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amazarashi、デビュー5周年を記念して3Dライブを開催!

amazarashi | 2015.08.27

 メディアでの顔出しを一切行なわないamazarashiは、デビュー以来、ライブではステージ前方に紗幕を張り、バンドの姿をあえて全面に出さない特殊なライブを行なってきた。そんなamazarashiがデビュー5周年を記念して豊洲PITで開催したライブは、「3D edition」と題して、いつもの紗幕に、ほぼ全編で3D映像を映し出すという初の試みに挑戦。その斬新な音楽体験は、あたかも初めてライブ会場に足を運んだ時に感覚にも近い、衝撃と興奮、新鮮な感動を味わわせてくれるものだった。

 入口で3Dメガネを受け取り会場に入ると、すでにオールスタンディングの豊洲PITには満員のお客さんが詰めかけていた。場内では3Dメガネを着用する際の注意点がアナウンスされ、定刻を少し過ぎたころ、「後期衝動」からライブはスタートした。秋田ひろむ(Vo・G)が逼迫した声で紡ぎ出す性急なメロディに合わせて、スクリーンから立体的に飛び出しくる歌詞。その歌詞が現われては砕け散る「季節は次々死んでいく」から、美しい夕陽、万華鏡、殺伐とした景色などが交錯する「ヒガシズム」へ。これまで二次元で見てきた映像を、三次元で体感する臨場感は、まさに音楽に呑み込まれていく未知の感覚だ。

 そんな“3D映像のスゴさ”と同時に、一方で「ドブネズミ」では、こんこんと雪降る映像と共に、ステージに蝋燭のように光が揺らめき、「ワンルーム叙事詩」では、激しく燃えさかる3D映像の炎のなかで、バンドの姿が鬼気迫るものとして浮かび上がった。そして、いつになくストレートな言葉で、肩書きやレッテルの無意味さを問いかけた新曲「名前」(『スピードと摩擦』のカップリング曲)の温かいメッセージ。映像と、光と、音と言葉と、それらが多角的に重なる非現実的な空間に、お客さんもまた微動だにせず入り込んでいた。

 ふだんはあまりMCを行なわない秋田が口を開いたのは、「14歳」という曲の前だった。「デビュー5周年ということで、こんなに来てくれて嬉しいです。バンドを始めて、初めてライブをやったのが中学2年生ぐらいでした。あの頃の自分に、こういう景色が待っているよ、と伝えてあげたいと思います」と、感謝を伝える。
 思えば、この日のライブは「後期衝動」という、“いま”のバンドを突き動かす衝動をテーマにした歌で始まった。「14歳」はある意味、それとは対照的な“初期衝動”のナンバーだ。その直前の秋田の言葉とも相まって、バンドの歩みを想い、辿り着いたデビュー5周年に感慨を覚えずにはいられなかった1曲だった。

 リリースされたばかりのニューシングル「スピードと摩擦」では、ミュージックビデオの狂気じみた女の子の姿が3Dの大画面で映し出され、ダークな演奏に、焦燥感を掻き立てる言葉が次々と投げつけられていく。続く、「空っぽの空に潰される」からは、ステージから押し寄せる迫力がさらに増した。紗幕の向こうでは、エレキギターを掻き鳴らす秋田が、全身を激しく揺り動かし、エモーショナルなプレイを見せはじめた。
 確かにこの日、3Dの映像は画期的だった。レーザーも、溢れ出す光も、amazarashiのライブで見られる演出は完成度がとても高い。だが、それも彼らの音楽の一部に過ぎないのだ。ライブで最新の演出技術を使えば使うほど、逆にamazarashiというバンドの生々しさが強く浮き彫りになるような気がした。彼らが放つ、人間の執念にも似た生きたいというエネルギーに、とにかく圧倒されてしまうのだ。

 後半では、「毎回、ライブ会場が大きくなるたび、CDをリリースするたび、ようやくここまで来たなって思うけど、同時にここが限界だろうなと思ったりします」と、ゆっくりと語りかけた秋田。「amazarashiがゼロから今日に至るまでの話です」と言うと、そのままポエトリーリーディング「しらふ」へと雪崩込んだ。まさに“ゼロ時代”の秋田ひろむの荒んだ心情を叩きつけたポエトリーリーディング。そして、おそらく当時の想いが歌に込められているであろう「ヨクト」へ。かつて《どうせいつかは終わるなら せめて自分で選んだ終わり方》と、ギリギリのなかで夢を託した歌い手はやがて、《いつか全てが上手くいくなら 涙は通り過ぎる駅だ》と、新たな気持ちで前へと進んでいく。ラストナンバー「スターライト」は、いまのamazarashiだからこそ表現することのできるダイナミックな歌だった。

 決して声高に5周年だからと祝うタイプではないamazarashiだが、この日のライブは、そこかしこに節目を迎えた彼らの、前進へのたぎる想いを感じられるものだった。顔が出ずとも人間味に溢れ、MCがほとんどなくとも気持ちが伝わり、3D映像でなおバンドの存在感が浮き立つ。そんなamazarashiのこの先に、ますます興味は尽きない。

【取材・文:秦理絵】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル amazarashi

リリース情報

スピードと摩擦(初回仕様限定)[CD+DVD]

スピードと摩擦(初回仕様限定)[CD+DVD]

2015年08月19日

SMAR

[CD]
1.スピードと摩擦
2.風邪
3.名前
4.スピードと摩擦 acoustic Version
5.スピードと摩擦 instrumental
6.風邪 instrumental
7.名前 instrumental

[DVD]
LIVE @nikoniko 2015.05.12
1.光、再考
2.ムカデ
3.季節は次々死んでいく
4.無題
5.スターライト

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セットリスト

5th anniversary live 3D edition
2015.8.16@豊洲PIT

  1. 後期衝動
  2. 季節は次々死んでいく
  3. ヒガシズム
  4. ドブネズミ
  5. 風に流離い
  6. ワンルーム叙事詩
  7. 名前
  8. 14歳
  9. 冷凍睡眠
  10. スピードと摩擦
  11. 空っぽの空に潰される
  12. 雨男
  13. 美しき思い出
     しらふ<ポエトリーリーディング>
  14. ヨクト
  15. スターライト

お知らせ

■ライブ情報

amazarashi 5th anniversary Live Tour 2016
2016/01/17(日) 北海道 Zepp Sapporo
2016/01/24(日) 愛知 Zepp Nagoya
2016/01/31(日) 福岡 Zepp Fukuoka
2016/02/20(土) 広島クラブクアトロ
2016/02/21(日) 大阪 Zepp Namba
2016/02/27(土) 東京 Zepp Tokyo
2016/03/06(日)東京 中野サンプラザ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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