確固たる信念と価値のある挑戦――充実の2ndアルバムについて、ふたりに迫る!

PAM | 2020.05.20

 ELLEGARDENの高橋宏貴(Dr)、トリコンドルの久米優佑(Gt)からなるインストバンド、PAM。昨年9月に1stアルバム『How have you lived ?』を発表後、レコ発ツアーを経て、早くも2ndアルバム『Worth Trying』が完成! 前作は両者のテクニカルな演奏が火花を散らすスリリングな作風だったが、今作は違う。高度な演奏技術はそのままに、ビジュアル効果を伴うメロディアスな表情に磨きをかけたサウンド・メイキングにより、新たな地平を切り拓いた魅惑の一枚に仕上がっている。貪欲に音楽の可能性を追求し続けるメンバーふたりに直撃した。

――前作から8ヵ月ぶりの音源ですね。思ったよりも早いリリースだなと。
(参考記事:PAM結成のいきさつ、そしてなぜインストバンドなのか――活動の狙いを暴く!https://music.fanplus.co.jp/special/2019091410701471e)
高橋:ツアーが終わってふたりで話してたし、久米もバカみたいに曲を量産してたから(笑)、これなら出せるなと。
久米:ツアー中は作ってなかったんですけど、去年の12月に15曲ぐらい作って、その流れで曲数的にもイケるだろうと。
――ツアー後に15曲も作ったんですか!?
久米:調子が良かったんですよ。基本、ツアー以外は毎日曲を作ってますからね。
――なるほど。前作にあったテクニカルかつキャッチーな部分は引き継ぎつつ、メロディアスな曲調が増えましたね。より映像喚起力に優れたアプローチになってますが、いかがですか?
高橋:キャッチーでありたい気持ちは変わらないけど、「よりメロディに特化しよう」って久米と話してたんですよ。前作もそうだけど、特にインストバンドであることを意識してないし……インストと括られることにストレスも感じてたから。よりボーカルがいるバンドに寄せていきたくて。
――それで歌心のあるサウンドに寄せようと。前作と今作の大きな違いは、ツアーを経て作った作品という部分だと思いますが。

久米:そこまで意識してないですけど……前作とは違うものを作ろうとは考えてました。(前作は)速い曲が多かったから、まずミドルテンポの曲を作ろうと。と言いつつ過去最速の曲(「Tough Night」)もありますけど(笑)、基本的にはテンポを落として、重心を低くした曲を作ろうと。
――前作は緊張感漲る作風でしたが、今作はリラックスした気持ちで聴けます。
久米:そこはかなり意識しました。メロディやリズム、コードの重ね方はより聴きやすさを意識しました。
高橋:いろんな意味で削ぎ落としたところがありますね。ギターのダビングも減らしたし。それもよりメロディを際立たせよう、という意図があったんですよ。
――PAMとして必要なもの、必要でないものを精査できるようになった?
高橋:そうだと思います。PAMらしさの理解が深まったというか。楽曲を際立たせるためにどうすればいいのかを考えたし、そこまで気負わなくていいのかなと。背負ってきた荷物を1回下ろしちゃおうぜって。
――前作で背負ってた荷物とは?
高橋:こう見られたい、こう見られたくないという願望があったのかもしれない。ナメられたくないという気持ちが強かったんでしょうね。そうじゃなくて、自分たちらしくあればいいんだなと。
――何かそう思うきっかけでも?
高橋:前作のツアーで岡山の新見市でライブをやったんですけど、信じられない豪雨だったんですよ。その中でライブをやっていいのかという選択肢に迫られて……結局ライブはやったんですけど、少し罪悪感があったんですよ。それから募金活動したりして、いろんなものが見えてきたんですよね。余計なものはいらないんだな、シンプルに生きていけばいいのかなって。それが音楽にも反映されたのかもしれない――わからないけど、話しててそんな気がしました。
――豪雨の日にライブをやって、改めて音楽をやる意味を深く考えたのでしょうか?
高橋:そうですね。で、久米が「Tough Night」を送ってきた日、俺が住んでる地域に(洪水警報を受けて)避難勧告が出たんですよ。そんな状況で久米からLINEが来て、「高橋さん、大丈夫ですか?」という言葉とともに曲を送ってきて。そのときは一瞬「何を考えてるんだろう」と思ったけど……平常心を取り戻せたんですよね。聴いたらすげえ速い曲だったし(笑)、いつもと一緒でいいのかなって。
――久米さんはどんな気持ちで「Tought Night」を送ったんですか?
久米:純粋に心配だったんですよ。でも心配LINEを送るだけじゃ普通だなと思って、曲を送りました。俺も普通なら(曲は)送らないことはわかってますよ。
高橋:ははははは、そうか。
――音楽で励ましたい気持ちもあった?
久米:そういうときにしんみりした曲を送りたくなくて。じゃあ、いちばん速い曲を送ろうと(笑)。
高橋:しかも曲の仮タイトルが久米の住所だったんですよ。いやいや、全部その住所で作ったでしょって(笑)。
――ははははは!
久米:作ったデータに仮タイトルを付けるんですけど、たまたま住所が出てきたから、それで送っちゃったんです。特に深い意味はないです(笑)。
――面白いエピソードです。
高橋:あと、今作のポイントはピアノを試したこと――これは大きな出来事ですね。アルバム名の“試す価値がある”という部分に繋がるんですけど、やって良かったです。まさかピアノを入れた曲をやるとは思わなかった……それもふたりで自然に「ピアノとか入れても面白いかもね」という会話になったんですよ。元々少し鍵盤をやってたから、ピアノは好きなんですよね。
久米:実は俺も小さい頃にピアノをやってたし、前から入れたい気持ちはあったんですよ。
――「Worth Trying」「Quaternity」の2曲にピアノが入ってて、まさにこれはPAMの新境地と言える楽曲です。まず前者は優雅でキレイな曲調に仕上がってます。

