RHYMESTER、安産・難産の両A面シングル、どっちの子もカワイイ!?
RHYMESTER | 2015.04.28
- EMTG:今年元旦に「Still Changing」のミュージックビデオを公開し、新天地でのスタートを切りましたが、その反響に対する感想は?
- 宇多丸:俺らとしては、結構きわどい球を投げたつもりだったんです。今までのRHYMESTERにない曲調だし、現行ヒップホップど真ん中とも違うから、「イケるか!?」って感じで投げた球だったの。そしたら意外と好意的な意見が多くて、じゃあ、まあ良かったけどっていう。
- EMTG:最初は結構ひやひやしていた。
- Mummy-D:ひやひやだよ。音楽人生でいちばん時間がかかったというくらい、サビを作るのが難しかったから。そこで悩み過ぎちゃってたから、「いいよ」とか言われても「ほんとぉ?」みたいな。疑心暗鬼になってて、ライブで盛り上がっても信じないみたいな。
- 宇多丸:本当そう(笑)。「いやいや、フェスの客は何でも盛り上がるからな」みたいな。特にフロント2人はそう思ってて。
- JIN:俺は逆にライブで確信を得たんだけどね。確かにテンポ感が微妙な曲で、早いテンポでリズムを取るのか半分で取るのか、そのちょうど中間くらいのところだから、最初はどういうノリになるか不安だったけど、フェスでやったときにこれはイケたなっていう手応えを感じたから。
- EMTG:今回のシングルは、「Still Changing」「人間交差点」の順に公開されましたが、曲ができあがったのもその順番だったんですか?
- Mummy-D:その順番だね。
- EMTG:では、「Still Changing」から伺っていきますが、さっき話していたサビを作るのに悩んだというのは?
- Mummy-D:華やかでハッピーな曲調っていうのはヒップホップでは難しいんだよね。というか、俺らが得意とする曲調ではない。何らかのブルースだったり痛みだったりを感じさせる曲調は比較的簡単なんだけど、ああいう前向きな曲調は逆に難しくて。
- 宇多丸:テンポも中途半端なんだよね。トラックだけ聴くと「かっこいいね!」って思うんだけど、いざラップを乗せようとすると「やりづら!」っていう。
- EMTG:サビを作る前から《Still Changing》というテーマやタイトルは決まっていたんですか?
- 宇多丸:移籍第一弾だし、仕切り直し感のあるテーマだよねっていうのはなんとなくあって。で、トラックを聴いたときに、ヒップホップとしてはきわどい線だからこそ、“変わってるけど変わってない”的なことを言えるかなと。今回って要は《ONCE AGAIN》タイミングなんだけど、それとは違う言い方で今の状況を表すとしたら「Still Changing的な?」なんてことを言ってたら、それがタイトルになったっていう。
- EMTG:サビは難しかったそうですが、ヴァースはスッと書けたんですか?
- 宇多丸:D(Mummy-Dの呼び名)はスッと入れてきて、俺は最初、今のDのヴァースに寄せた感じを書いてたんです。そしたらDから、2番はもっと強く言ってくれ、最初からフルスロットルで言ってくれってディレクションが入って。
- EMTG:結果、すごく自信がみなぎったセルフボースティングになってますね。メチャクチャ上から目線っていう(笑)。
- 宇多丸:すげえ偉そうなんだけど、トラックが軽快だから押しつけがましくならないというか。「ま、大したことないんスけどねー」みたいな軽い感じになると思ったんだよね。もちろん、このタイミングでしか言えないこと、このタイミングに必然があることは言うべきだろうと思って書いたんだけど。
- EMTG:一方、Dさんのラップは、力みが無いというか肩の力が抜けてて。
- Mummy-D:今回、俺はRHYMESTERの「背負ってる感」は全然なし。バーッとスピットしていくのはまったく違うなって思ってたから、軽みを目指したんだ。
- EMTG:歌詞のテーマは、経年変化?
- Mummy-D:そう。時の流れみたいな話をしてるときに、最近のアンチエイジングとか美魔女とか、ああいう傾向は気持ち悪いよねっていう話をしてて。そんなときに高校の同級会があって、久々に女子たちに会ったんだよね。みんなおばさんになってるかと思ったらすげえ可愛くて、テンション超上がっちゃって嫌われるくらい飲んじゃったんだけどさ(笑)。
- 宇多丸:甘えんぼモードで?
