2014年、 最もジャンプアップしたバンドのひとつは、KANA-BOONだ。地元・大阪の泉大津での野外ライブは、１万５千人以上を動員。シングルは「結晶星」(２月)、「フルドライブ」(５月)、「生きてゆく」(８月)、「シルエット」(11月)と３カ月ごとにコンスタントにリリース。ファースト・アルバム『DOPPEL』以降の活動を、思い切り加速してきた。

　そして上記シングル４曲を含むセカンド・アルバム『TIME』は、オープニングの「タイムアウト」から全速力で始まる。単にテンポが速いだけではない。速いテンポでないと伝えられない、切迫した気持ちが込められている。♪24時間なんて少なすぎるよな♪という叫びのような歌が、リスナーの目の前５センチまで迫ってくる。シンプルだが強烈なビートで刻まれるギターのリフが鮮やか。速いテンポで忙しい真っ最中に、♪冷蔵庫の中で泣いている弁当みたいになりたくない♪なんて“名セリフ”が入っているのも、このバンドのいいところだ。とにかく真っ直ぐに自分たちの日常と向かい合っている。本当に、純情なバンドだ。

　突っ走ったあげく、ラストナンバーの「パレード」は、♪何度も夢見た世界に、いま僕は立っているんだ♪と現状を把握する。そしてこの歌は、♪未だ見ぬ君の声が聴こえる　ほら、耳を澄まして♪とオーディエンスに向けて結ばれる。

　『TIME』は、2015年のバンドシーンで最も重要なアルバムになるだろう。本当に欲張りで、心底純情なKANA-BOONは、今年、どこまで走るのだろう。楽しみで仕方ない！

【文：平山雄一】