レビュー
サンフジンズ | 2015.07.29
サンフジンズ
『スリーシンフサンズ』
サンフジンズは『スリーシンフサンズ』で、
カレーなファンタジーを聴かせてくれる
カイ・ギョーイ(奥田民生)、ジューイ・ラモーン(岸田繁/くるり)、ケン・ シューイ(伊藤大地)という、各々活躍するミュージシャンがもっと音楽で遊びたいとの決意をもって結成した異色の新人(?)バンド。それにしても、よく遊んだもんだ。
3人の芸名のとおり、全員各種の医者の設定。それをネタに言葉でも音でも遊びまくる。注射・カンチョーはもちろんのこと、神父・新婦・妊婦など、シャレは手当たり次第。サウンドもフォーキーなものから、ハードロックまで、パロディも手当たり次第。ただし、シャレもパロディも極上だから、聴き込めるし、笑える。さすがの3人と思ったら、その“3”をネタにして♪奇数しーてーほーしーい♪って歌っているから、ブルーハーツからポリスまでが爆笑するアルバムになってい る。
中で僕が好きなのは、インストの「サーフジーンズ」。日本のベンチャーズ“ブルージーンズ”と、ツェッペリンを混ぜたようなサウンドは、ギターが奥田で、ベースが岸田。一方、アルバム随一の美メロ曲「パン屋さん」は、ギターが岸田で、ベースが奥田。ドラムの伊藤は変わらないが、ギターとベースがパートチェンジすることで、バリエーションのある魅力を発揮する。これも“音楽の遊び”の極致だろう。
そして最後の「サンフジンズのテーマ」で、「サンフジンズはほんとは医者じゃないけど、君の病気を治せるんだよ」とリスナーにメッセージする。でも、こんな病気の3人に言われてもなあ・・・(笑)。
このアルバムは、メジャーを離れた奥田が設立した“ラーメンカレーミュージックレコード”の記念すべき第1弾リリース作品となる。アナログテープでレコーディングして、アナログ卓でミックスしたという制作過程からして、レーベルオーナーの奥田イズムに貫かれている。
華麗なファンタジーを標榜するバンドが続々登場している昨今、本当にカレーなファンタジーはサンフジンズにあると思うのだが、いかがだろうか?
【文:平山雄一】