鍵盤トリオバンドOmoinotake、夏の様々なシチュエーションを美しく彩る1st ミニアルバム『beside』
Omoinotake | 2017.08.01
島根県出身のメンバーによって結成され、東京を拠点に活動を重ねている鍵盤トリオバンドOmoinotakeが、2作目の全国流通盤となるミニアルバム『beside』をリリースする。夏の様々なシチュエーションを美しく彩る全6曲。ソウル、ファンク、ディスコミュージック、AOR……様々なエッセンスを吸収し、親しみやすいポップスとして提示している作品だ。穏やかに身体を揺らしながら多彩な物語に浸り切ることができる今作は、どのようにして生まれたのか? バンド結成の経緯、メンバー各々の音楽的ルーツなども含めて、3人に語ってもらった。
- EMTG:島根出身ですよね?
- 藤井怜央(Vo・Key):はい。全員島根出身で、中高の頃は各々別のバンドをやったり、一緒にやったりだったんです。僕はもともとドラムで、福島はベースボーカルでした。そして、福島と冨田は東京の学校に進学して、僕だけ浪人したんです。
- 冨田洋之進(Dr):上京した2人はバンドメンバーを探したんですけど、なかなかいい出会いがなかったんですよね。そうやっている内に、怜央がコーラスが上手くて、ピアノも弾けることを思い出したんです。だからピアノボーカルとして、浪人している彼を誘いました。
- 藤井:結成は2012年なので、バンドに誘われたのは、浪人中の2011年10月くらいです。センター試験まで、あと2、3ヶ月だというのに(笑)。ピアノロックを全然聴いたことがなかったので、すぐにいろいろ検索しました。ベン・フォールズ・ファイヴとかを知って、TSUTAYAに借りに行って、「なるほど、こういう感じか。楽しそうだな」と思ったり。そこからは受験勉強に専念しましたけど。
- EMTG:みなさんそれぞれの音楽のルーツは、どの辺りなんですか?
- 福島智朗(B・Cho):僕は地元にいた頃はコピーが中心でメロコアをやっていました。HAWAIIAN6が好きでしたね。
- 藤井:僕もメロコアとかパンクでした。HAWAIIAN6、Hi-STANDARD、MONGOL800 、銀杏BOYZとか。
- 冨田:僕がドラムを始めたきっかけは、ORANGE RANGEです。中学校の3年間はORANGE RANGEとRADWIMPSをひたすらコピーしていました。そして、高校に上がってからは、ドラムの先生がジャズ畑の人だったので洗脳されまして(笑)。1、2年間はジャズしか聴かなくなりました。アート・ブレイキー、ブラッド・メルドー、スティーヴ・ガッドのスタッフ……家に父親のCDがいろいろあったので、それを手当たり次第に聴いていました。でも、その後に凛として時雨を聴くようになったんですよ。ピエール中野さんは、僕のドラムヒーローです。
- EMTG:今のみなさんの音楽はソウルとか、80年代のAORっぽいテイストがありますが、どのようにして辿り着いた方向性なんですか?
- 藤井:3人でバンドを始めて3年くらいまでは、いわゆるタテノリの曲をずっとやっていたんです。でも、ギターもいないし、そういう音楽をやっていても埋もれちゃうので「この編成でやれるのは、ヨコノリかな?」と。そこからいろいろ吸収しつつ、今みたいな方向性になっていきました。
- 冨田:怜央は、特にいろいろ聴いて研究していました。山下達郎さんとか、ボビー・コールドウェルとか、ドナルド・フェイゲンとか。
- EMTG:ギターがいないこの編成だと、タテノリの方向性は限界があるんでしょうか?
- 冨田:ありましたね。あと、怜央の声をしっかり聴かせたいというのもあったんです。そうなると勢いで行くというよりも、じっくり聴いてもらう音楽にした方がいいのかなと。
- 藤井:今みたいになるまでには、いろんな試行錯誤がありました。ボーカルにオートチューンをかけていた時期もあったので。
- 福島:今と正反対ですが……。
- 冨田:不評でした(笑)。
- EMTG:(笑)ギターを入れるとか、編成を変えるとかは考えなかったんですか?
