前へ

次へ

ゴスペラーズ坂ツアー2014~2015“G20” 渋谷公会堂ライヴレポート

ゴスペラーズ | 2015.07.27

 昨年から始まったゴスペラーズ坂ツアー2014~2015“G20”は、デビュー20周年を記念してのオールタイム・ベスト選曲のツアーだ。そのツアーもいよいよ終盤に差し掛かっての東京公演。渋谷公会堂が間もなく改装になってしまうので、この建物でのゴスペラーズのライヴは最後となる。

 実は僕がゴスペラーズのライヴを初めて観たのは、ここ、渋谷公会堂でのことだった。テレビ神奈川のカウントダウン・ライヴ番組に、ゴスペラーズはTRICERATOPS共に“期待のニューカマー”として登場してくれた。その時はDJバリK~んのみがバックを務めていて、ヴォーカルグループ&DJのライヴというのは、当時はとても珍しいスタイルだった。僕自身もバンドのライヴばかり観ていたので、トラックのみをバックにしたパフォーマンスに面食らった覚えがある。しかも「これが俺たちのスタイルだ」という主張が全編に満ちていて、アクの強いニューカマーだなという印象を持った。
 その時は「侍ゴスペラーズ」など数曲を披露してくれた。僕は“歌い継ぐ”スタイルを眼前にして、彼らの新しさと、その意味を考えさせられた。“リードヴォーカル&バックコーラス”が一般的だった時代にあって、それは本当にユニークなスタイルだったのだ。
 渋谷公会堂に一歩足を踏み入れた瞬間、そんなフラッシュバックに襲われた僕は、だからこそこの日のライヴで、5人の音楽性と存在感を立体的に捉えることができたのだと思う。

 オープニングは「1, 2, 3 for 5」だった。2009年に34枚目のシングルとしてリリースされたこの曲は、ある意味、21世紀の「侍ゴスペラーズ」と言っていい。目まぐるしくリードが移り変わるヴォーカルアレンジを、5人は見事な説得力で歌い切る。対して満員のオーディエンスはハンドクラップで応えるのだが、そのリズム感の確かさはゴスペラーズと共に過ごしてきた濃厚な時間を体現していて感動的だった。
 序盤のハイライトは「Slow Luv」。ブラック・ミュージックの色彩の濃いヴォーカリゼーションなのだが、5人は無理に声を合わせようとせず、それでいて美しいハーモニーを織りなす。それぞれが、それぞれのままハモる。20年のキャリアと半年に渡るツアーで練り上げられたヴォーカル・サウンドは、スリルと安定感を両立させていて、完成度が非常に高かった。

「最初の頃は、バラードをハーモニーで届けるのが武器だった。でもそれ一つだけじゃ足りない。どうやって武器を増やしていこうかという試行錯誤の連続でした」と北山が語る。元来の持ち味に加えて、J-POPの要素を取り入れたり、歌いながらダンスのフォーメーションを組んだり、そのときそのときの課題を1個1個クリアしてゴスペラーズはここまで来た。それらは強力な武器となって5人を押し上げ、この日のライヴはその“集大成”というべき内容だった。
 アカペラ・バージョンのデビュー曲「Promise」、大ヒット曲「永遠(とわ)に」、切ない「東京スヰート」など、バリエーション豊かなゴスペラーズ・ワールドが繰り広げられる。
 圧巻だったのは「いろは」だった。ウィットに富んだリリックと曲の展開が、会場を熱く巻き込んでいく。5人はこの曲のグルーヴを完全に掌握していて、ズシンと重たいリズムでオーディエンスを圧倒する。歌そのものがこれだけのグルーヴを打ち出すのは、ゴスペラーズだけができる離れ業だ。
 「いろは」が終わって村上が、「血圧の上がるアカペラです」と笑顔で言った。その笑みは自信にあふれていて、20年目の手応えを確かに感じていることをうかがわせた。安岡が「僕らはそれを、ケンカ・アカペラって呼んでます」と付け加えた。

 ツアーが始まったときは“冬”をテーマにしていたメドレーが、前日から“夏バージョン”に衣替えしている。今回のツアーは多数のリピーターがいるが、彼らも大満足のセットリストだ。そのセットリストを、5人は余裕をもって楽しんでいる。本編は息つく暇もなく、盛りだくさんに終わったのだった。

 そしてアンコールの1曲目は、あの「侍ゴスペラーズ」。初めてゴスペラーズを観たときと同じDJバリK~んをバックにしたステージで、完成度は遥かに増していたが、アクの強さは変わっていなかった。
 ゴスペラーズのこの20年間は、ある意味、洗練に向かう月日だったように思う。それでもグループとしての軸にまったくブレがなかったのは、この“アク”を守ってきたからなのだと納得した。まさに安岡の言う“ケンカ・アカペラ”。ただ美しく一つにまとまろうというコーラスではなく、メンバーそれぞれが個性を譲らずに火花を散らす。そこから生まれるエネルギッシュなハーモニーこそが、ゴスペラーズの命だ。そのことを改めて感じた、素晴らしい20thアニバーサリ―・ツアーのライヴだった。

【取材・文:平山 雄一】
【撮影:佐藤 薫】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル ゴスペラーズ

関連記事

リリース情報

Dream Girl(初回生産限定盤)[CD+DVD]

Dream Girl(初回生産限定盤)[CD+DVD]

2015年09月09日

Ki/oon Music

[CD]
1. Dream Girl
2. 星降る夜のシンフォニー

[DVD]
Sweet & Mellow Medley「月明かりのドレスで」
From 2015.5.23(sat)「ゴスペラーズ坂ツアー2014~2015”G20”」@中野サンプラザホール
月光~Heartbeats~裸身~Yes,No,Yes…~告白

このアルバムを購入

セットリスト

ゴスペラーズ坂ツアー2014~2015“G20”
2015.6.21@渋谷公会堂

  1. 1, 2, 3 for 5
  2. FIVE KEYS
  3. 愛の歌
  4. Love me! Love me!
  5. Slow Luv
  6. 見つめられない
  7. ミモザ
  8. Love Vertigo
  9. U’ll Be Mine
  10. Atlas
  11. GOD BLESS YOU
  12. Vol.
  13. 逃飛行
  14. 夢の外
  15. 永遠(とわ)に
  16. 東京スヰート
  17. Promise
  18. 真赤な太陽
  19. Thank You
  20. いろは
  21. ひとり
  22. 月光
  23. Right on, Babe
  24. 裸身
  25. Yes,No,Yes...
  26. 告白
  27. 靴は履いたまま
  28. 熱帯夜
  29. カレンダー
  30. ウルフ
  31. 一筋の軌跡
  32. LOVE MACHINE
  33. SING!!!!!
  34. ラヴ・ノーツ
  35. あたらしい世界
  36. 約束の季節
<Encore>
  1. 侍ゴスペラーズ
  2. ギリギリSHOUT!!
  3. 星屑の街

お知らせ

■ライブ情報

SOUL POWER TOKYO SUMMIT 2015
2015/09/12(土)東京国際フォーラム ホールA
2015/09/13(日)東京国際フォーラム ホールA

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る