ABEDONのアルバムツアー、セミファイナルとなった東京公演をレポート!
ABEDON | 2015.07.21
前回ツアーのビルボードライブ東京から一気に会場がデカくなって、ABEDONの“SUPER ROCK’N ROLL SHOW”が六本木、EX THEATERに登場だ。
ほとんど一人で作り上げた前作アルバム『BLACK AND WHITE』のツアーの最終日に、ABEDONは「俺たちは終わらない。このメンバーでレコーディングをやる!」と宣言。メンバーの八熊・ヤック・慎一、奥田・OT・民生、木内健、斎藤有太と共に、アッと言う間に『ファンキーモンキーダンディー』を完成させた。といっても、多忙なメンバーのスケジュールを合わせるだけでも大変で、“アッと言う間”に作るしかなかったのだが、5人はそれを見事にやり遂げた。
ツアーを経て生まれたこの5人にしかできないコミュニケーションが、誰も聴いたことのない楽しいロックンロール・アルバムを生み出した。そのアルバムをいよいよライブで聴けるのだ。
開演を告げるSEは、高中正義の「Blue Lagoon」。70年代末を飾るギター・インストの傑作だ。リゾート気分でスタートとはABEDONらしい。
1曲目は「WAKEUP! STANDUP!」。ABEDONが愛用の真っ赤なフライングVギ ターを掻き鳴らす。ヤックの暴れ太鼓に誘われて、ベースのOTがステージ前へ躍り出る。再会を待ちかねたオーディエンスは大騒ぎだ。続く「サヨナラサムライ」も“5人で何でもやる心”にあふれていて、内容は前回ツアーから大幅にバージョンアップされている。
ちょっと澄ましたビルボードも楽しかったが、完全にバンドサウンドになった今回は、オール スタンディングのEX THEATERが似合う。
「はい、どーも。オシャレな街、六本木はどうですか? 長いツアーも折り返し、セミファイナルです」とABEDON。今日はツアー全4本の3本目。折り返し、かつファイナル前なのだ。ABEDONはこのメンバーでライブができることを楽しみに、短期間での曲作りとレコーディングというハードワークに耐えた。だから4本のライブを、大規模ツアーのように愛おしむ。
「ONE AND THREE FOUR」ではOTがドラムを叩く。ヤックがベースだ。1、2曲目とまったく違うニュアンスのグルーヴが楽しい。ニューアルバム『ファンキーモンキーダンディー』からの曲が豊かな表情で演奏される。
ここで気が付いた。ライブが始まってからここまで、メンバー5人はずっとニコニコしている。ABEDONのライブの秘密はここにある。この“ニコニコ”がオーディエンスに伝わって、オーディエンスもニコニコしてしまうのだ。“音楽の楽しさ”と言ってしまえば当たり前のことだが、実はちゃんと音楽を楽しんでいるミュージシャンは少ない。さらに、その楽しみをオーディエンスと共有できる人はもっと少ない。ABEDONはユニコーンでその方法を身に付けた。そしてソロ活動で、相手が変わるとその楽しみも変わることを発見した。だから5人で『ファンキーモンキーダンディー』を作ったと言ってもいい。“音楽の楽しみ”は、別の言い方をすると“音楽で遊ぶ”こと。次のコーナーでABEDONは、それを実践してみせる。
メンバー4人がいったん、ステージを去る。一人になったABEDONは、ずっと愛用しているシンセ“ミニムーグ”をいじり始める。
「昔のシンセだけど、いろんな音が出る。最近、使われない楽器になっちゃったので、使おうかと思って」と言って、マリオなど、昔のゲームの音を生で再現してみせる。インベーダーの音にどよめきが起こると、「これがわかる人は、世代がわかる」と笑わせる。「鳥の声や波の音も出せるよ」と言った後、“音楽の遊び=効果音”に包まれて「森ノ中」を歌ったのだった。
さらに「私と一緒にピアノを弾いてくれる人がたくさん来てくれたので紹介します」と4人のメンバーを呼び込んだ。
ピアノの脇に立って木製部分をパーカッションのように叩くヤック、超低音部の鍵盤の前に座る木内、低音部は斎藤、真ん中にABEDON、高音部にはOTが座って、全員で1台のピアノを弾く。5人の連弾だ。しかもABEDONの歌にみんなでハーモニーを付ける。「ときどき雨」の曲の良さが、何倍にもなってオーディエンスに届けられる。オーディエンスは“ニコニコ5人”のパフォーマンスを目と耳で楽しんだ。ABEDONのいちばん伝えたかった“音楽の楽しさ”が、連弾という遊びを通してオーディエンスと共有できた瞬間だった。
曲の最後でOTが、鍵盤を右から左にグリッサンド(指を丸めて鍵盤を滑らせる奏法)する。それがABEDON、斎藤、木内と、まるで“流しソーメン”のようにリレーされて曲を締めた。直後にハイタッチする5人。オーディエンスは大喜びで大きな拍手を贈ったのだった。
ベストの演奏は、「バ・バ・ヌ・キ」だった。OTのドラムとヤックのベースが重いリズムを作る。そこに木内のトリッキーなギターが絡む。ABEDONがブルースハープを吹き鳴らすと、へヴィーなブルースロックが出来上がった。斎藤がそれに乗ってカッコいいエレピ・ソロを決める。ブルースの巨人“マディ・ウォーターズ”顔負けの本格的なプレイに、ABEDONがこのバンドを愛する理由がわかった気がした。
反対に、アンコールの「みみそうじをしよう」は、幼稚園児の休み時間のよう。全員がデカ耳を付けて、♪ミミンミンミン♪と次々に歌っては大笑い。絶対にオーディエンスよりステージ上が楽しんでいる。全力で遊ぶ姿も、ABEDONがこのバンドを愛する理由なのだ。
最後の曲は、ヤックの在籍するSPARKS GO GOとABEDONが結成したAVEX GO GOのナンバー「TOY JUMP」で、会場全員が遊んで終わった。終始、ABEDONのポリシーに貫かれた、全員参加のハッピーなライブだった。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:三浦憲治】
リリース情報
セットリスト
SUPER ROCK’N ROLL SHOW "ファンキーモンキーダンディー"
2015.7.6@EX THEATER ROPPONGI
- WAKEUP! STANDUP!
- サヨナラサムライ
- ONE AND THREE FOUR
- SEA SIDE STYLE
- Moog Solo
- 森ノ中
- ときどき雨
- バ・バ・ヌ・キ
- 三角系
- SO SO GOOD
- ファンキーモンキーダンディー
- みみそうじをしよう
- SUN SET SUN
- TOY JUMP
お知らせ
NUMBER SHOT 2015
2015/07/26(日)福岡県 海の中道海浜公園野外劇場
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015
2015/08/08(土)茨城県 国営ひたち海浜公園
SPARKS GO GO 25th Anniversary Special JUNK! JUNK! JUNK! ∞2015
2015/09/19(土)北海道 倶知安町駅前 石蔵倉庫
2015/09/20(日)北海道 倶知安町駅前 石蔵倉庫
ユニコーン EBI50祭 "海老乃大漁祭"
2015/10/02(金)神奈川県 パシフィコ横浜
2015/10/03(土)神奈川県 パシフィコ横浜
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。