amazarashiは、ステージをカーテンで覆い、メンバーのシルエットだけで演奏するという特異なライブ・スタイルを持っている。そこから生まれる“言葉の重み”と、リスナーの想像に託すビジュアル・イメージの広がりは、他のバンドを圧倒する個性となっている。
　今回はそうした個性に加えて、自分たちの楽曲をアコースティックにアレンジし直しているから、これまで以上に言葉の輪郭が際立ち、リスナーの想像力が膨らむ。
　CDと同時リリースになるDVDでは、そのアイデアの原点となった幻想的な東京ドームシティホールでのライブを収録し、CDではアコースティックでリアレンジした曲目を、改めてスタジオでレコーディングしている。この特殊な発表形式は、すべてamazarashiの楽曲の持つ魅力を自分たち自身で再発見する試みとも言える。そうして、その意欲的なトライは、大きな成功を収めた。
　この画期的な作品について、amazarashiの中心人物の秋田ひろむにインタビューしてみた。

EMTG：これまでの楽曲をアンプラグドでライブ演奏したのは、どうしてですか？

秋田：amazarashiは アマチュア時代、アコギとピアノのアコースティック編成だったので、ちょっとそういうのを思い出してやってみようかというのが始まりでした。音数が少なくてシンプルな方が曲の良さも伝わりやすいし、演奏力も直に出るので僕自身のスキルアップにもなるかなとか、色んな思惑がありました。

EMTG：普通は曲をスタジオで録音してからライブ演奏することが多いですが、今回は順番が逆になっていますね。ライブでアイデアが浮かんで、スタジオで再レコーディングしようと思ったのかな？

秋田：本当は一回だけの特別なライブにしようと思ってたんです。それで「千分の一夜」というタイトルを付けたんですけど、ライブが終わって皆ですごい良かったねという話しになって、一 回だけで終わるのはもったいないという結論になりました。全曲アレンジしなおしたし、せっかく物語も作ったし、かけた労力を思うと、これは絶対形に残したいと思いました。見てくれた方の評価が良かったのも大きかったです。

EMTG：「光、再考」、「ムカデ」、「つじつま合わせに生まれた僕等」はインディーズ時代の楽曲だけど、それらを再レコーディングしたのはなぜですか？　

秋田：今回のライブをやるにあたって、一番最初に考えたのが「スターライト」という曲をいかに感動的に皆に発表できるかでした。「スターライト」はアマチュア時代によくやってた曲で、昔の僕らの代表曲だったので特別な想いがありました。なので、割と初期の曲を中心に、暗い絶望の中から徐々に光りを見出すライブにしたいなと思って、今回のセットリストになりました。

EMTG：そのセットリストに入った、他の曲の選曲理由を教えてください。たとえば「無題」などをスタジオ録音で追加したのは？

秋田：あとはストーリーの大体の流れに合わせて曲をえらびました。章ごとにテーマがあって、“挫折”とか“恋愛”とか。それに合わせた形です。「無題」は“恋愛”の章なんですが、テーマにも合うし初期の曲だし、アンプラグドでやったら絶対いいという確信がありました。

EMTG：再レコーディングしてみて、これまでのamazarashiの楽曲について再発見したことはありましたか？

秋田：改めていい曲だなと思ったり、今だったらこんな言い回しはしないだろうなとか、色々発見はありました。でも根底にあるものは変わってなくてちょっと安心した部分もありました。初期の曲と言ってもたかだか５、６年なんで、自分がちゃんとやれてるなと再確認しました。

EMTG：歌の他に、もう一つの聴き応えがあったのは朗読だった。DVD(ライブ)で、朗読で物語を伝えようと したのはなぜですか？

秋田：せっかくなので何かストーリー性のあるライブにしたかったんですが、色々考えた結果朗読になりました。映像とか演劇っぽい感じとか、方法は色々あるんでしょうけど、現実的に可能な範囲では朗読しかありませんでした。以前からポエトリーリーディングはやっていたので、その延長線上でできるかなと。

EMTG：朗読と歌の違いは何ですか？

秋田：完全に別ものですね。僕は朗読のプロではないので、変に感情を入れず淡々と読む事を心がけました。

EMTG：今後、またアンプラグド・ スタイルのライブやレコーディングをやる予定はあるんですか？

秋田：いつかまた出来たらなとは思いますが、今はまた普段のバンド編成が恋しくなってるのもあるので、暫くはやらないと思います。今回の一連のライブ、レコーディングで得たものを、今までのスタイルに還元できたらと考えてます。

EMTG：では最後に、このCDを聴くとしたら、一日の中でどの時間帯がお薦めですか？

秋田：やっぱり夜でしょうか。朝も昼も想像したん ですが合わない気がします。

EMTG：ありがとうございました。

【質問制作・文：平山雄一】