- 藤井:「同郷で同い年」っていう結束感があったので、それは守りたかったんです。
- 福島:「ギター欲しくね?」みたいな話をしたことはありましたけど。
- 藤井:でも、3人でやるってことがアイデンティティになると思っていましたし、大事にしたかったんです。
- EMTG:最近、ストリートライブも精力的にやっていますよね?
- 福島:はい。ストリートライブを始めたのは、去年の12月くらいからです。
- 冨田:路上ライブは「音楽に興味がない人にもどれだけ響かせられるか?」というのを大事にしています。
- 藤井:警察に怒られたり、いろいろ大変なこともありますけど(笑)。でも、いろんな人に聴いてもらうためにも、やれる限り続けていきたいです。
- EMTG:音源作品に関しては、今年の1月にリリースした『So far』が、初の全国流通盤でしたよね?
- 藤井: そうです。今の僕らは「素敵なメロディ、素敵な歌詞、乗れる演奏」っていう、ジャンル云々じゃない分かりやすい音楽をやりたいんですよ。その3本柱が見えるようになったので、音源を作る意欲が高まっています。
- EMTG:今回リリースする1stミニアルバム『beside』は、全国流通盤の2作目ですが、どういうものにしたいというイメージがありました?
- 福島:歌詞は、「聴き手のそばに寄り添うような、6つの感情とシチュエーション」をテーマに書いていきました。最初に1曲目の「Ride on」ができたんですけど、歌詞で挑戦することができたんです。前作の時は自分の内面を歌詞にしていたんですけど、「Ride on」は外に向けたものが書けたので、今までにできなかったような1枚を作れるんじゃないかなということを思っていました。
- EMTG:藤井さんは、作曲面でどういうことを考えました?
- 藤井:前よりも明るい曲を増やしたいと思っていました。かといって、そればかりでも面白くないので、6曲の中でいろんな面も出して作ったのが、今回の1枚です。明るい方向性の「Ride on」と「Life goes on」、あと「All of love」の断片は初期の段階で出てきていたので、それ以外のものとして作ったのが「Sunshine Girl」「Bedroom」「Freaky Night」です。僕はリスナーの全部の想いを歌うアーティストが、その人にとっての一番好きな存在になると思っているんです。だから今回の作品もそこを目指しました。
- EMTG:冨田さんは、今作に関して何か変化は感じています?
- 冨田:歌詞がすごく分かりやすくなったと感じています。サウンド面に関しては「Bedroom」「All of love」「Sunshine Girl」は、怜央が全部1人で作り上げてきて、すげえなと思いました。デモの最初の段階から完成度が高かったです。
- EMTG:全体的にすごく洗練された、オシャレな雰囲気のポップスですよね。例えば「Ride on」は、モータウンっぽい要素がさり気なく入っているじゃないですか。
- 藤井:「Ride on」は、スティーヴィー・ワンダーとかを吸収しているのが出ています。
- EMTG:歌はファルセットを上手く活かしているのが印象的です。
- 藤井:せっかく高い声が出るので、武器にしたいと思っています。中学校の頃、X JAPANが好きで。ずっと歌っていたら、変声期になってもあんま声が低くならなかったんですよ。
- 冨田:そうなの?
- 藤井:俺は、高い声が出る理由はそれだと思ってる(笑)。
- 福島:あと、中学生の頃にカラオケでセリーヌ・ディオンも歌ってたよね?
- 藤井:うん。「Taking Chances」を歌ってた。多分、それが理由で今でも高い声が出るんじゃないでしょうか。
- EMTG:……斬新過ぎる説なので話半分で聞いておきます(笑)。
- 福島:はい(笑)。でも、本当にいい声なので、バンドとしても自信を持って前に出していけます。例えば「Bedroom」は、ボーカルを立たせるためだけに作ったようなところがありますから。
- 藤井:「Bedroom」みたいなザ・バラードっていう感じの曲は初めてです。これは歌詞が先にありました。
- 福島:歌詞にしたいことがありまして……。
- 冨田:彼、結構つらいことがあったんです(笑)。
- 福島:つらいことを思い出すので、「Bedroom」を聴くのが嫌なんですよ(笑)。でも、形にすることができて良かったです。
- EMTG:聴くと、どういうことがあったのかは、なんとなく分かります(笑)。コーラスが気持ちいい仕上がりでもありますね。
- 藤井:3人でやっている感を際立たせるためにも、「3人で歌っています」というのを出したかったんです。僕らは全員が頑張らないと成り立たない編成なので。
- 冨田:僕ら、いろいろ頑張っているんです(笑)。曲の構成も練りますから。あと、「3分台で収めたい欲」もあるよね?
