レビュー
ゲスの極み乙女。 | 2015.04.22
「コカ・コーラ」のネームボトルキャンペーンCMソングとして起用された、ゲスの極み乙女。のニューシングル「私以外私じゃないの」。CMでは女子高生バンドの演奏に合わせてサビのメロディが流れ出す。オンナ目線の歌詞も相まって、川谷絵音(Vo)の高音ファルセットが一瞬別の女性ボーカルにも聴こえた。あいかあらずサビの訴求力は圧倒的だ。対称的にAメロ、Bメロは、まるでリズム楽器のように刻む休日課長のベースと川谷のギターに言葉数の多いラップが駆け抜ける、ゲスの極み乙女。らしい緻密な構成。
思えばメジャーシーンに登場してからわずか1年で、その鮮烈なサウンドはゲスの極み乙女。の圧倒的なオリジナリティとして、ライブシーンはもとより一般層にまで広く浸透した。オリコンでも闘える数少ないバンド、ゲスの極み乙女。今作で彼らはまた一段上のチャートアクションを記録しそう。今作の歌詞は、私という存在は誰にも替わることができないと、いつになくストレートなもの。そこに《当たり前だけどね》と補足する愛嬌が、この曲の魅力をぐっと押し上げている気がした。
カップリングには、美しいメロディがミドルテンポのサウンドに心地好くのる「ルミリー」。だが、それで終わらないのがゲスの極み乙女。の一筋縄ではいかないところだ。ドラマチックなちゃんMARIのピアノを合図に、一気に攻撃的な様相を見せるて実にスリリング。さらに4曲目の「But I’m lonely」は、トクマルシューゴを思わせる非楽器的なユニークな音づかいから幕を開けると、シームレスな音像が展開。メロディと呼ぶものはほぼなく、おしゃれなリズムトラックにのせて囁く英語のフレーズ。おそらくシングル表題曲には絶対に選ばれないタイプの曲だが、既存のバンドのイメージや固定観念を打ち破るこういう曲にこそ、ゲスの極み乙女。のバンドのスタンスが強く垣間見られる。
さらに、先日のワンマンツアーでも披露された人気曲「パラレルスペック」のfunky ver.も収録した全4曲入りの今作。iPod に入れてリピート再生してたら、4曲目の「But I’m lonley」を聴き終えて、再び1曲目の「私以外私じゃないの」の冒頭を飾るクラシカルなピアノのフレーズへときれいに繋がった。ゲスの極み乙女。、曲順までぬかりなし。
【文:秦 理絵】