Rin音、2020年の空気感を体現するチルでメロウな傑作アルバムの誕生

Rin音 | 2020.06.10

 今年2月に配信リリースした「snow jam」が、Spotifyグローバルバイラルランキング14位を記録するなど各所で話題沸騰中のRin音(リンネ)。6月10日、初のアルバム作品『swipe sheep』をリリースした。福岡県宗像市出身、1998年生まれの次世代ラッパーによる渾身の一作だ。

 MCバトルで名の知れた実力派ながら、自身のオリジナル楽曲では人に寄り添い、日常を繊細に描いたシーズナリーな作品性を特徴とするRin音。人懐っこい温かみのあるリリックとメロディー、滑らかなフロウに溶けあうチルな展開に琴線をくすぐられる。ファン人気の高い「SNSを愛してる」、「Sweet Melon」の初音源化はもちろん、「Cherry Blossom」、「earth meal」など人気ナンバーをずらりと揃えた名刺となり集大成となる1枚だ。アルバムには、新世代シーンを牽引する仲間たち、クボタカイや空音、ICARUSや19歳のシンガーソングライターasmi、Shun Maruno、maeshima soshiなど、気鋭のクリエイターが参加していることにも注目したい。

 2020年の空気感を体現するチルでメロウな作風が魅力の彼に、作品が生まれた背景やクリエイティブの秘密、そして、これまでとこれからについて聞いてみた。

――眠る直前のまどろみ感というか、Rin音さんの作品は“睡眠”をキーワードにした楽曲が多いですよね?
Rin音:そうですね、眠る前の時間が好きなんですよ。しょうもないことするとか、ストレッチするとか。人によっていろいろ過ごし方は違うと思うんですけど、リラックスできる時間ですよね。肩の力を抜いて素でいられるというか。なので、睡眠前の時間と睡眠って好きですね。
――音楽にもあらわれていますね。
Rin音:曲では自分のことについて書くことが多いので。そこは、出ちゃいますよね。
――なるほどねぇ。今回、リリースされた1stアルバム作品『swipe sheep』が素晴らしい出来で。世の中、緊急事態宣言こそ解除されましたが、まだまだ不穏な空気が続く日常のなか、Rin音さんの曲を聴いていると心が休まるんですよ。
Rin音:ありがとうございます。嬉しいです。個人的にもいい作品になったと思っています。自分にできることをちゃんとやれた感じがしています。もちろん、今後もっともっと成長していきたいんですけどね。もともと1stアルバムなんてモノを出せるなんて思ってもいなかったんです。(MC)バトルからラップをスタートして、自分のアルバムを出すことは一つの区切りだと思っていて、今の集大成をちゃんと残せたかなと。
――先日、ふとネットを見ていたら「snow jam」が、Spotifyグローバルバイラルランキング14位に入っていて驚いたんですけど。理由など分析されましたか?
Rin音:いや、わからないですね(苦笑)。実感まったくないんです。全然わからないんですよ。逆に何がきっかけだったのか教えてほしいです。
――それこそ、Spotifyグローバルバイラルランキングには、自分が好きな海外アーティストもいたんじゃないですか?
Rin音:はい、でも自分が肩を並べたとか思ってないですよ。でも、自分は今まで見ていた側だったので、ランキングに入れて嬉しかったことはたしかですね。
――ストリーミングサービスの普及、インターネットの浸透によって起きたニュースということですよね。
Rin音:僕は、めちゃくちゃ音楽が大好きっていうコレクター・タイプではないんです。なので、月額で聴けるストリーミングサービスなどは普通にリスナーとしてありがたかったですね。音楽に触れやすくなったと思うんです。軽い感覚でいろんな音楽を楽しめますから。だからこそ、これからの時代、よりいい音楽が世の中へもっともっと広がっていく時代になっていくのかなと思っています。
――「snow jam」がSpotifyで人気が可視化される前に、TikTokでバズったこともきっかけとして大きかったんじゃないですか?
Rin音:リスナーの子から教えてもらいました。もともと自分はTikTokは使ってなかったので。カップル動画として曲を使ってくれたとか純粋に嬉しかったですね。認めてくれたんだなって。自分がもともといる界隈では、僕の音楽は知ってもらえていたと思うんですけど、TikTokを通じてリスナー層の幅が一気に広がりました。
