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アジアを含む、Silent Sirenの春夏ツアー、渋谷公会堂をレポート

Silent Siren | 2015.07.29

 まるでテーマパークのようなライブだった。国内18公演に加え、台湾と香港の2公演を含む、Silent Sirenの春夏ツアー「Live Tour 2015 Spring → Summer ~サイレン VS サイレント~」。16本目となる渋谷公会堂の1日目。観客の手首には、このテーマパークへの参加を証明する光るリストバンドが巻かれている。開演時刻とともに赤いランプが点滅し、サイレンが鳴り響く。4人のメンバーがステージに登場し、ポーズを決めると大きな歓声が湧いた。ヴォーカル&ギターのすぅとベースのあいにゃんはピンクと水色、キーボードのゆかるんとドラムのひなんちゅは全身黒という、正反対のカラーを身にまとっていた。満員の客席に手を振り、ひなんちゅはスキップしながらドラムセットに向かった。3人のメンバーは彼女の方を向き、カウントを待つ。ひなんちゅが両手を大きく振りかぶり、強烈な一撃を加えた瞬間に、渋公は音を楽しむテーマパークへと姿を変える。ナビゲーターはステージ上の4人だ。彼女たちは、その歌で、プレイで、パフォーマンスで、この4人でしか生み出せないグルーヴで、1曲1曲を丁寧に、明確に、その曲の楽しみ方、参加の仕方を示してくれた。

 例えば、ジャンプ&掛け声で盛り上がる2曲目「BANG!BANG!BANG!」では、ゆかるんがさらにクラップを煽り、サビには誰でも真似できるフリもフィーチャー。「ラッキーガール」では観客がコーラスで参加しながら、最後は全員のジャンプで締め、「「Are you Ready?」」では早くも全力でタオルを回す。お客さんを巻き込んだ借り物競争が展開されたおなじみの“サイサイコーナー“を経て、「clap!!!」には太鼓の達人のような映像に合わせて手拍子をする遊びが盛り込まれ、「LOVE FIGHTER!」はみんなで踊り、あいにゃんのコーラスが効果的なエレポップ「手をつないで」では、隣の人と手をつないで手をあげるシーンがあった。ミラーボールがまわったダンスロック「DanceMusiQ」になると、お客さんたちは肩を組んで、右に左に揺れながら歌い、激しいパンクロック「爽快ロック」では拳を突き上げ、体を大きく前後に揺らしながらヘドバンした。バンドの演奏とともにジャンプし、シャウトし、クラップし、声を張り上げて熱唱する。ライブが進むたびにバンドと客席の境界線は薄れていき、本編最後の「ぐるぐるワンダーランド」では、もはや感動的といっていいほどの一体感を感じた。

 この、他では類をみないほどの一体感は、数多くのステージを通して培ってきた、彼女たちが“ファミリー“と呼ぶ、ファンとの絆の深さからくるものだろう。サイサイファミリーのカップルに向けて作ったという初のウエディングソング「ハピマリ」を歌う直前に、すぅはこんなことを言っていた。

「初めて特定の人に向けて作った曲なので、すごく感情移入して歌えます。ふたりがいつまでも幸せに過ごしてくれればいいなと思って作った曲だけど、このハッピーの連鎖がみんなにも広がって、毎日をルンルンな気持ちで過ごしてもらえたら嬉しいです。ここにいるみんなが幸せになるといいなと思います」(すぅ)

 彼女はさらに、「雨が降ってるだけでどんよりしたときに、ツイッターのリプライで、サイサイの曲を聞いてハッピーな気持ちになりましたって言われると、バンドをやっててよかったなと思う」と語り、「ひとりだと何もできないんですけど、メンバーがいたら強くなれる。バンドはまだ小さいけれど、ファミリーのみんながいたら大きくなれる。一緒に強く成長していけたらいいなと思うし、みんなのことを支えられるような音楽を作るので、みんな、付いてきてください」とメッセージを伝えた。

 音楽を通して、聴き手を笑顔にすること。嫌なこともある日々のささやかな幸せのスパイスになること。バンド結成から5年、インディーズとして初めてのリリースから3年。結成当初は、メンバー同士のコミュニケーションをつなぐツールであり、自分を表現する手段の1つだったかもしれない。しかし、精力的なライブ活動を続け、ファミリーを拡大し、今年1月には、バンドの夢だった初の日本武道館ワンマン公演を達成したSilent Sirenにとっては、幸せや笑顔の伝播こそが現在のいちばんのモチベーションであり、大きな目的にもなっているだろう。

