レビュー
降谷建志 | 2015.03.26
降谷建志「Swallow Dive」
みずからを祝福する、降谷の孤高のスターティング・ポイント
Dragon Ashのインタビューをしたとき、レコーディングの際、デモの段階で降谷が精度の高いアレンジを一人で作り上げてくるという話を何度か聞いた。なので、一度、そのデモテープを聴いてみたいと思っていた。
降谷建志のソロ・プロジェクトのデビュー作「Swallow Dive」は、作詞作曲・プロデュースはもちろん、すべての楽器を降谷自身が演奏。完全に一人で作り上げているから、もしかすると例のデモに限りなく近い音なのかもしれない。
「Swallow Dive」は、力強いビートと明るいメロディで、未来に向かってツバメのようにダイヴする歌だ。メッセージは、降谷がDragon Ashでずっと掲げてきたことと、基本的には変わらない。しかし、バンドよりもかなり個人的な視点から描かれている点が異なる。降谷個人の性向や価値観から、リリックが生まれている。
バックサウンドも完全に“歌”が中心になっていて、バンドとしての主張より、リリックが届くことを第一に構成されている。
「Swallow Dive」には、もう一つ特徴がある。それはコーラスが多用されていることだ。独自の道を行くことを決意した、すがすがしいまでの孤独を描くこの歌は、ある種の淋しさも漂う。それをいい意味で後押しするのが、“大勢の声”なのだ。バンドならではの存在感の濃いコーラスではなく、メインボーカルをサポートするコーラスが、歌の主人公を祝福しているかのように聴こえる。だから、これはバンドのデモとは内容も性格も異なる、完全に“歌モノ”のソロ・デビュー作なのだ。
さて、ソロのスタートを自身で祝うかのようなこのハッピーな「Swallow Dive」に続くアルバムは、どんなものになるのだろう。バンドとは違うスタイルで未来と孤独と栄光を歌う降谷の、これからに期待が高まる配信シングルだ。
【文:平山雄一】