――Rin音さんのように、TikTokでバズって、YouTubeでの再生回数、ストリーミングサービスのランキングで可視化され広がっていくという導線は、いま様々な方々が注目している事例だったりします。でも、とても自然な流れでしたよね。それって、いい音楽を作れば届きやすくなるってことでもあるのかなって。
Rin音:自分はこれまでの人生において、特に苦労した経験とかないんですよ。めちゃくちゃ才能があったわけでもないと思っていて。ほとんどの人たちがそうですよね。ラップやっていてもグレているワケじゃないですし。だからこそ、みんなが共感できる歌詞に結びついたことで、日常をエンタメとして楽しむTikTokやインスタのストーリーで受け入れられたのかなって。
――まさにそうですよね。Rin音さんが描き出す人に寄り添う感覚、日本らしさというか、そんな世界観がネットを通じて温かみを持ちながら広がっていったと。ちなみに、ラップをやりはじめたきっかけは?
Rin音:MCバトルをYouTubeで見て、サイファー(複数人が輪になって即興でラップをすること)がしたいって思ったんです。もともと替え歌とか作るのが好きだったんですよ。友達にウケるじゃないですか? その後、高校3年の時にフリースタイルでラップしはじめて、大学ちょい前ぐらいにMCバトルにではじめたんです。
――憧れのラッパーとかいたんですか?
Rin音:転々と変わるというか、最初はゴリゴリ韻を踏む人が好きだったんですけど、だんだんフロウする人が好きになったり、言葉が面白い人が良くなったり、けっこうその時その時で変わっていきますね。なんていうか、ラップそのものが好きなんですよ。
――曲の作り方はどんな感じで?
Rin音:自分は音楽の理論はわからないので、トラックメーカーさんに自分が作りたい曲のイメージを大まかに伝えるんです。“暗いんだけど、最後の部分は迫力が欲しい”とか。トラックが届いたら、メロディーやフロウから考えて歌詞を書いていくって感じですね。
――Rin音さんが面白いのは、MCバトルに参加していたとは思えない、オリジナル楽曲の柔らかなセンスですよね。いわゆる攻撃性がないじゃないですか?
Rin音:ヒップホップを好きになった理由なんですけど、“ガンバレ!”っていう呼びかけじゃなくて、自分がどう思っているかを、自分の視点からラップするところが好きで。ヒップホップって“リアル”が大事じゃないですか? “お前はフェイクだ!”とか。自分にとってのリアルを考えたときに、それは悪ぶることじゃなくて自分の生活について書こうと思ってこのスタンスを貫いてますね。
――現時点での代表曲といえる「snow jam」は、どうやって生まれた曲なんですか?
Rin音:トラックメーカーさんに、“頭から歌う曲を作りたい”って話して。トラックを聴いたときにめちゃくちゃいいなって思って。自分の歌詞の作り方はフリースタイルっぽく直感で作るんですよ。最初の歌詞は、あまり良くなかったので、発想を変えたくて1ヵ月ぐらいトラックを寝かして。このときに思ったのが、1年中聴いて欲しいから季節感を出さないほうがいいかなって思ったんです。でも、いい曲だったら季節に限らず聴いてもらえるんじゃないかなって気がついて。情景もこだわりましたね。
――ああ、プレイリストって季節が大事で、季節に合う曲が選ばれがちなんですけど「snow jam」は、たしかに乗り越えていきましたね。
Rin音:それが通用したことは嬉しかったですね。

――どんなアーティストや楽曲にこれまで影響を受けてきましたか?
Rin音:ずっと聴いていたのは、唾奇さんやJinmenusagiさんですね。あと、電波少女とか。けっこうわりと、一般人でも共感できる言い回しをしてくれる人が好きで。共感できるからリピートしちゃうんですよ。
――福岡って、クボタカイさんやkiki vivi lilyさんだったり、いろんな新しいアーティストがいると思うのですが、Rin音さんにとってどんな場所ですか?
Rin音:ヒップホップ界隈で、僕らみたいな異端児というか変わったタイプ、はぐれ者? それでも受け入れてくれる懐の深さみたいなものを感じていました。ライブも呼んでもらいましたし。声をかけてくれる人も多くって。ジャンルとか越えていく感じはありましたね。常に刺激をもらっていました。

