レビュー
シュガー・ベイブ | 2015.08.05
SUGAR BABE 『SONGS』
SUGAR BABEの40年前の名盤『SONGS』は、古びないしカッコいい“モダンな老人カップル”みたいなアルバムだ
40年前に発売された伝説の名盤の登場だ。山下達郎、大貫妙子が在籍したグループ“SUGAR BABE”がたった1枚だけ残したアルバム『SONGS』のリマスターと、なんとリミックスがセットになって蘇る。
収録曲の「DOWN TOWN」や「今日はなんだか」など、みなさんも知っている曲が、40年前に作られたことが驚きだ。しかも若いリスナーに、懐メロとしてではなく、フレッシュなポップスとして認識されていることにさらに驚かされる。
一昨年、スタジオジブリの映画『風立ちぬ』の主題歌にユーミンの「ひこうき雲」が使われて、曲とサウンドの新鮮さが話題になったが、あの曲もリリース40周年のタイミングだった。収録アルバムの『ひこうき雲』は1973年の作品で、1975年に発表された『SONGS』とはたった2年しか違わない。そう考えると、70年代中盤は現在のJ-POPの源流点だと言ってもいいだろう。
特にSUGAR BABEは、音楽にまつわるあらゆる側面にミュージシャン自身が深く関わっていた点が見逃せない。ソングライティングはもちろん、サウンド面においても、エンジニアに任せっぱなしにはせず、“いいサウンド”を出すにはどうすればいいのかをミュージシャン自身が探究していた。
メロディや歌詞以上に、サウンドは古びるのが速い。新しい楽器や新しい録音技術が次々と生まれるからだ。ではなぜ、SUGAR BABEのサウンドは古びないのだろう。それは、彼らがそのときどきの“最新”を目指していたわけではなかったからだ。
SUGAR BABEは、自分たちのメロディと歌詞に分かち難く存在するサウンドを追求していた。いいと思ったら、最新の音も従来の音も同等に扱って、メロディと歌詞を活かすことを最優先にサウンドを作っていった。もちろんその前提には、自分たちの詞曲にはずっと残っていく力があるという圧倒的な自信がある。ただ「ずっと」といっても、演歌やクラシックと違って、若いリスナーをドキドキさせたり、ワクワクさせたりすることを重点的に考えていたのだ。実はそのドキドキワクワクこそ、“ポップス”の本質なのだ。
“不易流行”という言葉がある。あの有名な俳人、松尾芭蕉が唱えたコンセプトで、不易は伝統を大事にする心、流行は新しい遊びに対する敏感さを表わしている。不易=ずっと聴かれる、流行=ドキドキワクワクと考えれば、SUGAR BABEはまさに不易流行のグループなのだ。
『SONGS』のジャケットには、ちょっとモダンなおじいさんとおばあさんが並んで描かれている。このアートワークにもメンバーの意向が反映されているという。“モダンな老人カップル”って、確かに古びないしカッコいい。SUGAR BABEは40年前からそんな境地を目指していたのだった。
【文:平山雄一】
リリース情報
SONGS-40th Anniversary Ultimate Edition-
発売日: 2015年08月05日
価格: ¥ 2,800(本体)+税
レーベル: ワーナーミュージック・ジャパン
収録曲
[Disc-1 / 2015 Remaster]
01. SHOW
02. DOWN TOWN
03. 蜃気楼の街
04. 風の世界
05. ためいきばかり
06. いつも通り
07. すてきなメロディー
08. 今日はなんだか
09. 雨は手のひらにいっぱい
10. 過ぎ去りし日々"60’s Dream"
11. SUGAR
<Bonus Tracks 7曲>
12. パレード(Live)
13. こぬか雨(Live)
14. 雨は手のひらにいっぱい(Live)
15. WINDY LADY(Live)
16. DOWNTOWN(Live)
17. 愛は幻(Live)
18. 今日はなんだか(Live)
[Disc-2 / 2015 Remix]
01.SHOW
02.DOWN TOWN
03.蜃気楼の街
04.風の世界
05.ためいきばかり
06.いつも通り
07.すてきなメロディー
08.今日はなんだか
09.雨は手のひらにいっぱい
10.過ぎ去りし日々"60’s Dream"
11.SUGAR
<Bonus Tracks 8曲>
12. 今日はなんだか(Original Piano Version)
13. DOWNTOWN(Live)
14. 風の世界(Live)
15. SHOW(Karaoke)
16. DOWNTOWN(Karaoke)
17. 蜃気楼の街(Karaoke)
18. いつも通り(Karaoke)
19. 雨は手のひらにいっぱい(Karaoke)