テーマは“つながり”。三浦大知、さかいゆう、KICK THE CAN CREWら、たくさんの盟友と観客と作り上げた「908 FESTIVAL 2015」
KREVA | 2015.09.18
ソロデビュー10周年を迎え、6月から開催してきた53公演にもおよぶ47都道府県ツアーを先月終えたばかりのKREVA。その終盤の中野サンプラザ公演では、今後しばらく腰を据えて制作期間に入るため、ライブは行わない可能性があるとアナウンスされていたこともあり、この「908 FESTIVAL」が年内にKREVAのライブを見る最後になるかもしれない、そんな切ない予感を抱いて、9月8日(クレバの日)日本武道館へと足を運んだ。
ステージ上のDJテーブルには「908」のゼロの文字に王冠をかぶせたお馴染みのクレフェスロゴが黄金色に輝いている。オープニング映像が流れたあと、KREVAの開会宣言。「今年もこうして9月8日を迎えることができました。今日でメジャーデビューして11周年です。昨日まで10周年イヤーをやってました。気持ち的には変わらないけど、身体が軽くなりました」。1年に一度の特別な日、晴れやかな表情で語るKREVAのテンションも高い。
ライブの一番手は4年連続出演のAKLOがまず呼び込まれた。「The Arrival」から、ひとりステージに立ち、強い意志を感じさせるナンバーを次々と畳みかけると、「RGTO」ではKREVAも参戦。互いに向かい合いラップの応酬を見せた「Catch Me If You Can」のあとには、AKLO×三浦大知のコラボによる「Your Lane」へと突入。この日のライブは、こんな風に出演者たちが、頻繁に入れ替わりスペシャルなコラボレーションが繰り広げられていく。
AKLOからのバトンを受け取った三浦大知は、4人のダンサーを引き連れて登場。「Right NOW」と、9月14日リリースの新曲「GO FOR IT」で、Mr.エンターテイナーの名に相応しいキレのあるダンスを見せながら歌うと、夏らしいトロピカルな雰囲気に包まれた「Magic」では、三浦と同じ色合いの衣装に身を包んだKREVAが登場して、一緒に会場を盛り上げた。さらにKREVAの曲のカバーをやりたい、と三浦が選んだのは、名曲「EGAO」。三浦自身のバラード曲「IT’S THE RIGHT TIME」のトラックにそのメロディをのせるマッシュアップという手法で届けられた明日への希望の歌は、強く優しく武道館に響き渡っていた。
間髪いれずに1万人の大歓声に包まれてステージに飛び込んできたのは、KICK THE CAN CREW。白の衣装で統一したLITTLE、MCU、KREVAの3人は「マルシェ」から絶妙のコンビネーションでマイクリレーを繋ぎ、「地球ブルース~337~」では、“ちょっと変わった三三七拍子”で一体感のあるハンドクラップを巻き起こす。「GOOD TME」からはバンドサウンドに切り替えて、さらに会場がヒートアップ。が、ここで突如退場しようとするMCUとKREVA。そこにLITTLEが「まだ何も終わっちゃいないぜ!」と決め台詞を放てば、当然「イツナロウバ」だ。無数にレーザーが飛び交うド派手な演出のなか、オーディエンスは思い思いに身体を動かす。これぞキック。楽しくて、かっこいい。貫禄のステージだった。
2年ぶりにクレフェスに帰ってきたさかいゆうは、「武道館、でっかい声をくれー!」と、初っ端の「サマーアゲイン」から全開のテンションだった。ジャジーでアグレッシブなピアノと共に、極上の歌声で武道館をさかいの色に染め上げていく。そして、リハーサルでもやっていないという「くればいいのに」の一節を突如歌い出して、KREVAを呼び込んださかいは、“KREVAの顔”にインスピレーションを受けて作ったという「オトコFACE」を、ライブで初共演。《眉間の皺には男の生き様 目尻の皺には優しさ》、そんなフレーズと共にスクリーンに大きく映し出されたKREVAの笑顔には、ジャンルを超えた盟友とのステージを心から楽しむように、まさに、その目尻に深い皺がいくつも刻まれていた。
この日、全ての出演者のステージに何度も登場したKREVAが、いよいよ大トリとして、最高のパフォーマンスを見せてくれるときがきた。長丁場のステージを支えた、柿崎洋一郎(Key)、岡雄三(B)、熊井吾郎(DJ)、白根佳尚(Dr)、渡辺剛(Key)という4人のバンドメンバーのソロ回しに続けて、ステージ下から登場したKREVAは、「OH YEAH」で、お客さんを巻き込みながらステージを作り上げていく。そして、「いや~、長かった。ツアーも頑張ったし、昨日もあったし、今日は完全に人の力を借りようと思います。他力本願(笑)。みんなの神輿にのっかっていきます!」と言うと、この10年間でKREVAがいちばん多くの曲を共に作ったというSONOMIを呼び込んで「ひとりじゃないのよ」と「たられば」を披露。どんなときも曲に込めたメッセージをとても大切にするSONOMIの歌は、この日も武道館に集まったお客さんの心を温かく包み込んでいた。
「他人の力を借りるといっても、あくまで俺の歌ですよ!……あくま?」と、ここで、KREVAが邪悪な悪魔キャラに豹変。「お前のケータイに入ってるデータを消してやろうか!怖いだろう?だが、いちばん怖いのはこのキャラにオチがないことだァ!」と笑いをとって、壮大なイントロと共にスクリーンに激しい稲妻が映し出された「基準」。この曲の途中ではAKLOが一瞬飛び込んできたかと思えば、続く「眺め」ではLITTLEとMCUが、さらに「成功」にはその曲大きな影響を与えたさかいゆうを呼び込み、そこに三浦大知も加わった「生まれてきてありがとう」は3人での熱演。めくるめく共演の果てに、「ここまでずっと誰かと一緒にコラボしてきたけど、いちばん一緒に歌いたいのは、ここにいるあなたですから!」と叫んだKREVA。「NaNaNa」で、一斉に飛び出した銀テープが舞い落ちるなか、大合唱を巻き起こすと、MCでは、今年の908 FESTIVALは、期せずしてつながり”がテーマになった、と語りかけた。とかく、ソロ以降は、ひとりストイックに闘う男”というイメージも強いKREVAだが、見渡せば、盟友と呼べる仲間がたくさんいて、大勢のお客さんが彼を待っている。この日のライブを見て、11年目の第一歩となる日に“つながり”というテーマが生まれたのも、なにか必然のような気がした。
アンコールで披露された「全速力」は、AKLOのラップを加えたREMIXバージョンだった。そこに共作の三浦大知をはじめ、さかいゆうのピアノ&歌、SONOMIのコーラス、さらにMCUとLITTLEまで出演者全員がステージに登場して、まさにKREVAが乗る神輿を、みんなで担いだ祭りの最後を飾るのに相応しいステージが繰り広げられた。この日、「これからも良い音楽を作りたい」と、いつものように変わらぬ音楽への情熱を口にしたKREVA。その言葉を信じて、再び彼に会える日を楽しみに待っている。
【取材・文:秦 理絵】