- Mummy-D:そう(笑)。だから、特に若い子に向けてかな。年を取っていくのっていいことなんだぜ、みたいなメッセージも出したいなって。物事の変遷はいろいろ感じるけど、そこで感傷に浸るのではなく、時間が過ぎることをポジティブに捉えたメッセージを発したかったんだよね。マチュアって、いいことだって思うから。
- EMTG:もう一曲の「人間交差点」は、JINさんがプロデュース。これは「Still Changing」とは逆で、R印のファンクナンバーに仕上がっていますね。
- JIN:これはザ・ライムスター的なトラック。今、アルバムを制作中なんだけど、総合プロデューサーのMummy-Dに「どんな曲調のトラックが欲しいか」と訊いたときに、ミュージシャンシップを感じる曲でアガるヤツができたらって言われて。それを考えたときに、ある程度のテンポ感があって、ブレイクビーツ感、ファンク感、あとオーセンティックな感じがある曲は確実にライブで盛り上がる絵が浮かぶから。でも、音響的な響きは今っぽくしようと。ビンテージ感のあるナマ音というよりはアップデートされたナマ音にしたいなと思って、モカキリ(MOUNTAIN MOCHA KILIMANJARO)にお願いしたんです。
- EMTG:歌詞は、RHYMESTER主催フェス「人間交差点」のテーマソングを作ろうというところから?
- 宇多丸:そう。まずはフェスのタイトルを決めたんだけど、当然フェスで新曲をやるとして、あのJINのトラックがクライマックスでドーンと来たらかっこいんじゃね?って。じゃあ、「人間交差点」というタイトルを引用して曲を作っちゃえばいいんじゃね?っていう順番。アルバムの中に置いたときのテーマ的な収まりも計算できたし、こっちは曲作りが早かった。
- EMTG:「人間交差点」というワードは、同名漫画から着想したんですか?
- 宇多丸:いや、もっと一般名詞的なニュアンスで思いついたんだけど、あとから「そっか、当然あの漫画ありきの言葉だよな」って。でも、漫画のテーマと反してると嫌だなと思って改めて読んでみたんです。そしたらばっちりだったんだよね。人それぞれに秘めたストーリーがあって、それが一瞬だけ交差するっていう連作なわけだから、実は俺らの言いたいことと完全に一致してた。
- Mummy-D:世の中がとても不寛容になってきてるような気がするんだよね。他人の価値を認めないというか。たとえばイスラム国みたいなでっかい話もあるし、国内に目を向ければベビーカー論争とかヘイトスピーチとか。でも、いろんな価値観を許容していこうみたいなことをアルバム全体で言いたいと思ってて。だから、こっちはどんなことを歌うかっていう話し合いが30秒くらいで済んだ。すっごい安産だったもん。
- JIN:安産、難産の両A面(笑)。
- Mummy-D:そう。で、どっちの子もかわいいっていう(笑)。
- EMTG:先述のフェス「人間交差点」は、どんな思いで立ち上げたんですか?
- 宇多丸:それこそ人間交差点じゃないけど、俺たちはいろんなもののハブになれる存在っていうか。ヒップホップシーンとその外側の境界線にいるし、俺らじゃないとできないことがあるよねって。で、そろそろそういうところを発揮していかないとダメなのかなぁ、なんて思ってて。だから(出演者が)ヒップホップとそれ以外の非ヒップホップで半々になってるのも意味があるんです。
- EMTG:当日はどんなものをやりたいと思ってますか?
- 宇多丸:すでにコラボしてるメンツに関して言えば、たとえばSOIL&"PIMP"SESSIONSがいるのに「ジャズィ・カンヴァセイション」をやらなかったら逆にビックリだよね。そういうのはありつつ、でも、ギドラ(KGDR)とやるのかやらないのかとか、その辺りはドキドキしていてくれれば。
- JIN:あと、基本的に俺らは出ずっぱりに近い感じだから。
- 宇多丸:回し役として出演者を紹介していくから。オープニングはJINがDJするし。
- JIN:朝10時半からDJ。午前中からのDJプレイをした記憶はあんまりないから(笑)。そこで俺がどんな曲をかけるのか楽しみにしてもらえれば。
- Mummy-D:あと、これは出演者への思いになるけど、俺たちが大小いろんなフェスに出てきて感じたのはバックヤードの風通しの良さ。ミュージシャン同士の交流の心地良さがあって、それをヒップホップシーンの若い子にも味合わせてあげたいなって。新しい音楽がまた生み出されるための音楽家の交流の場を作れたらいいなとも思ってるんだよね。
2014年12月に行った結成25周年イベントで、レコード会社の移籍と自らが主宰するレーベル「starplayers Records」の設立、さらに初となる主催フェス「人間交差点」を行うことを発表し、新天地での精力的な活動を誓ったRHYMESTER。彼らが約2年ぶりに放つ新作はグループ初の両A面シングルとなった。日本屈指のファンクバンド、MOUNTAIN MOCHA KILIMANJAROの鋭く熱い演奏が炸裂する「人間交差点」は、これぞRHYMESTERと言うべきグルーヴィーな一発。疾走感あふれる「Still Changing」は、意気軒昂な彼らの26年目の所信表明だ。この2曲の深層にあるメッセージとは一体どんなものなのか。5月10日の開催が迫ったフェスの見どころも訊いた。
【取材・文:猪又 孝(DO THE MONKEY)】
リリース情報
人間交差点 / Still Changing(初回限定盤B)[CD+DVD]
2015年04月29日
ビクターエンタテインメント
[CD]
1.人間交差点
2.Still Changing
3.人間交差点 (Instrumental)
4.Still Changing (Instrumental)
5.人間交差点 (A cappella)
6.Still Changing (A cappella)
[DVD]
