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TRICERATOPSのアルバムツアー第一弾、Zepp Tokyoをレポート!

TRICERATOPS | 2015.06.19

 TRICERATOPSの最新アルバム『SONGS FOR THE STARLIGHT』は現時点での彼らの最高傑作だろう。バンドが最新作にして最高傑作を携えてツアーを敢行するということは、新たな武器を手に入れて、その機能を駆使していくということを意味する。当然、ツアーへの期待は高まっていくのだが、彼らはその期待を大幅に上回る素晴らしいステージを展開した。バンドがリアルタイムで進化し続けているその瞬間を目撃できる幸せを噛みしめた。アルバムツアーの第1弾となる“TRICERATOPS‘R’GOOD ENOUGH”の3本目、6月5日、ZEPP TOKYO。

 オープニングナンバーは最新作1曲目の「GRRR! GRRR! GRRR!」。シーケンサーのデジタルのリズムに、林幸治の骨太のベース、吉田佳史のパワフルなドラム、和田唱のソリッドなギターが加わって、強烈なうねりを生み出していく。彼らはデジタルのリズムも飲み込んで、人間味あふれるビートを生み出していた。精緻であることとダイナミックであることとが共存するグルーヴはバンドの進化の証しだろう。2曲目も最新作2曲目「HOLLYWOOD」。ノスタルジックなのにアグレッシヴ。相反するベクトルを強烈な躍動感へと変換していくような強靱な歌と演奏がいい。“どんな世界も受け入れてみるんだ”という歌詞とバンドの柔軟でタフな姿勢とが重なっていく。最新アルバムの曲、やればやるほど、良くなっている。新曲たちによってバンドが鍛えられているということでもあるのだろう。

「みなさん、踊る準備はいいですか? 歌う準備はいいですか? 騒ぐ準備はいいですか?」という和田の言葉に大歓声が起こる。1階フロアも椅子席になっていて、ゆったり踊ることもじっくり聴くこともできる。これはこれで快適なライヴ空間だ。最新アルバムの曲を軸としながらも、様々の年代の曲も交えつつの選曲。深みのある歌とハーモニーによって、陰影のある世界を形成していた「僕はゴースト」、ミラーボールの光が振り注ぐ中での高揚感と一体感あふれる「スターライト スターライト」など、最新作の曲が素晴らしいのはもちろんなのだが、ロックンロール風のセッションを導入部として、コール&レスポンスも交えての「TATTOO」、ゴリゴリしたハードなサウンドと優美なメロディとが絶妙にマッチしている「GREEN」など、バンドの歴史を刻んできた楽曲がどれも、熟成しながらもロック本来の荒々しさやワイルドさが損なわれていないところも素晴らしい。深い味わいと勢いとが両立している。バンドの最新の姿も本質も堪能できるステージだ。

 和田のガットギターの弾き語りでの「Any Day」では小粋な歌と演奏にやられた。アコースティック編成での表情豊かな歌と演奏に浸っているのが気持ち良かったのは「PUMPKIN」だ。和田のピアノ、林と吉田の繊細なハーモニーをフィーチャーした「Happy Saddy Mountain」ではみずみずしいポップな世界が新鮮だった。繊細な歌とコーラスワークが印象的だった「虹色のレコード」での広がりのあるイマジネイティヴな世界にはうっとりしてしまった。こうした演奏からは彼らが類いまれなロックバンドであると同時に、3人それぞれが多彩な表現力を備えたミュージシャンであることがよくわかる。個々の演奏も最高。そしてその3人が集うと最強。

「何やってほしい?」と和田が客席からリクエストを募って、Paul McCartney & Wingsの「Silly Love Songs」を演奏したり、吉田が魅惑のハイトーンを全開にして、「Let It Go ~ありのままで~」を披露したりという場面もあった。こうした自在さ、フットワークの軽さ、遊び心、サービス精神も彼らのライヴの魅力のひとつ。

「みんなを勇気づける歌って色々あると思う。ここではないどこかへ行こう、みたいな歌が世の中にはいっぱいあるけれど、オレらはみんな、そのままでもイケているよ、そのままで素敵なんだよって歌を作れたらいいなあと思っていて」という和田のMCも印象的だった。もともと彼らには肯定するパワーが詰まった曲をたくさんある。ツアーのタイトル曲であり、バンド史上屈指の名曲でもある「GOOD ENOUGH」はその決定版のひとつ。そしてこれはライヴ空間でさらに輝きを増していく曲だろう。観客も一緒に“Wow wow”とシンガロングする光景そのものがミラクルだった。“奇跡が既に起こっている”ことをこの瞬間が鮮やかに証明していた。この曲がこんなにも説得力を持っているのは、デビューして約18年、彼らが悩んだり迷ったりしながら、様々な困難を乗り越えてきたから、そして間違いなく今、バンド史上最高の音楽を鳴らしているからだろう。まさに“TRICERATOPS ‘R’ GOOD ENOUGH”。