高橋:久米のセンスが炸裂してるよね?
久米:この曲はすぐにできました。
高橋:メロディメーカーとしてのセンスを感じる。
久米:ああいうアルペジオが好きなんですよ。ジャンルは全然違うけど、シューゲイザーやエモも聴きますからね。
――一方の「Quaternity」も好きな曲で、PAM史上かなりオシャレな曲調になりましたね。
久米:コード進行もジャズっぽいですからね。ピアノを弾いてくれた吉澤早紀ちゃん(吉澤吉澤、norte caminos、吉澤早紀と優しいお友達)がジャズ畑の子なので、いちばんしっくり来たんじゃないですかね。この曲はめっちゃ時間がかかりました。
――「Worth Trying」よりも、ピアノを大胆にフィーチャーしている印象を受けました。
高橋:そこは全体のアレンジも関係してるのかもしれない。ギターも歪んでないし、ピアノが浮き立って聴こえますからね。デモを聴いたときもいちばんワクワクした曲かもしれない。ギター、ベース、ピアノが入ったときに、なんて素敵な曲に仕上がるんだろうと。ドラムがいいから音楽とかじゃなく、曲全体なんだなと再認識できました。
――ちなみに「Quaternity」は、直訳すると“4人組”という意味ですが。
高橋:そうですね。一音一音が重なったときに四位一体という気持ちを感じたので。
――「Never Fast」も仮タイトルが「Ikkenhayame」で、直球の曲名が多いですね。
高橋、久米:ははははは!
――「Deeper」に関しては仮タイトル「Okunohou」ですからね。
久米:フォルダの奥のほうに曲のデータがあったから(笑)。
高橋:あと、その曲ではコーラスを入れてみました。これも俺たちにとっては新しい試みですね。
――ゴスペルっぽい雰囲気もあり、良かったです。それと今作は1曲1曲の繋ぎ目にも心地良い流れを感じました。「Slow Blinker」~「Quaternity」、ラストの「Deeper」~「The Wanderer」の流れが特に最高で。
久米:ライブをやるうえで、いろんな曲でセットリストを組む必要があるので、今回はひとつのライブみたいなイメージで曲順を考えました。
高橋:うん、よく出来てるよね。やっぱりツアーを回ったことがでかいんだろうね?
久米:ほんとにそうですね。それが大きく反映されてると思います。ツアー中に(テンポを)落とした曲が必要だなと思う場面もあったので、ライブのお客さんの反応を見たときに肌で感じたのかなと。
高橋:俺はもっとこんな曲をやってみたいって久米に伝えましたからね。それもあって、今作のほうがピュアだと思うし、俺らしいと思う。「Never Fast」に関しても秀逸だと思うんですよ。技術というより、シンプルなかっこよさが出てるから。ギター単体のリフだけで勝負してる男らしさが出てる。それもふたりで話してるときに定まったんです。
――ええ、PAMにしか鳴らせない曲調になってます。ほんとうにいろんな意味で挑戦した作品になりましたね。
高橋:まさに『Worth Trying』ですね。チャレンジすることが生きてることだと思うし、常に何かをやってないと気が済まないんですよ。最初にも言ったとおり、久米もずっと曲を作ってますからね。
久米:はははは、そうですね。
高橋:ノーと言う前にチャレンジすることが必要だと思う。
――最後に、今作発表後の予定については?
高橋:オンラインでのライブ配信を札幌でやってみたけど、めっちゃうまくできたんですよ。業者に頼まず、全部自分たちの手でやったんですよね。こんなご時世なので動きづらいところもあるけど、ワクワクしたいしファンにも楽しんでもらいたいから、自分たちなりに動画配信をして。このワクワク感を止めたくないんですよ。そうやって常にPAMとして動いていきたい。可能性は無限ですからね。

【取材・文:荒金良介】

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リリース情報

Worth Trying

Worth Trying

2020年05月20日

Understanding Label

01.Never Fast
02.Tough Night
03.Worth Trying
04.Resurrection
05.Bruise Of Memory
06.Slow Blinker
07.Quaternity
08.Embrace The Crazy
09.Deeper
10.The Wanderer

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高橋宏貴(Dr)
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