レビュー
Base Ball Bear | 2015.09.03
シリーズ“三十一”というタイトルを掲げ、“エクストリーム・シングル”の3ヶ月連続リリースを展開中のBase Ball Bear。第2弾となる今作の内容も非常に濃い。まず、新曲「文化祭の夜」が、とても刺激的だ。ファンキーにウネるサウンドに耳を傾けていると、胸の奥が妖しくざわつく。この曲のサウンドのキモになっているのは、ギターのカッティング。これまでも数々のナンバーでスリリングなカッティングを際立たせていた小出祐介(Vo & G)。彼の根本に実は脈打っているブラックミュージック的なフィーリングが、粋な形で反映されている。このギターを軸に構築されているサウンドの味わいが深い。
ベボベは紛れもなく「ギターロックバンド」だが、ギターの華やかな音色で彩りつつキャッチーなメロディを浮き彫りにすることのみには安住しない。ギター、ベース、ドラム、歌のフレーズを絶妙に絡ませ合い、最良の間合いを互いに模索しながら極上のノリを醸し出すことに向き合ってきたバンドでもある。「文化祭の夜」は、まさしくそういう日々の賜物。高校生の頃から共に音を奏でてきた4人が培った風味、熟成したワインのような豊かなグルーヴを届けてくれる曲だ。
そして、このサウンドに彩られた歌詞にもワクワクさせられる。モチーフとなっているのは、タイトル通り“文化祭の夜”。非日常の祭りの真っ只中である上、適度な眠気も感じつつある時間帯に湧き起った心のさざめき。あの時と似た月明かり、夜風の香りに触れたことによって蘇る感情を描写しながら、その向こう側に大人の人生模様を暗に窺わせる仕上がりとなっている。タイトルからすると爽やかな青春の風景をイメージする人が大半であると思うが、この曲が醸し出しているものは、実はかなり艶めかしい。酸いも甘いも噛み分けつつある三十代に突入した今のベボベだからこそ表現出来る世界だと言えるだろう。
今作は現在制作中のニューアルバム特報第2弾、昨年リリースされたアルバム『二十九歳』の全曲のインストゥルメンタルも収録。インストに耳を凝らすと、先述したグルーヴの深みを分かり易く確認出来ると思う。そして、この第2弾エクストリーム・シングルの後もお楽しみは続く。9月12日からは茨城・水戸LIGHT HOUSE公演を皮切りに、全国ツアーがスタート。10月7日には第3弾エクストリーム・シングル『不思議な夜』。その後にはニューアルバムが届けられるのだろう。期待をジワジワとくすぐる活動を展開中のベボベから、ますます目が離せなくなってきた。
【文:田中 大】
リリース情報
「文化祭の夜」
発売日: 2015年09月02日
価格: ¥ 1,800(本体)+税
レーベル: ユニバーサル ミュージック
収録曲
第2弾エクストリーム・シングル <完全生産限定盤>
[DISC.1]
1. 文化祭の夜
2. 文化祭の夜 (Instrumental)
3. アルバム特報
[DISC.2] ボーナス・ディスク (全16曲)
5.0th Full Album「二十九歳 (Instrumental Ver.)」全曲完全収録
1. 何才 (Instrumental)
2. アンビバレントダンサー (Instrumental)
3. ファンファーレがきこえる (Instrumental)
4. Ghost Town (Instrumental)
5. yellow (Instrumental)
6. そんなに好きじゃなかった (Instrumental)
7. The Cut -feat. RHYMESTER- (Instrumental)
8. ERAい人 (Instrumental)
9. 方舟 (Instrumental)
10. The End (Instrumental)
11. スクランブル (Instrumental)
12. UNDER THE STAR LIGHT (Instrumental)
13. PERFECT BLUE (Instrumental)
14. 光蘚 (Instrumental)
15. 魔王 (Instrumental)
16. カナリア (Instrumental)