ハルカトミユキ「ワンマンライブ2015‘世界’」、東京公演をレポート!
ハルカトミユキ | 2015.07.02
ライブ終演後、会場をあとにする観客にブルーのチケットが手渡された。10月3日(土)に開催が決定した日比谷野外大音楽堂でのフリーライブのチケット。本来、フリーライブだからチケットはいらないのだが、そこには<約束済>という判が押されている。それは、ハルカトミユキがこの日のアンコールで観客のひとりひとりと交わした約束を記したチケットだ。
6月19日(金)に恵比寿リキッドルームで開催された、ハルカトミユキのワンマンライブ2015‘世界’。予定時刻より10分押しでステージに登場したハルカは、エレキギターを抱えたあと、やおら雄叫びをあげた。彼女が叫ぶのは珍しい。そして、1曲目。ハルカトミユキの復活と再生を象徴する「世界」を真っ直ぐに前を見据えて歌い、間奏では客席に向かって手を挙げ、清々しく晴れやかな笑顔を見せた。続くロックナンバー「バッドエンドの続きを」では台に乗ってギターをプレイし、ミユキがくるくると回った「ヨーグルト・ホリック」はシニカルな歌詞であるにも関わらず、ある種の幸福感を与えてくれた。幸福というと言い過ぎかもしれないが、少なくとも凝り固まった心が解けていくような開放感があった。
冒頭の3曲だけでも、これまでのパフォーマンスとは明らかに違っていると感じられた。最初のMCで、「いつかシアトルでライブがやりたい」というミユキに対し、ハルカが「世界も行きたいですが、今日は会場を楽しませたい」と返すシーンがあった。その、「会場を楽しませたい」という意識は、おそらくこれまでもあったのだろうが、もっと静かで冷静で、観客それぞれに内省を促すようなやり方だった。彼女たちのライブは、悩みや葛藤、混乱や戸惑いに満ちた本を手渡され、読書をするかのようにひとりで本の世界に入り、それぞれが、自分の心と向き合うような空間となっていた。ステージから発せられる歌も内向的で、しんとした心の中に浸ったまま、自分に向かって歌っているような傾向があった。会場の一体感を求めるライブが大勢を締める中で、彼女たちのように、個が個であることを尊重してくれるライブは希少で、魅力の1つでもあったのが、この日は間違いなく外向きのエネルギーに満ち溢れていた。
その違いは、新曲にも現れてきている。ハルカが「ひとりぼっちの驚くような空の色」と語ったあとに歌った「マゼンダ」に続く、「春の雨」。<♪恋をした気高さは二度とない/明日をただ生きるから>というフレーズ。これまでは過去の自分を悔やみ、ラブソングと距離を置いてきたが、この曲は失恋ソングとしても聞けるし、未練に引きずられながらも、視線は少しだけ先の未来にある。ラブソングという、聴き手との共感度の高いテーマの曲が生まれてきたことも変化の1つだろう。と同時に、この2曲では、ヴォーカルとしてのパワーも感じた。純粋に歌心のみでスケールを広げていき、聴き手の気持ちを徐々に高めていく。ヴォーカリストとしての充実度を感じられるパフォーマンスとなっていた。
2015年は、毎月新曲を発表することをマニフェストにしている彼女たちの6月の新曲「COPY」。他者とのコミュニケーションがうまくとれない恐怖感を歌ったジャズブルースをふたりだけで演奏した。「歌う意味を思い出させてくれたみんなへ、この曲を贈ります」と語った「その日がきたら」、ふたりとも上着を脱ぎ、踊り、飛び跳ねながら歌った「嘘ツキ」「振り出しに戻る」「tonight」。そして、インディーズ時代からライブではおなじみのナンバーへ。彼女たちの変化に戸惑う古参ファンもいたかもしれないが、最後の「青い夜更け」は、ハルカの「みんなの声を聞かせてください」という問いかけに応え、ラララの大合唱が響き渡った。全ての歌が、演奏が、顔が、観客に向けられていた。
アンコールでは、日比谷野外大音楽堂でフリーライブを開催することが発表された。ハルカは、自分の心ではなく、観客ひとりひとりの目を見ながら、こう話した。
「ひとりぼっちが大勢集まるお祭りがやりたいんです。しかも、それが星空の下だったら最高じゃないですか。ひとり×3000。野音で、みんなで燃え尽きる覚悟でやりたいと思っているので、ぜひ、みんなも来てください。約束です。野音で必ず会いましょう」
5月の新曲「春の雨」は星の歌でもあり、6月の新曲「COPY」には、怖いくらい澄み切った空が広がっている。7月以降、どんな感情やどんな風景を見せてくれるのか楽しみだし、10月3日の約束は、あの日、あの場所にいたひとりとして、必ず守るつもりだ。
【取材・文:永堀アツオ】
【撮影:石井亜希】
リリース情報
セットリスト
ワンマンライブ2015‘世界’
2015.6.19@LIQUIDROOM
- 世界
- バッドエンドの続きを
- ヨーグルト・ホリック
- 未成年
- マゼンダ
- 春の雨
- 君はまだ知らない
- 流星(吉田拓郎カバー)
- COPY
- その日がきたら
- 嘘ツキ
- 振り出しに戻る
- tonight
- ニュートンの林檎
- マネキン
- プラスチック・メトロ
- 青い夜更け
- ドライアイス
- Vanilla
お知らせ
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2015/09/01(火) クラブチッタ川崎
フリーライブ‘ひとり×3000’
2015/10/03(土) 日比谷野外大音楽堂
http://www.diskgarage.com/harumiyu-yaon/
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
ハルカトミユキ公式モバイルサイト
「ハルミユtown」
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