――アルバムの中でひときわ目立つファンキーでエモーショナルさが炸裂する「Naked Loving Summer」は、どうやって誕生したんですか?
Rin音:マネージャーさんに“ファンクな曲やってみない?”って提案されて“バッチコ~イ!”って答えて(笑)。レゲエ感もある明るいトラックだったので、明るい歌詞にしようと思ったんですけど、僕はそんなに底抜けに明るい性格ではないので、じゃあ季節感でとらえようって。“夏だ!”って。歌詞はちょっと奥手な男の子な感じで。そこでバランスを保って表現しましたね。
――そういえば、「earth meal」がLINE MUSICで1位になってましたね。
Rin音:嬉しかったです。テーマは“宇宙移住があったけど、宇宙船に寝坊で乗り遅れた男女”っていう設定を思いついて。asmiちゃんにボーカルをお願いして、相乗効果としてとてもよくなりましたね。

――SFめいた日常感なんだけど、寄り添う感じ、たゆたう感じがRin音さんらしいナンバーですよね。あと、「sleepy wonder」もとても好きで。なぜ昭和をテーマに歌うナンバーを? キーワードとしても“ブラウン管”、”黒電話”、“カセットテープ”、”ポケベル(暗号11014)”など意味深で。
Rin音:自分が平成10年生まれだからこそ、昭和に対するイメージや憧れがあって。ずっと前から理想にも見えていたんですよ。最近では、今の人たちの間で使い捨てカメラ“写ルンです”をあえて使ったりするじゃないですか? そんな良さだと思っていて。
――そこが、まさかのポケベル・ネタにも繋がっていくのですね。
Rin音:ちょうど平成が終わって令和になるとき、いろんな特集がされていたと思うんですが、昭和が記憶の中から薄れていく感覚を恋人にたとえて。自分が好きだった人、元カノに新しい動きがあるときに自分の存在が薄れていく感覚というか。あ、これ忘れられていく昭和っぽいなって。

――面白い感覚ですねぇ。それはあらためて歌詞をじっくり読みながら聴き込みたいですね。あと、本作にはファン人気の高い「SNSを愛してる」も初収録という。
Rin音:ラッパー活動をしはじめてYouTubeあげた2曲目の音源なんですよ。いったん、YouTubeから落としていたので待望の復活というか。
――そうなんだねぇ。
Rin音:あと、思い入れが強い曲は「%BOY」ですね。自分を表現したナンバーです。「swipe sheep」もなんですけど、この2曲は個人的に気に入ってます。
――「%BOY」のテーマ設定も発明的というか秀逸ですね。
Rin音:「%BOY」は、お酒の歌なんです。アルコール3%とか9%とかあるじゃないですか。摂取しただけでガラッと人格が変わってしまう人もいて。じゃぁ、今の本当の僕は何%なんだろうって。
――そっかぁ。あと「swipe sheep」は、寝言というかそんななかに本音が垣間見れる瞬間というRin音さんらしい曲ですね。
Rin音:この曲の季節は秋で。自分、誕生日が9月なんですね。自分の集大成を最後の曲で締めたいって思って。これは自信満々に出せるなって。
――そういうこともあって『swipe sheep』がアルバム・タイトルにもなったと。
Rin音:自分のテーマである“睡眠”と“携帯のスワイプ”という身の回りのことですよね。
――まさに、Rin音さんらしさ、これまでの足跡がアルバムに詰まっているということですね。では、最後の質問です。まだまだ新型コロナウイルス問題は続きますが、今後はどんなことをやっていきたいですか?
Rin音:そうですね、もっともっと音楽的にもそれにまつわることでもいろんなことをやってみたいと思います。ミュージックビデオもこだわっていきたいですし。でも、まずはアルバムをじっくり楽しんでもらえると嬉しいです。よろしくお願いします!!!

【取材・文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】

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リリース情報

swipe sheep

swipe sheep

2020年06月10日

ROOFTOP

01.snowjam
02.Sweet Melon feat. ICARUS
03.earth meal feat. asmi
04.Naked Loving Summer
05.%BOY
06.甘ったるいタルト
07.ネオネットヤンキー
08.Cherry Blossom
09.Summer Film’s feat. 空音,クボタカイ
10.微睡むミカン
11.sleepy wonder
12.SNSを愛してる
13.swipe sheep

お知らせ

■配信リンク

『swipe sheep』
https://ultravybe.lnk.to/swipesheep



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エイム練習
“エイム練習”で検索してました(苦笑)。ゲームが好きで『エーペックスレジェンズ』(エレクトロニック・アーツ)をやっているんですけど、弾がぜんぜん当たらなくってエイム練習(一人称ゲームのFPSで、弾を当てたい時に当てたい箇所へ当てる能力)をしたかったんです。う~ん、こんなんで大丈夫ですか(笑)

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