SiM、夢を叶えた2日間。『DEAD POP FESTiVAL 2015』初日を完全レポ
SiM | 2015.07.28
あの涙はずっと忘れないだろう。
SiMは、以前からライヴで何度も「地元で野外フェスをやる!」と宣言してきた。もはやこちらもその言葉が刷り込まれてしまい、当然やるものだと信じていた。しかし、照りつける熱い太陽、雲ひとつない青空の下に辿り着くまで、血の滲む努力を積み重ねたに違いない。その結果が今日の絵に描いたような快晴に繋がったと言えるだろう。遡ること2010年に『DEAD POP FESTiVAL』第1回目が行われ、今年6回目にして念願の野外フェス2DAYS開催に踏み切った。
川崎駅からバスで揺られること約30分、人工海浜が隣接した川崎市・東扇島東公園が会場だ。メインステージ向って左に海を臨み、大型船や飛行機が優雅に横切る光景が見られる。また地面には足のくるぶし以上に伸びた草が生い茂り、柔らかな絨毯の役割を果たしてくれる。最高のロケーションだ。
会場内は「CAVE STAGE」(メイン)、「CHAOS STAGE」(サブ)と2ステージ用意され、サブにはjealkb、ギルガメッシュ、MINOR LEAGUE、CRYSTAL LAKE、NOISEMAKER、G-FREAK FACTORYの6組が名を連ね、jealkbが「KiLLiNG ME」をカヴァーすると、SiMのSHOW-HATE(G)が飛び入りするレアな場面もあった。ここでは初日のメイン・ステージを軸にレポートしたい。
初日のオープニングアクト・odd fiveが終わり、午前11時50分になると、スクリーンにSiMの楽屋が映される。そこに清野茂樹アナウンサーが突撃し、メンバー4人はプロレスラー口調で諸注意を促し、「試合開始じゃ!」のMAH(Vo)の宣言で本編開始。
正午にトップで登場したのはキュウソネコカミだ。いきなりCMタイアップ曲「MEGA SHAKE IT!」を投下すると、ダンサブルな曲調に煽られ、観客も激しく踊り出す。コミカルかつアッパーな鍵盤を含むノリ抜群の演奏に、炎天下の熱さを凌ぐ盛り上がりだ。また、お祭り感のあるギターフレーズでも焚き付け、キュウソの底なしのエネルギーに圧倒されるばかり。「DQNなりたい、40代で死にたい」でウォール・オブ・デスを指示し、「DEAD POP、死んで帰れー!」とヤマサキセイヤ(Vo/G)が叫ぶ場面もあり、終始切れ味鋭いキャッチーな音色で狂乱図を作り上げる。
「SiMは数少ない友達バンドなので、珍しく熱くなってる」という尾崎世界観(Vo/G)のMCも印象的だったクリープハイプ。切ないメロに聴き入ってしまうミディアム・テンポの「オレンジ」で始まり、青い炎のごとく静かに燃え盛る曲調が心のヒダにひたひた沁みる。中盤、夏の歌をやりますと前置きした後、「ラブホテル」を披露。途中で演奏を止め、この曲は当時の彼女と弟の車でラブホテルに行こうと思い、途中まで乗せてもらってチャリで行った、というエピソードをサラッと挟む。それから自然とまた演奏に戻る辺りがニクい。ラストは図太いベースが轟く「HE IS MINE」で締め、爽快な空に響く湿ったエモーションに胸をえぐられた。