 また、メンバーとファンの絆の深さは、バンドの新たな一面を引き出すことにもつながっているように感じた。新たな一面というよりは、心を開き、本質的な部分を見せられるようになったという方が正しいかもしれない。

 これまでの彼女たちは、明るくポップでキュートなガールズバンドというイメージが強かったが、今年2月にリリースした3枚目のアルバム『サイレントサイレン』の収録曲を中心としたセットリストには、いままではあまり見せなかった部分に焦点をあてた楽曲もあった。例えば、「KAKUMEI」は、歌声とコーラスこそ可愛いものの、かなり激しくパワフルなビートロックになっており、ギターリフからはじまる「Routine」のスピード感溢れるドラムやスリリングなキーボードソロに加えて、スクリーンには衝撃的ともいえる歌詞が表示されていた。アグレッシヴでワイルドなロックナンバー「女子校戦争」や、前述のファストなパンクロック「爽快ロック」、日本語の特徴である同音の連続が独特のグルーヴと情緒を引き連れてくる新曲「八月の夜」などなど。バンドはタフで強靭なグルーヴを鳴らし、歌詞では不安や悩み、怒りや悲しみを垣間見せるようになった。ポップとロック、キュートとクール、ブライトとダーク、希望と絶望、光と闇、愛と憎しみ、生と死、孤独と集団……。そして、静寂と喧騒、サイレントとサイレン。彼女たちのバンド名には、もともと相反するものが同居していたのだ。ネガティブ思考の持ち主だからこそ、ポジティブで明るい応援ソングを歌い、孤独や絶望を知っているからこそ、夢や希望を求める。そんなアンビバレンスこそが、彼女たちの魅力であり、本質なのだ。まだまだ見せてない部分も多いだろう。存在自体がポップであることには変わりはないのだから、今後、さらにストレートなロックや心の闇をぶつけた歌詞が増えれば増えるほど、ブライトサイドもより眩しく光り輝くのではないかと期待している。

【取材・文:永堀アツオ】
【撮影:Satoshi Hata】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル Silent Siren

リリース情報

八月の夜(初回生産限定盤A)[CD+DVD]

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2015年08月05日

ドリーミュージック

[CD]
1. 八月の夜
2. secret base 〜君がくれたもの〜

[DVD]
八月の夜(Music Video)八月の夜(Music Video Making)

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セットリスト

Live Tour 2015 Spring → Summer
~サイレン VS サイレント~
2015.7.10@渋谷公会堂

  1. 無音の警告
  2. KAKUMEI
  3. BANG!BANG!BANG!
  4. ラッキーガール
  5. Routine
  6. 「Are you Ready?」
  7. チャイナキッス
  8. clap!!!
  9. stella☆
  10. 曖昧 me mine
  11. LOVE FIGHTER!
  12. ハピマリ
  13. 恋い雪
  14. 女子校戦争
  15. 手をつないで
  16. DanceMusiQ
  17. 爽快ロック
  18. ぐるぐるワンダーランド
<アンコール>
  1. 八月の夜
  2. What Show is it ?
  3. ビーサン

お知らせ

■ライブ情報

Silent Siren主催の夏フェス「サイサイフェス2015」開催!
2015/08/25(火)東京・新木場STUDIO COAST
http://saisaifes.com/

お台場夢大陸 めざましライブ
2015/07/30(木)夢大陸オマツリランド内「SUMMER GATE」

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015
2015/08/01(土)茨城・国営ひたち海浜公園

TOKYO IDOL FESTIVAL 2015
2015/08/02(日)Zepp DiverCity Tokyo

音霊 OTODAMA SEA STUDIO 2015 ~板野友美×Silent Siren~
2015/08/05(水)音霊 OTODAMA SEA STUDIO

LOOP vol.6
2015/08/12(水)Zepp DiverCity Tokyo

SUMMER SONIC 2015
2015/08/15(土)大阪・舞洲サマーソニック大阪特設会場

NAONのYAON2015~SUMMER~
2015/08/23(日)東京・日比谷野外大音楽堂

音楽と髭達2015
2015/08/29(土)新潟・HARD OFF ECO スタジアム新潟

松崎しげる デビュー45周年「黒フェス」~白黒歌合戦~
2015/09/06(日)幕張メッセ 国際展示場

肉ロックフェス 2015
2015/09/12(土)さいたまスーパーアリーナ けやきひろば

風とロック芋煮会2015 KAZETOROCK IMONY LAND
2015/09/26(土)福島県 白河市しらさかの森スポーツ公園

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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