレスポンスもばっちり。幸子は ♪ 東京、今日は楽しまないと~ ♪ と、歌詞を変え、歌う観客に曲の中でもレスポンスした。ギターの瑞紀のロック・スピリッツとちょい奇天烈なギターセンスが光る「GREAT CITY KIDS」では、息の合ったスキルフルな演奏を見せる。スリリングな曲調と相まって、聴いていてゾクゾクした。音楽をもっと自由に楽しみたい、その楽しさをたくさんの人と共有したい……これは、ねごとのポリシーだ。4人が音楽と向き合う理由であり、初期衝動である。これは結成当初から変わらない。デビュー以降は、このポリシーに対する自分たちの中での意識の変化に、戸惑っていた時期もあった。しかしそこを乗り越え、ちょっと大げさに言えば原点回帰を掲げ、挑んだフルアルバムが『VISION』だったと思う。彼女たちが、音楽性の自由を求めれば求めるほど、演奏スキルが必要になってくる。この数年で確実に演奏スキルが上がったねごと。アルバム『VISION』が、楽曲バリエーションはもちろん、格段に自由度があがったのは、彼女たちの表現の手腕が上がったからだ。そしてこれは、初期衝動をビルドアップする結果にもつながった。この初期衝動、意外に骨太で男前。

 6曲目「透き通る衝動」。2010年9月に発売されたファーストミニアルバム『Hello! “Z”』に収録された、透明感と刹那が同居した、ねごとらしいアップチューンだ。ライヴでの人気も高い。この日、久々に披露されたこの曲は、まったく違うバンドが演奏しているようだった。リズムも太いし、Aメロとサビのメリハリもダイナミック。演奏中の余裕もあって、タメやブレイクなどにも新たな表情が感じられた。その中でも特筆すべきは幸子のボーカルである。ニュアンス、声のコントロールなどにも目を見張ったが、サビの声の張り方に驚いた。クリアで抜けのいい声質の良さをそのままに、声量が上がった感じ。太くなったというよりは、重なるように厚くなった……そんな印象だった。

 中盤では「ドリーミードライバー」「ふわりのこと」と、ミディアム・バラードをしっかり丁寧な演奏で聴かせた。幸子は、ひとことひとこと、歌詞の意味を噛みしめるように歌った。2曲終わったところで再びMC。

「今日はじっくり歌えてます、ありがとう」と幸子。その後、瑞紀がアルバム『VISON』を語るコーナーへ。途中で何度も中断し、笑いを誘いながら独特の口調(正直に言えばたどたどしい最上級)を貫いた瑞紀。その言葉をまとめるとこうなる。

「『VISION』ってアルバムは、私たちが、こう……命を燃やしながら生き動いている感じを表現できたらいいねって思って作った作品です。すごいエモい感じの曲がたくさんできました。ただただ音楽が好きなだけでここまで来て、いろんな音楽の可能性を追いかけて1曲1曲作りました。もっと音楽を掘り下げていきたい。みんなで音楽をわっしょい! したいです。『VISION』は自由で命がめぐってるアルバムです。それが外に開けていったらいいなと思います」

 演説終了後「今日はすごいまとまった!」と満足気な瑞紀に、幸子、佑、小夜子の3人が、同時に「まっとまってはないけど、伝わった?かな?」と突っ込む様子に会場が和む。小夜子に至っては、瑞紀のMC中にストレッチをするマイペースさを発揮した。笑った。こんな“和ませMC”も、ねごとのライヴの定番シーンである。

 このほっこりMC劇場の後、ねごとはムードを一変させる。「エイリアンエステート」「真夜中のアンセム」「透明な魚」と、メランコリックなメロディとクールな雰囲気が特徴の楽曲を立て続けに披露。この3曲は、これまでのねごとのライヴには無かった、大人の表情が感じられるブロックと言っていいだろう。特に、揺らぐ水中と、そこに堕ちていく少女のイラストでプロジェクション映像を展開した「透明な魚」は、スムースで淡々としたグルーヴを見事に再現していて、ねごとの世界をまたひとつ広げた1曲になっていた。

 ライヴは後半へ向かっていく。佑が前に出てきてベースを鳴らした途端、観客が歓声とともに大きく跳ねた。「ループ」。オーディエンスから“Hi! Hi!”の掛け声が起こる。幸子のロングトーンが、気持ち良く伸びていく。「nameless」では、エンディングで佑と瑞紀がドラムの小夜子の前に集まり、息を合わせてブレイクを待つ。ブレイクの瞬間、大きく手を挙げた幸子の後ろで、佑と瑞紀が、同時にのけ反りながらアクションを決めた。ねごとが、命を燃やしながら生き動き、音楽を楽しんでいる瞬間だと思った。カッコ良かったよ、ねごと!

