平原綾香のニューアルバムは、大切な人との時間を彩る宝物のような1枚
平原綾香 | 2014.11.10
- EMTG:先日のツアーではMCで「なんでこんなに苦しいのに挑戦してるんだろう?」っていうようなことを言ってたのが、すごく印象的でした。
- 平原:毎回いろんなことに挑戦しているんですけど、今回は一番ヒヤヒヤしたチャレンジかもしれないですね。これまでは歌というより、たとえばタップダンスを踊れるかなっていうヒヤヒヤ感だったけれども、今回は『オペラ座の怪人』の「Love Never Dies」を歌うというので、すごくプレッシャーでした。本当に命がけで歌ってましたね。
- EMTG:命がけですか!
- 平原:一度ミュージカルを終えて、解放されてたんですけどね(笑)。ミュージカルは東京公演しかなかったので、ファンの人からも「ぜひツアーでも『Love Never Dies』を歌ってね」っていうリクエストをもらって。「まだ試練をお与えになるのか」っていう(笑)。でもみんなに喜んでもらいたいから、どうにかなってもいいからやるんだっていう想いでしたね。今年は「Love Never Dies」があって本当によかったなと思います。
- EMTG:その「Love Never Dies」が今回は『Winter Songbook』に収録されてますけど、オペラの歌唱は今回のミュージカルがあって初めて取り組まれたんですか?
- 平原:そうなんですよ。動画サイトで勉強したんです。
- EMTG:え、動画サイト?
- 平原:ミュージカルの先生に習ったんですけど、その先生は、歌い方に関しては“オペラっぽく”とか言わない方で、自由に歌わせてくれたんです。感情の込め方を教えてくれる、とっても良い先生だったんですね。だから、オペラっぽく歌うのか、もうちょっとミュージカルっぽく歌うのか私に任せてくれたんです。それで、マリア・カラスさんや、名だたるアーティストたちの動画サイトを見て、顎や舌の動き、骨格を研究して、自分なりのオペラを作っていったんです。
- EMTG:結果、平原さんとしてはどういう場所に落ち着いたと思いますか? 私なんかが聴くと、完全にオペラだ!と思うんですけど。
- 平原:もっと私に実績があれば、きっとオペラだと思うんですね。でもやっぱりまだ初心者だから、そういう意味ではオペラって言わないほうがいいかなっていう想いもある。私自身が「これがオペラだ!」って思いながら歌った、という感じですね。そういう歌い方に、今まで平原綾香が歌ってきたものをプラスさせたような。
- EMTG:平原流オペラというか。
- 平原:うーん……というか、平原綾香なりのクリスティーヌを作っていったっていうのが正しいのかな。
- EMTG:なるほど。じゃあ『Winter Songbook』の話に移りますが、コンセプトとしてはクリスマスアルバム? ウィンターアルバム? どう呼べばいいんでしょう?
- 平原:カバーアルバムを作ろうって決まった時に、外国ではクリスマスに家族とか恋人、大切な人と一緒に聴けるクリスマスアルバムのことを“ホリデーパック”、または“ホリデーアルバム”っていうらしいってと聞いたんです。日本にはあまりそういう文化はないんですけど。家族の集まりとかでかかってるみたいなんですね。結果的にそういうものを作ろう、という話になっていきました。
- EMTG:私がアルバムの中で一番好きなのは「Happy Xmas」なんですけど、平原さんがつけた日本語詞がいいですよね。
- 平原:これは日本語でカバーできたのが本当に良かったなって思ってます。私も何回かジョン・レノン・スーパーライヴで歌ったりしたんですけど、英語なので、《War is over》とか《For black and for white》って言っても、本当の真意が掴めるまでに時間がかかるような気がしてて。できれば日本語に直したいって言ったんです。最初は絶対に申請がおりないって反対されてたんですけど、とにかく日本語で届けてみたいっていう想いがあって。で、最初に日本語で録って、歌詞と音源を向こうに送って。その後で英語も録って、申請がおりなかったら英語を使おうって言ってたんですけど、日本語を録ったらもう満足しちゃって。「英語は録らない」(笑)。それも願掛けだと思ってたんです。
- EMTG:用意しちゃうと、ダメになっちゃうかもしれないから。
- 平原:そう。そしたら通ったから、良かったですね。
- EMTG:あと1曲目の「蛍の光」は、スコットランドの民謡だと知って驚きました。
- 平原:私もずっと日本の歌だと思ってたんですよ。今回カバーすることになって知りました。だけど、高校生の時かな。クリスティーナ・アギレラが「蛍の光」っぽいのを歌ってて、「これ空耳かな?」ってずっと謎だったんですね。まさか世界中で歌われてるとは。
- EMTG:この曲は日本語と英語が交互に出てくる構成が面白いですね。
- 平原:英語のほうの「Auld Lang Syne」の歌詞は旧友との再会を祝うものなんですよね。日本だと別れの歌ですけど。デパートが閉まる時とかにかかるし……。
- EMTG:デパート!ここは“卒業式の時”って言うかと思ったら(笑)。
- 平原:あ、そうですよね。私はわりと閉店までいるタイプで、最近デパートのほうがよく聴くから(笑)。今度高島屋で流れるようになるんですよ。
- EMTG:え?平原さんのカバーバージョンがですか?
