Mr.Children全国ツアー最大規模の会場で、土砂降りの中6万9千人が熱狂!
Mr.Children | 2015.09.25
7月からスタートした全国スタジアム&5大ドームツアー『Mr.Children Stadium Tour 2015 未完』(全10ヶ所16公演)の中で、最大規模の会場、最大観客動員数となった9月5、6日の日産スタジアム公演(2日間で約14万人を動員)。2日目(9月6日)は、開演前から雨が降り続いていたが、そんなことなどお構いなしに、桜井和寿(Vo.&Gt.)は2曲目「擬態」で早くもメインステージから長く伸びた花道へ飛び出し、「一緒に濡れるか~」と叫んだ。最新アルバム『REFLECTION』は、3月から6月まで行っていた全国アリーナツアーの最終日(6月4日)にリリースされたため、そのツアーでは収録曲の中にある何曲もの聞いたことのない曲を、観客はライブで初めて聞くという経験をした。けれど、今回のツアーでは新しいアルバムが発売されてから1ヶ月半後にスタート。桜井が何度も「一緒に歌うぞー」と叫んだのは、このツアーでやる曲は全てみんなが知っている曲だからね!という気持ちの表れだったのかもしれない。そして、この日の演奏曲の何曲かの歌詞がスクリーンに映し出されていたのも、みんなの歌声を聞きたかったからだろう。
ドラムの鈴木英哉が「こんな雨ごとき、おまえらの声で吹き飛ばしちゃおうぜ!」「もっと声が出せるだろ? そんなんじゃ雨雲が飛んでいかねぇぜ」と叫んだあと、ほんの少しだけ雨が小降りになった瞬間もあったが、ライブが進むにつれて雨あしはどんどん強くなっていく。けれど、桜井は「こんなことはめったにない事です。6万9千人が一緒に雨に濡れるなんて、今後一生ないかもしれない。だから楽しいです」「こういうハプニングは大好き」と言った。いつもならばメンバー紹介時に自分の名前を呼ばれても、右手を挙げて微笑むだけの田原健一(Gt.)や中川敬輔(Ba.)が、少ない言葉数ではあったが発言したときは、思わず声を上げてしまった。私たちはこれまでのMr.Childrenのライブを経験していく中で、田原と中川はライブ中にMCをしないと勝手に決め付けていただけに、この嬉しいハプニングには驚いたファンも多かったことだろう。
アマチュア時代に小さなライブハウスでやっていた「CHILDREN’S WORLD」を20年ぶりに演奏する前、桜井は「いつかこんなにでかい場所でやりたいと思っていました」と話した。20代の頃に彼らが思い描いていた未来図は、全てが思い通りに形作られてはいないのかもしれない。けれど、根拠も保障もなかったはずなのに、いつかきっとと心躍らせ、未来の自分たちの姿を想像しながら、何度も現実にぶつかりながらも、彼らは目の前にある日々を一歩ずつ進み続けた。Mr.Childrenが、あの頃と変わらぬ同じメンバーでこの大きなステージに立ち、20年前に歌っていた「CHILDREN’S WORLD」を、今目の前にいるみんなに届けているんだと思うと、胸が熱くなった。そして、彼らが思い描いていた想像を遥かに超えた景色が目の前に広がっていると、人はこんなにも素敵な表情になってしまうんだなと、4人の笑顔を見て思った。
アンコール1曲目「I wanna be there」では、「大事な人が灯してくれた明かりの中でやりたいと思います」という桜井の呼びかけで、観客が手にしたスマートフォンのライトの中で演奏した。6万9千人分の明かりとはいえ、センターステージにいる彼らの姿は遠くの席からは暗すぎてよく見えない。けれど、その場所から聞こえてくる音から彼らがどんな表情をして演奏しているのかを想像することで、自分だけの「I wanna be there」の景色が一人ひとりの中に生まれたはずだ。
アンコールでの「Tomorrow never knows」「innocent world」で起こった大合唱の熱量と、この日いちばんの土砂降りの中で届けられた「Starting Over」での観客とMr.Childrenの一体感は、まさに圧巻だった。全27曲を演奏した3時間半のライブは、想像もしていなかったような土砂降りの雨の中で終わったが、誰もが一生忘れることのできないライブになったにちがいない。
今回のツアーは、“未完”と名付けられている。“未完”とは未完成のまま終わることのではなく、自分が望めば、どこまでも無限の可能性を広げられ、想像することはその続きを描けるということなのだと、Mr.Childrenは今回のツアーで証明してくれた。さぁ、このツアーを終えたあとのMr.Childrenが何をするのか想像してみよう。けれど、きっと彼らは私たちの想像を鮮やかに覆してくれるだろう。Mr.Childrenは、そんなバンドだ。
【取材・文:松浦靖恵】
【写真:石渡憲一】