 17曲目「カロン」。ねごとの名前を全国に広めた、大切な曲だ。♪ 今 信じたい すべてを ♪ 何度も聴いたこのフレーズ。それこそ、彼女たちのライヴを観る度に聴いていた歌詞だ。聴く度、このフレーズと、ねごとというバンドそのものが重なった。それは彼女たちの葛藤する姿だった。その必死さは、ちょっと心配になるくらい、いつもギリギリだった。もしかしたら、取り巻く状況も含めて自分たちが信じられなくなった瞬間もあったかもしれない。でも、彼女たちは音楽を信じることだけは辞めなかった。否、諦めなかったと言った方が正しい。諦めずに、4人は音楽を信じ続けてきた。だから、今のねごとがある。今の「カロン」がある。

 この日の「カロン」で、私の中に見えた風景。それは、夜明けだった。ねごとが4人で描き出した光が、目の前に広がっているようだった。

 アンコールでは、当日、発売直前だった新曲「DESTNY」も披露。メロウな一面もあるドラマチックなミディアム・アップチューンだ。サビの言葉使いなど新境地か。既にMVトレーラーが公開されていたこともあり、サビを口ずさむ観客もたくさんいた。さらには、デビュー5周年記念した自主企画 ねごと presents 「お口ポカーンフェス?!NEGOTO 5th Anniversary ~バク TO THE FUTURE~」の開催決定も告げられた。

 全21曲。ねごとの4人は笑顔でステージを後にした。
 私たちに、こんな約束を残して。

「今日はファイナルだけど、ここからが始まりだと思っています。もっともっと大きな景色を見せるために、前に進みます。信じてついて来てくれますか?」(本編最後の幸子のMCより)

 音楽を信じた者が得た強い意志。その意志の行く先をこれからもこの目で確かめていきたい。
 だから、ねごとの音楽を信じよう、これからも。

【取材・文:伊藤亜希】
【撮影:AZUSA TAKADA】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル ねごと

リリース情報

DESTINY(初回生産限定盤)[CD+DVD]

DESTINY(初回生産限定盤)[CD+DVD]

2015年06月03日

Ki/oon Music

[CD]
1. DESTINY
2. 夜風とポラリス
3. シンクロマニカ -Mizuki Masuda Remix-

[DVD]
ねごと presents 「お口ポカーン?!初の全国ワンマンツアー2015 ~VISIONは続くよどこまでも♪~」』~初日密着ドキュメンタリー編~

※クリアフィルムブックレット仕様

セットリスト

お口ポカーン?! 初の全国ワンマンツアー2015 ~VISIONは続くよどこまでも♪~
2015.6.7@Zepp DiverCity

  1. 未来航路
  2. sharp #
  3. アンモナイト!
  4. 黄昏のラプソディ
  5. GREAT CITY KIDS
  6. 透き通る衝動
  7. コーラルブルー
  8. ふわりのこと
  9. ドリーミードライバー
  10. エイリアンエステート
  11. 真夜中のアンセム
  12. 透明な魚
  13. ループ
  14. nameless
  15. endless
  16. シンクロマニカ
  17. カロン
  18. Time machine
  19. 憧憬
Encore
  1. DESTINY
  2. 夜風とポラリス
  3. Re:myend!

お知らせ

■ライブ情報

ネコフェス2015
2015/06/28(日)【兵庫県】神戸市内ライブハウス

OKETO GREEN FESTIVAL
2015/07/05(日)【北海道】置戸町ファミリースポーツセンター横特設会場

GOOD ON THE REEL presents 「HAVE A “GOOD” NIGHT」
2015/07/14(火)【愛知】名古屋 ell.FITS ALL

バンドやろうよ!!Vol.6
2015/07/19(日)【東京】赤坂BLITZ

GIRLS’ FACTORY 15 DAY1
2015/08/03(月)【東京】代々木第一体育館

ROCK IN JAPAN FES. 2015
2015/08/08(土)【茨城】国営ひたち海浜公園

音霊 OTODAMA SEA STUDIO 2015
2015/08/18(火)【神奈川】音霊 OTODAMA SEA STUDIO 2015

BAYCAMP 2015
2015/09/05(土)【神奈川】川崎市東扇島東公園

お口ポカーンフェス?!NEGOTO 5th Anniversary ~バク TO THE FUTURE~
2015/11/23(月・祝)恵比寿 LIQUIDROOM

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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