それからMighty Crownは、まるでオセロをひっくり返すようなパーティー空間を演出する。「レゲエの世界で7回チャンピオンになった。手拍子くれ!」とMASTA SIMON(MC)が叫ぶと、SAMI-T(SLECTER/MC)はQUEENを皮切り、BOB MARLEYなどレゲエ・ナンバーを流す。中盤過ぎにTHE BLUE HEARTSの「TRAIN-TRAIN」で10-FEETのTAKUMA(Vo/G)が飛び入り!それを機に観客は前に押し寄せ、マキシマム ザ ホルモンの「メガラバ」で野外ディスコのごとく踊りまくる観客が急増。また、「小さな恋のうた」でMONGOL800のキヨサク(Vo/B)が歌に参加したり、賑々しい活況を呈した。フェス折り返し地点で現れた氣志團は、期待を裏切らないエンタメ性を遺憾なく発揮する。1曲目にまさかのSiMカヴァー「KiLLiNG ME」で火蓋を切った。綾小路 翔(DRAGON VOICE,MC&GUITAR)は歌メロ、早乙女光(DANCE&SCREAM)はシャウトとパートを分け、ヘヴィさ全開で盛り上げる。「かかって来い、コノヤロー!」と翔やんが煽ると、次もまた「KiLLiNG~」でダメ押し。もう、お見事としか言いようがない。最新曲「Don’t Feel, Think!!」を挟み、ラスト曲「One Night Carnival」で観客が汗だくで歌う姿が印象的だった。
ド頭から涙腺が緩む「あなたに」で幕を開けたMONGOL800。「てか、沖縄より暑いですね。今日は晴れて良かったね!」とキヨサクは笑顔で語りかけた後、疾走感に溢れる「Love song」、名曲「小さな恋のうた」と心温まるモンパチ・ワールドを畳み掛ける。そして、既にMV公開済みの新曲「himeyuri~ひめゆりの詩~」を披露。パンク・ビートをここまで切なく響かせ、胸を打つ曲に仕上げてしまう彼らのセンスに感動。本当にいい曲だ。トリ前の大役は"地元開催の野外フェス"でも先輩と言える10-FEETが務めた。「VIBES BY VIBES」で始まるや、観客同士が肩を組んで輪になって回るピースフルな光景が見られる。ファン思いの10-FEETならではの盛り上がりだ。続く「RIVER」でさらに焚き付け、ドシッと構えた懐の深い演奏の熱量に圧倒される。貫禄さえ漂う横綱相撲で攻める一方、メンバー3人のやり取りで笑わせるアプローチもさすがの一言。「SiM、みんなが遊べる場所守っていってや。応援するから!」とTAKUMAがエールを送るシーンにもグッと来た。
日もすっかり沈んだ19時36分、「あの空を越えて、どこまでも高く、ぶっ飛んで行こうぜー!」というMAHが叫ぶと、遂にSiMが登場。暗闇に真っ赤な照明が映える中、「Get Up,Get Up」をプレイ。観客もとんでもない暴れっぷりでヘヴィな楽曲に応えている。「Faster Than The Clock」では僕の眼前で巨大なサークルモッシュが出来上がり、その高まる熱狂の渦に後方に移動せざるを得なかった。新曲「EXiSTANCE」もプレイされ、ヘヴィなゴリゴリ感と日本語のサビの対比はライヴでも絶大なインパクトを放ち、時折吹きつける夜風の気持ち良さにもテンションは上がった。今日は初日ということも関係しているのか、「ああ~、緊張する」とMAHは零しつつ、少し長めのMCをここで挟む。「湘南で組んだバンドで、昔からでかいことばかり言ってた。でも口に出して、本気でやれば、支えてくれる人が増えて、気付いたら仲間しかいなくて・・・」と言うと、MAHの目から歓喜の涙が溢れる瞬間をスクリーンは捉えていた。あんなシーンを見たら、こちらも熱いものが込み上げて、涙が出てくるじゃないか。ラストスパートは「Same Sky」、「KiLLiNG ME」で締め、「みんな夢を叶えてくれて、ありがとうー!」と素直に感謝の気持ちを述べるMAHの言葉も感動的だった。アンコール2曲を含め約50分のショウだったけれど、一生忘れられないライヴになったと断言してもいい。
青空の下でモッシュできる最高の遊び場として、来年も是非この場所で開催してほしいと強く思った。
【取材・文:荒金良介】