amazarashiがデビュー5周年を記念し、400名限定のプレミアムライブを開催。
amazarashi | 2015.06.22
MCがあって、アンコールがあった。ふつうのバンドであれば、どちらも当たり前のことかもしれないが、amazarashiのライブではとても珍しいことだ。
2010年6月9日にメジャーデビューしたamazarashiが、ちょうど5周年記念日に渋谷WWWで開催した「amazarashi 5th anniversary live『APOLOGIES』」。APOLOGIESとは、モバイルファンサイトの名称だ。
このライブの終盤で秋田ひろむ(Vo・G)はこう言っていた。「この先のことはまだわからないけど……10年後、20年後も、またamazarashiを聴きてぇなと思ったときに、会いに来てもらえるようになりたいです」。それはファン限定ライブという特別な場所だからこそ、秋田が伝えたかった特別な想いだったのかもしれない。
400人のキャパに400人限定。フロアは満員だ。ステージ前方にしつらえた紗幕の向こうに、秋田ひろむ(Vo・G)と豊川真奈美(Key)に加えて3名のサポートメンバーが立つと、「ポエジー」からライブはスタートした。重々しいバンドサウンドにのせて、淡々と欲望をぶち撒ける秋田の攻撃的なボーカル。そのラストで、《僕は僕を愛したい》と強く言い放つ。間髪入れずに「ジュブナイル」では、紗幕にアニメーション映像が映し出され、その下に演奏するメンバーの姿がはっきりと見える。もとは映画館だった渋谷WWWの構造のせいか、この日のステージは、まるで映画とライブを同時に見るようだ。
冒頭の3曲を終えたところで、秋田が喋った。
「デビュー5周年。特に、これといった感慨もないですけど……こういう機会がないと、みなさんに感謝を伝えられないので、ライブをやることにしました。ありがとうございます」。
慎重に言葉を選びながら口にしたのは、飾り気のないシンプルな感謝の気持ち。会場からは温かい拍手が湧き起こった。
そして、ちょうど6年前のこの時期に作ったという「夏を待っていました」の後、この日のためにファンサイト「APOLOGIES」で募集していたリクエストの中から1位となった「ポルノ映画の看板の下で」が披露された。そして、豊川の優しいピアノのフレーズにのせて、秋田が穏やかに歌いはじめた「性善説」では、紗幕に聖母マリアの姿と、街の喧騒、悲惨なニュースが映し出され、否応なしに聴き手にメッセージが突き付けられる。
善とは、悪とは、平等とは、幸福とは。
amazarashiのライブでは、いつもそんなふうに答えのない問いに茫然と向かい合い、まるで心が丸裸にされるような、頭がやけにフル回転するような感覚がある。
圧巻だったのは中盤、1stアルバム『千年幸福論』の初回限定盤に封入された小説「しらふ」のポエトリーリーディングだった。己の人生を悲嘆して、呪う言葉で生きようとする男の悲痛な叫び。それをメモも見ずに、真っ直ぐに前を見て朗々と語る。伴奏はないが、韻と抑揚によって、それは音楽のようにも聴こえた。その詩にのせて、秋田が少しずつギターを掻き鳴らすと、同じ世界観を引き継いだまま「ヨクト」へ。表現者・秋田ひろむの奥底にある激情が剥き出しになる、息を呑むパフォーマンスだった。
二度目のMCでは「人生が変わる瞬間はいろいろあると思んです。わいたちもそういう風にして今ここにいます。そのたび、ああ、これが運命なのかなと思うけど。でも、運命って他に選択肢がなかっただけなのかなと最近は思ってます。……やむにやまれない選択肢でここまで来られました」と、語りかけた秋田。「わいたちの運命を変えた曲です」と、繋いだのはインディーズデビュー作に収められた「光、再考」だった。てるてる坊主の周りを、ぐるぐると歌詞が回るMVと共に歌い上げると、いよいよライブは終盤へと向かっていく。
大きく身体を揺さぶりながら、「後期衝動」「空っぽの空に潰される」といったナンバーを、その歌に宿る言葉を、懸命に伝えていくクライマックス。「夜の向こうに答えがあるのか?」と投げかけて、ラストを締めくくったのは「スターライト」だった。ダイナミックなバンドサウンドにのせて、光のごとく真っ直ぐに希望を目指すこの曲は、ここ最近はamazarashiのライブでは毎回披露されている、バンドにってとても大切な1曲だ。紗幕には、星が瞬く宇宙空間をきらびやかな列車が駆け抜けていく。幻想的な景色と共にライブは幕を閉じた。
すべての曲が終わった後、通常、amazarashiのライブにアンコールがないことは百も承知のファンたちが、それでも再登場を願って拍手を送り続けた。すると、秋田がひとりアコースティックギターを持って現れたのだ。「歌います」と一言だけ言うと、中島美嘉に提供した「僕が死のうと思ったのは」を弾き語りで披露。《死ぬことばかり考えてしまうのは/きっと生きる事に真面目すぎるから》と、歌詞をはっきり聞き取れる口調で歌う。それは“それでも生きろ”という、amazarashiからのこの日最後のメッセージだった。
【取材・文:秦 理絵】
リリース情報
セットリスト
5th anniversary live「APOLOGIES」
2015.6.9@shibuya WWW
- ポエジー
- ジュブナイル
- 季節は次々死んでいく
- 夏を待っていました
- ポルノ映画の看板の下で
- 性善説
- 雨男 ポエトリーリーディング「しらふ」
- ヨクト
- ヒガシズム
- 冷凍睡眠
- 光、再考
- ナモナキヒト
- 自虐家のアリー
- 14歳
- 後期衝動
- 空っぽの空に潰される
- スターライト
- 僕が死のうと思ったのは
お知らせ
amazarashi 5th anniversary live
3D edition
2015/08/16(日)豊洲PIT
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。