レビュー
back number | 2015.08.12
back number「手紙」
ニューシングルは、back number清水依与吏が、自分宛てに書いた「手紙」
するすると入ってくる音と言葉。スムーズなスライドギターのイントロに続く、美しいリリック。♪自分よりも喜んでくれる人に 育ててもらったからなんだろうな♪というフレーズが、心にすっと入ってくる。
その途端、「あれ? 自分は何を聴いているんだろう」という疑問が湧いてきた。確かback numberのはずなのに、ヒリヒリしない。ヒリヒリしないどころか、優しくて心地よいのだ。そして、聴いていて、照れている自分がいた。
「手紙」は、両親の愛に感謝するミディアム・バラードだ。「愛が足りない」と歌い始めたバンドが、その奥底にあった愛に気付いた。それを歌うことは、バンドの過去を否定することにはならない。なぜなら、始まりのときには見えなかったものが、ようやく見えてきた歌だからだ。また、back numberが愛に満たされてしまったわけではない。足りないながら、感じ始めた愛がここにある。バンドの永遠のテーマを、少し角度を変えて描いたのが、今回の「手紙」なのだ。
素直に愛を描くには、素直な曲を作るしかない。それが名曲になったのは、back number清水依与吏の音楽的資質だ。プロデューサー小林武史のサポートがあるにしても、メンバーのプレイは素直そのもので、太くて優しい音を奏でている。演奏の完成度からしても、back numberにとってこの“愛の歌”は、今、作られるべきだったのだろう。
そして僕が見つけた“back numberらしさ”は、タイトルだった。直接会って告げてもいい感謝の気持ちを、手紙として送る。そこにはやはり清水の照れがある。僕がこの歌を聴いて照れてしまったのは、彼の照れが伝染したからだ。 “手紙”は、そんな照れを象徴するタイトルになっている。だから「手紙」は、照れながら聴くのが正しい作法だ。
この歌は♪ちゃんと返したい事 いつか歌にしよう♪と結ばれる。手紙と言いながら、歌にしようと言っている。してみると、この歌は、清水が自分宛てに書いた手紙なのかもしれない。それが実にback numberらしいと思う。
【文:平山雄一】
リリース情報
手紙
発売日: 2015年08月12日
価格: ¥ 1,000(本体)+税
レーベル: ユニバーサル シグマ
収録曲
[CD]
1. 手紙
2. 手紙(instrumental)
[DVD]
手紙MUSIC VIDEO &レコーディング時、MV撮影時、アー写撮影時メイキング映像収録、urban live tour 2015 @幕張メッセイベントホールのライブ映像をダイジェスト収録。
(bird’s sorrow/青い春/SISTER/エンディング/アーバンライフ/電車の窓から/ヒロイン/海岸通り)