「KING OF STAGE VOL. 11 THE R RELEASE TOUR 2014 AT ZEPP TOKYO」
1. The R~Walk This Way
2. 午前零時~Once Again
3. The Choice Is Yours
4. K.U.F.U.
5. サバイバー
6. ちょうどいい (Piano Session With Kan Sano)
7. It’s A New Day (Piano Session With Kan Sano)
8. Pop Life (Piano Session With Kan Sano)
9. After The Last~そしてまた歌い出す
10. Just Do It!
11. 付和Ride On
12. Hands
13. ザ・グレート・アマチュアリズム (Piano Session With Kan Sano)
14. ゆめのしま (Piano Session With Kan Sano)
15. ラストヴァース
16. This Y’all, That Y’all (Session With SCOOBIE DO)
17. 余計なお世話だバカヤロウ
副音声:宇多丸・Mummy-D・DJ JINによる元祖・生(ビール)コメンタリー
1.人間交差点
2.Still Changing
3.人間交差点 (Instrumental)
4.Still Changing (Instrumental)
5.人間交差点 (A cappella)
6.Still Changing (A cappella)
[DVD]
「KING OF STAGE VOL. 11 THE R RELEASE TOUR 2014 AT ZEPP TOKYO」
1. The R~Walk This Way
2. 午前零時~Once Again
3. The Choice Is Yours
4. K.U.F.U.
5. サバイバー
6. ちょうどいい (Piano Session With Kan Sano)
7. It’s A New Day (Piano Session With Kan Sano)
8. Pop Life (Piano Session With Kan Sano)
9. After The Last~そしてまた歌い出す
10. Just Do It!
11. 付和Ride On
12. Hands
13. ザ・グレート・アマチュアリズム (Piano Session With Kan Sano)
14. ゆめのしま (Piano Session With Kan Sano)
15. ラストヴァース
16. This Y’all, That Y’all (Session With SCOOBIE DO)
17. 余計なお世話だバカヤロウ
副音声:宇多丸・Mummy-D・DJ JINによる元祖・生(ビール)コメンタリー
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●JIN
チョーコー ポン酢
ポン酢が好きなんです。ポン酢をお湯割りにして飲むくらい。ポン酢は飲み物ですっていうくらい好きなんです。でも、それほどディグってはいなくて、スーパーやコンビニで買えるもので済ませてたら、Dが「チョーコーのポン酢がヤバイ」と。それはどうやったら入手できるんだろうと思って検索しました。
●宇多丸
安田講堂事件
テレビでちょっと前に「テレビが映した100大事件」みたいな番組をやってて。そのなかで安田講堂事件が出てきて、奥さんに「なんでこうなったの?」って訊かれたときにちゃんとした答えを言えなかったんです。背景としての70年安保はわかるけど、直接的にはなんで学生たちが立てこもるハメになったのかっていう。その経緯を調べたんです。
●Mummy-D
Dead or Alive
レコーディングの合間に行った中華料理屋に2人組のスタイリッシュな男が来て。2人とも髪形がデッド・オア・アライブのピート・バーンズに似てたんだよね(笑)。だけど、同席してたマネジャーが世代的にデッド・オア・アライブを知らなくて。それで画像検索したりYouTubeを見せたんだよね。
■ライブ情報
RHYMESTER presents 野外音楽フェスティバル 人間交差点 2015
2015/05/10(日)お台場野外特設会場(ゆりかもめ・青海駅スグ)
<出演>
RHYMESTER
スガ シカオ / スチャダラパー / レキシ / KGDR (ex.キングギドラ) / Mighty Crown / SOIL & “PIMP” SESSIONS / SUMMIT (PUNPEE, GAPPER, SIMI LAB, THE OTOGIBANASHI’S) / SUPER SONICS / 10-FEET
特設サイト
http://www.nkfes.com/
FM 802 × TSUTAYA ACCESS! LIVE
2015/05/29(金)大阪 なんばHatch
出演:RHYMESTER/スガ シカオ/[Alexandros]/高橋優
頂 -ITADAKI- 2015
2015/06/06(土)、07(日)静岡 吉田公園特設ステージ
NATSU BIRAKI MUSIC FESTIVAL 2015
2015/07/19(日)所沢航空記念公園野外ステージ
SUMMER BOMB produced by Zeebra
2015/08/15(土)ZEPP DIVERCITY TOKYO
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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