 林と吉田の白熱のセッションに体が揺れた「HAYASHI&YOSHIFUMI GROOVE」、強い意志が詰まったタフな演奏がズシッと響いてきた「Believe The Light」、観客が一緒に歌い踊った「Raspberry」など、最高の演奏の連続。この曲の“それで全てうまくいく”という歌詞を聴いていて、彼らの曲の中にはデビュー当時から一貫して肯定するパワーが存在していることも再確認した。吉田が「お前ら、最高!」とシャウトしながら、ドラムを叩いている。本編の最後のナンバー「ポスターフレーム」ではバンドも観客も一緒に未来へと誘っていくような温かさと確かさと力強さを備えたグルーヴに胸が熱くなった。

 アンコールに入る直前には広告の制作チームがメンバーのキャッチボール・シーンを撮影する場面もあった。TRICERATOPSは「野球・ソフトボールを東京オリンピックの正式種目に!」というPR映像のために「Shout!」という新曲を作っている。長嶋茂雄、王貞治、野茂英雄など、野球界の伝説のスーパースターも出演している映像を観た人もたくさんいるだろう。その第2弾PR映像に本人たちが出演することが決定し、本編とアンコールの合間に観客が見守る中で、その映像素材となるキャッチボール・シーンの撮影が行われたのだ。アンコールではその新曲「Shout!」も披露された。演奏途中で林がビニールボールを客席に投げ入れると、大きな歓声が起こった。未発表の新曲なのに、観客も一緒にハンドクラップして、歌っている。参加したくなるエネルギーが充満するパワフルでフレンドリーな曲。そして未来へと誘ってくれる曲。続いての「2020」はこの並びに入ると、まるで2020年に東京オリンピックが開催されることを予知した歌のようにも響いてきた。アンコールのラストは「FUTURE FOLDER」。未来をたぐりよせていくようなエネルギーがほとばしる演奏が圧巻だった。

 “GOOD ENOUGH”にあふれた夜だった。楽しいステージであるのだが、根底に自らを日々更新し続けていこうとするバンドの強い意志がある。現在のこの場所に存在していることを全面的に肯定しながら、よりよい未来へと向かっていくことのかけがえのなさをバンドが身をもって示していた。この素晴らしき今の瞬間こそが未来へと繋がる唯一の道だ。9月からは第2弾のアルバムツアー(全国22公演)が予定されている。果てしない物語はまだまだ続いていく。

【取材・文:長谷川誠】
【撮影:山本倫子】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル TRICERATOPS

リリース情報

SONGS FOR THE STARLIGHT

SONGS FOR THE STARLIGHT

2014年12月10日

Trinity Artist

1. GRRR! GRRR! GRRR!
2. HOLLYWOOD
3. スターライト スターライト
4. ポスターフレーム
5. GOOD ENOUGH
6. PUMPKIN
7. 僕はゴースト
8. 虹色のレコード
9. FLASH!!!
10. 恋するギターとガーベラの花
11. ふたつの窓

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セットリスト

TOUR 2015“TRICERATOPS‘R’GOOD ENOUGH”
2015.6.5@Zepp Tokyo

  1. GRRR! GRRR! GRRR!
  2. HOLLYWOOD
  3. Silly Scandals
  4. 僕はゴースト
  5. TATTO
  6. GREEN
  7. スターライト スターライト
  8. Any Day
  9. PUMPKIN
  10. Happy Saddy Mountain
  11. 虹色のレコード
  12. GOOD ENOUGH
  13. HAYASHI&YOSHIFUMI GROOVE
  14. Believe The Light
  15. Raspberry
  16. ポスターフレーム
Encore
  1. Shout!
  2. 2020
  3. FUTURE FOLDER

お知らせ

■ライブ情報

「SONGS FOR THE STARLIGHT」リリースツアー第二弾
TRICERATOPS "SHOUT TO THE STARLIGHT TOUR"

2015/09/19(土)北海道・札幌cube garden
2015/09/26(土)神奈川・川崎CLUB CITTA’
2015/10/03(土)千葉・柏PALOOZA
2015/10/04(日)山梨・甲府CONVICTION
2015/10/10(土)岩手・盛岡CLUB CHANGE WAVE
2015/10/12(月)宮城・仙台Darwin
2015/10/17(土)静岡・浜松窓枠
2015/10/18(日)岡山・岡山CRAZYMAMA KINGDOM
2015/10/24(土)埼玉・熊谷HEAVEN’S ROCK VJ-1
2015/10/25(日)茨城・水戸LIGHT HOUSE
2015/10/31(土)広島・広島CLUB QUATTRO
2015/11/01(日)福岡・福岡BEAT STATION
2015/11/03(火)鹿児島・鹿児島CPARVO HALL
2015/11/07(土)福島・郡山CLUB#9
2015/11/08(日)埼玉・さいたま新都心HEAVEN’S ROCK VJ-3
2015/11/14(土)愛知・名古屋ボトムライン
2015/11/15(日)石川・金沢EIGHT HALL
2015/11/21(土)香川・高松DIME
2015/11/22(日)大阪・大阪BIGCAT
2015/11/28(土)富山・富山MAIRO
2015/11/29(日)新潟・新潟LOTS
2015/12/06(日)東京・赤坂BLITZ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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