レビュー
吉井和哉 | 2015.01.28
吉井和哉「クリア」
hideが見抜いていた吉井の天才が「クリア」に見える
リズムの元ネタを大サビで♪気分は ボ・ディドリー♪と自分からネタばらししているのが、なんとも吉井らしくて笑える。
それにしても、このメロディの展開のスムーズさは驚異的だ。普通は2行分に当たるメロディを、惜しげもなく1行に詰め込み、その勢いを借りてどんどん変化を遂げる音楽は、吉井の今の絶好調を表わしている。しかも歌詞が、元のレーベル復帰への決意を歌っているのだから、勢いは増すばかり。痛快至極なシングルとなっている。
僕はこの「クリア」を聴きながら、ふいにあることを思い出していた。亡くなったhideのレコーディングの仕事をしていたある日、たまたまTHE YELLOW MONKEYのライブがあった。僕がイエモンを好きなことを知っていたhideは、「平山さん、今日はもう仕事はいいから、ライブに行っておいでよ」と言ってくれた。唐突な申し出に、僕は面食らいながら、「いいの? ありがたいけど、どうして?」と聞いた。するとhideは、「俺もあのバンド、好きなんだ。だからどんなライブやってるのか、見てきてよ」と言ってにっこり笑った。ちょうどイエモンがセカンドアルバムを出した頃、ヌードの女性を伴って吉井がステージに現われた、伝説の日本青年館ライブの日だった。1993年、hideはソロ活動を始めたばかりで、ソング・ライティングに非常に興味があり、吉井の楽曲をとても誉めていた。僕はその誉め方を「クリア」を聴きながら思い出していたのだ。
吉井の曲作りが、昔に戻ったのではない。「クリア」は、その頃の持ち味が20年間を経てたどり着いた“進化形”なのだ。ロックンロールの天才、ボ・ディドリーが好んだジャイヴのリズムを楽しむ吉井の姿が、間口の広い音楽を作り続けたhideに重なった。
不思議なフラッシュバックをもたらした「クリア」を、僕は気に入っている。新しいレーベル、いや、ホームグラウンドに戻った吉井和哉の大活躍を、とても期待している。
【文:平山雄一】
リリース情報
クリア(初回生産限定盤)
発売日: 2015年01月28日
価格: ¥ 1,200(本体)+税
レーベル: 日本コロムビア
収録曲
01. クリア
02. ボンボヤージ
“Welcome back to TRIAD”Live Tracks:
03. Romantist Taste
04. Sweet & Sweet
05. Tactics
06. VERMILION HANDS
07. RED LIGHT
08. 4000粒の恋の唄
09. LOVERS ON BACKSTREET
10. SUCK OF LIFE
11. JAM
12. WELCOME TO MY DOGHOUSE