レビュー
SEKAI NO OWARI | 2015.09.29
快進撃が続いているSEKAI NO OWARI。
昨年末の紅白歌合戦初出場、年明けリリースのセカンドアルバム『Tree』の大ヒット&ロングセラー、そしてこの夏、日産スタジアム2DAYSのチケットを即完させ、ライヴを大成功に収めるなど、質実両方、誰もが認める日本のトップバンドになった。
この快進撃が続く理由は、本人たちの音楽に対する姿勢に他ならない。彼らは前述したような実績に満足することなく、自らの音楽=表現欲を突き詰め続けているのだ。それがストレートに表れたなと思ったのが、前作「ANTI-HERO」である。この作品は、彼らの世界を形容する上での代名詞となっていた“ファンタジー”へのアンチテーゼだったように思う。いうなれば、白、善、正義……などへのアンチテーゼ。そして今作『SOS/プレゼント』で、彼らはこのアンチテーゼもまた上書きしてきた。両曲を聴いていると、無、無垢、回帰……といった言葉が浮かんでくる。映画「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンドオブザワールド」の主題歌となった「SOS」は、表情豊かなピアノの調べが印象的なバラード。ちょっと乱暴に言ってしまうと、ノクターンmeets讃美歌なんて思ったりもした。ピアノの旋律と楽しくダンスするように、軽やかに転げまわるFukaseの歌声も楽曲の一部。丁寧に優しく歌っているところも含め、組曲を思わせるような幻想的な世界に一役も二役もかっている。全編英詞、さらにシガー・ロスのプロデューサーを迎えたあたりには、彼らの目指す世界がとても明確であることと同時に、ワールドワイドな展開を意識した強い意志も感じた。
もう1曲の「プレゼント」は、NHK合唱コンクールの中学生の部の課題曲として書き下ろしたということもあり、ストレートで力強いメロディーが特徴。エンディングに向かうスケール感、シンガロングなど、合唱曲らしいティストもあるが、最初のAメロから彼らの曲だとわかるメロのオリジナリティが秀逸だ。
2曲とも作詞はSaoriだが、彼女のストーリーテラーとしての素質には、驚かされた。両方とも根底にあるのは、人間として大切にしなければいけない感謝の気持ちだと思うが、それを年齢も性別もあまり感じさせない、まったく違う視点から綴っている。海外の童話の和訳オムニバスを読んでいる感覚になった。
快進撃はきっとまだまだ続く。なぜなら、今回のニューシングルも、本当にみっちり、彼らのこだわりとネクストが聴こえてくるから。
【文:伊藤亜希】