レビュー
KANA-BOON | 2014.11.26
KANA-BOON「シルエット」
針路を“ボーカルのグルーヴ”に定めたKANA-BOONの大英断
今年の夏フェスの映像を見て、KANA-BOONの成長の方向に驚いた。谷口鮪のボーカルのリズムが、凄いことになっているのだ。譜割(歌詞のメロディへの乗せ方)が、 曲を書いたときのオリジナル・イメージに限りなく近づいていて、バンドの爆発力が飛躍的に増大していた。
普通、バンドの成長といえば、いろんな音楽性に挑戦してみたり、表面的な演奏技術のアップだったりするものだが、このバンドはまったく違う針路を取っている。この譜割の進化のお陰で、歌詞が鋭く心に刺さるようになって、失礼ながら僕はKANA-BOONのポテンシャル(潜在能力)の大きさを改めて思い知らされたのだった。だからニューシングルを待ち焦がれていた。
そして届いた「シルエット」は、期待以上。やはり歌詞の輪郭が鮮明になっている。♪覚えてないこともたくさんあっただろう 誰も彼もシルエット♪というこの歌の核心部分が、はっきりくっきり聴こえてくる。
「シルエット」の曲調はこれまでのKANA-BOONの王道で、大胆な冒険をしている訳ではない。何度も言うが、バンドの進化の方向はそこにはない。より的確に歌詞を届けるために、ボーカルのリズムのブラッシュ・アップを選択したのだ。
ちなみにカップリングの「ワカラズヤ」と「バカ」も、バンドは寄り道せずにボーカルのグルーヴへまっしぐらに集中する。特に「バカ」の歌詞は、ファンキーなビートに乗って暴れ馬のように耳になだれ込んでくる。
そう、この英断がKANA-BOONを、必ずモンスター・バンドにのし上げる。
あ、ジャケットの裏にある曲名が、シルエット・ワカラズヤ・バカと並んで書いてあるのも心底、愉快だ。ユーモアセンスも含めて、このバンド、一瞬たりとも目が離せない。
【文:平山雄一】