- 藤井:うん。いい意味での「飢餓感」を作り出したいんですよ。ビートルズの初期の曲を聴くと、2分台のものがいっぱいあるんですけど、「もう終わっちゃうの?」っていう感じがいいんです。
- EMTG:Alaska Jamの石井浩平さんが提供した「Freaky Night」も、かっこいいですね。
- 福島:前作の「fake me」という曲も石井さんだったんですけど、今回も作って頂きました。
- 藤井:浩平さんは、レコーディングにも立ち会ってくれて、いろんなアドバイスをくれるんです。今回の曲の中だと「Sunshine Girl」を激推ししてくださっています。
- EMTG:「Sunshine Girl」は、80’sポップスな感じですね。
- 藤井:まさにそういうものに寄せています。
- EMTG:美女を助手席に乗せて、首都高を走りながら聴くのが理想ではないでしょうか。
- 冨田:まさにそれです。僕、この曲が流れて、助手席に座っているのが男だったら、下ろしちゃうかも。
- 福島:「自力で帰れ!」って?
- 冨田:うん。
- 福島:ひどい(笑)。
- EMTG:(笑)「Life goes on」は、爽やかなピアノのリフが印象的です。《いつもより丁寧にじっくり バイナルに針を置く》っていうのが、いいですね。
- 福島:そこ、いいですよね。都市生活者の理想形を描いた歌詞なんですよ。
- 藤井:自画自賛(笑)。
- 福島:渋谷のHMVのインストアライブでこの曲をやったんですけど、《バイナルに針を置く》って強調して歌ってくれて、嬉しかったです。アナログ専門店でのインストアライブでしたから。
- EMTG:「All of love」は、アレンジに時間をかけたんじゃないですか? サビに向かう展開がかっこいいです。
- 冨田:これは、かなり試行錯誤をしました。
- 藤井:作りながら一番変化した曲です。サビのメロディは、5パターンくらいありました。
- 冨田:この曲を作る前にブルーノ・マーズをコピーしたんです。そのことによって、アレンジのヒントが見えてきたんですよね。
- EMTG:研究熱心なバンドですね。こうして2作目の全国流通盤が世に出るわけですが、バンドとして見据えている今後の目標は何かありますか?
- 冨田:「紅白に出続けること」というのが僕らの目標です。紅白歌合戦は、音楽に興味がない老若男女が観ますよね。そういう人たちにも「いいね」って思ってもらえる音楽をやりたいんです。路上ライブは、まさにいろんな人に聴いてもらえる機会になっていますから、これからも大事にしたいです。
- 福島:通りかかった人に聴いてもらえると、本当に嬉しいです。「自分たちの音楽が届いているんだ」って実感しますから。
- 藤井:路上ライブは、今の僕らの活動の軸になってきているので、お客さんの反応を肌で感じながらやり続けたいです。
- 冨田:そして、曲の構成、プレイ、メロディの全部に対しても、じっくりこだわっていきたいですね。
- 藤井:最近、いろんな意欲が湧いているんです。だから、ちゃんと1つ1つを形にしていきたいと思っています。
【取材・文:田中 大】
リリース情報
beside
2017年08月02日
NEON RECORDS
1.Ride on
2.Freaky Night
3.All of love
4.Life goes on
5.Sunshine Girl
6.Bedroom
2.Freaky Night
3.All of love
4.Life goes on
5.Sunshine Girl
6.Bedroom
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■ライブ情報
1st mini album「beside」Release Tour
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09/21(木) 大阪・OSAKA MUSE
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10/7(土) 島根・国立松江工業高等専門学校
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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