- 平原:そう!小っちゃい時からずっと聴いてたので、すごくうれしいんです。軽快な曲だから、お客さんも帰りたくなくなっちゃうかもしれません(笑)。
- EMTG:(笑)。他にも今回のアルバムでは、「HAPPY」や「Smile」、「The Rose」は、平原さんがラブ&ピースをうたっている作品でもあるなって感じました。特に「Happy Xmas」の存在が大きいと思いますが。
- 平原:ああ、そうかもしれないですね。「Happy Xmas」はメッセージ的にとても強いですし、でもこれはきっと自分の作品では歌えないことなんですね。後ろにジョンとヨーコがいるから歌える(笑)。肌の色や主義が違ったっていいんだ、なんて私は言えないです。だからカバーはそれがいいんですよね。自分では言えないことを、人の力を借りて歌う。言えなかったことが言える、そういう素晴らしいものだなっていうのも思いますね。
- EMTG:では最後に。昨年10周年を迎え、今年2014年を振り返ってどうですか?
- 平原:デビュー当時は感じなかったけど、10年間いろんなところにお邪魔して歌ったり、テレビやラジオを通じていろんな人たちと出会ったりして、大きな家族ができたような気がしてるんです。そういう人たちを大切にしていくことができたら、これから、もっともっと良い人生を送れるんじゃないかと思います。そういう中でまた新たな課題もやってくると思うんですよね。
- EMTG:平原さんって、「これやって!」ってお願いしたら何でも応えてくれそうな大きさがありますもんね。
- 平原:言われるとやっちゃうのよねぇ(笑)。
- EMTG:(笑)。それが今度は20年後、30年後の自分に繋がっていくと思いますし。
- 平原:そうですね。でも、いまは自分のことで精一杯だから、殻を破れない部分もあると思うんです。ずっと自分のことばっかり気にしてると、前に進めない。それがたとえば結婚して子供が生まれた時に、自分のことは構ってられず、子供や旦那さんのことを考えたりしなきゃいけなくなるじゃないですか。そうなった時に初めて私は自分の殻を破っていけるんじゃないかなと思ってます。
- EMTG:それは2015年に訪れそうですか?
- 平原:訪れないなー(笑)。もうちょっとがんばらないと!ですね。
平原綾香がこの冬、日本中のお茶の間にお届けする最新アルバム『Winter Songbook』は、誰もが知っている有名な洋楽ヒットから、隠れた名曲までをカバーした企画アルバム。聴きどころはたくさんあるが、平原自身が日本語訳詞をつけたジョン・レノンの「Happy Xmas (War Is Over)」が素晴らしかった。平原いわく、今作のコンセプトは“ホリデーアルバム”というが、個人的には“ラブ&ピース”アルバムと呼びたい、そんな作品になったと思う。
今年は『オペラ座の怪人』の続編となる『ラブ・ネバー・ダイ』で、初めてミュージカルに挑戦。4ヵ月におよぶ全国ツアーでもそのオペラ曲「Love Never Dies」を歌い、自身最大とも言えるチャレンジを終えた平原に、まずはツアーの感想から訊いてみた。
【取材・文:秦 理絵】
リリース情報
EGGS002_A写1_450
発売日: 2016年03月31日
価格: ¥ 1(本体)+税
レーベル: 1
収録曲
1
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平原綾香
ビデオコメント
リリース情報
Winter Songbook
2014年11月12日
ユニバーサル ミュージック
2. アルジャーノンに花束を ~ Song of Bernadette
3.Happy Xmas (War Is Over)
4.HAPPY
5. 私のお気に入り~ My Favorite Things
6.Smile ~ 一緒に顔晴る君へ
7.My first love
8. 青春の輝き~ I Need To Be In Love
9.愛は花、君はその種子 ~ The Rose
10.Love Never Dies~ 愛は死なず
お知らせ
「平原まこと 40th Anniversary Concert」LET’S CELEBRATE!! with AIKA & 平原綾香
2014/12/13(土)洗足学園 前田ホール
AAB presents「平原さんちのコンサート2014」
2014/12/18(木)秋田県民会館
2014/12/23(火・祝)神戸メリケンパークオリエンタルホテル
2014/12/24(水)名古屋 ウェスティンナゴヤキャッスル
音楽の贈り物vol.2~ポップスとクラシックの融合~
2015/01/18(日)久慈市文化会館(アンバーホール)〈岩手県〉
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。