ドリと仲間たちの冬の祭典は、ダイナミックに感情を揺さぶった
WINTER FANTASIA 2010 | 2011.02.01
<WINTER FANTASIA 2010 ~ DCTgarden "THE LIVE!!!">(以下WF)は、まさに"冬の祭典"。毎年"DCT records"のレーベルメイトたちが集合して、大騒ぎ。今年で3回目となる恒例の冬フェスだ。
開演と同時に登場したのは、世界的な名ギタリストのデヴィッド・T.ウォーカー。キャロル・キングやマイケル・ジャクソンのアルバムに参加している名手で、ドリとの縁が深い。彼はDCT recordsからニューアルバム『FOR ALL TIME』をリリースしたばかりで、挨拶がわりにクリスマスソングを弾く。なんとも贅沢なオープニングとなった。
メインステージのトップバッターは、LOVE。真っ赤なアコギを抱えて、伸びのある声で「STAY」を歌う。ラブソングにこだわることなく、自らのライフスタイルを伝えようとする女性シンガーソングライターだ。「今日の帰り道、あなたを照らす月になれたらと思って書いた曲です」と言って歌った「テレパス」は、目と目で心が通じ合うようにとの願いが込められた、彼女らしい歌だった。
舞台転換では、"ドリでおどれ!ドリであそべ!"をテーマに選ばれたパフォーマンス集団“黒ドリ!?-BEGINS-”が会場を楽しませる。
いきなり爆音を響かせたのはFUZZY CONTROL。高いテクニックを持つロック・トリオだ。ドラムのSATOKOは、ドリのツアー・ドラマーにも起用されたほど。ハードなロックが持ち味のこのバンドを、会場は大歓迎する。いろんな音楽をリスナーにプレゼンテーションするこのイベントならではの光景だ。そこにストレートなメッセージを発する「SUNSET」が、よく似合っていた。
中澤信栄はギターの弾き語りの「マボロシ」で、スマートに自分の音楽観を提示する。一方で「夢物語」ではブラス・セクションを呼び込んで、ダイナミックな側面も聴かせてくれた。ラストの「メッセージ」では再び弾き語りに戻るのだが、どの曲でも中澤はボーカルにギターにグルーブマスターとしての力量を発揮。実力派の片鱗を見せた。
Who the Bitchもロックトリオ。フロントのギター&ベースが女性で、今、シーンをにぎわすダンサブルなロックをWho the Bitch流に表現する。フロント2人の激しいヘッド・バンギングに、サングラスがいつの間にか吹っ飛んで、会場を大いに盛り上げる。「ついに今年もやってきました、WF。ここに立っていることが幸せです」と叫んで、大会場でプレイする歓びを爆発させる。印象的だったのは、「Chicken Heart」。美しいメロディとは対照的なハードなサウンドに乗せて、“Chicken Heart=臆病者と呼ばれる者こそが、生きる勇気を大切にしている”という奥行きのあるメッセージを込める。Who the Bitchの本質がそこにあった。
さて、いよいよドリのニューアルバム『LOVE CENTRAL』曲順再現ライブが始まる。アルバムと同じ「LOVE CENTRAL」がオープニングで鳴り響くと、会場から異様な熱気が立ちのぼる。中村正人と吉田美和が『LOVE CENTRAL』のロゴに包まれたロングコートに身を包み登場。待ちきれないように、吉田がファンに向かって「キャー」とシャウトして、「その先へ」が始まった。心に秘めた強い意志を伝えるこの歌に、オーディエンスもこのライブに対する覚悟を決める。ドリにしかできない、エモーショナルなスタートだ。
「我が愛するヨコハマベイビーズ!会いたかった!ドリの愛の巣窟へようこそ」と吉田。「今年もあとちょっと。WFのトリやります」と中村。吉田がヘッドセットを装着すると、「ヘッドセットってことは、吉田さん?!」と中村が振る。「前半は自慢のダークな作り。AKSと一緒にワッルーい感じに」と吉田は不敵な笑顔でワルワルモード。これを合図に、セクシーなダンスショーが始まった。 「ANOTHER JUNK IN MY TRUNK」では吉田がコートを脱ぎ捨てる。「POISON CENTRAL」でワイルド&セクシーがピークを迎える。本気の吉田は、凄味がある。
「ワルかったですねー。あー怖い怖い(笑)。次は一転、こんなのです」と、次は中村がコートを脱ぐ。と、きらっきらのシルバーのトップに白のパンツ。まさにムードは一変して、かわいい「FALL IN LOVE AGAIN」だ。このダイナミクスがたまらない。絶好調のドリに、オーディエンスも大喜びだ。
パントマイム風の振り付けで「せつなくなぃ?」をシアトリカルに聴かせた後、「生きてゆくのです?」でカラっと明るくオーディエンスの感情を解放する。アルバムの曲順の意図がはっきり伝わる、素晴らしいライブだ。とどめは「THE ONE」。人気の高いこの大作は、アリーナ・クラスにふさわしい壮大な構成を持っている。曲の持つ本来のスケールの大きさを、横浜アリーナで見事に現わしたのだった。
アンコールで吉田はふわふわのフードのついたパーカー姿。もう一度デヴィ爺ことデヴィッド・T.ウォーカーを呼び込んで「WINTER SONG ~ DANCING SNOWFLAKES VERSION ~」。この曲を聴くと、本格的な冬の到来を実感するファンも多いことだろう。
いよいよ終わりのときが迫る。最後の最後は、吉田のアカペラだった。「長い曲を選んじゃったけど、いいかな?」。歌い始めたのはエディット・ピアフのシャンソンを、岩谷時子が日本語に訳した「愛の讃歌」だった。♪あなたの燃える手で あたしを抱きしめて~(中略) あたしを燃やす火 心とかす恋よ♪。リリックがそのまま、ドリのことに思えてくる。オーディエンスのひとりひとりに歌いかける吉田の真っ直ぐな声が、冬の祭典の終わりを熱くやさしく告げていた。
【 取材・文:平山雄一 】
ライブ 女性ボーカル DREAMS COME TRUE 中澤信栄 FUZZY CONTROL LOVE Who the Bitch
セットリスト
LOVE
- STAY
- ツリーを飾ろう
- 遠い声
- テレパス
FUZZY CONTROL
- 1℃
- latest
- モナリザ
- SUNSET
中澤 信栄
- マボロシ
- THE CRISTMAS SONG
- I DON'T KNOW MUCH
- 君のいない世界
- 夢物語
- メッセージ
Who the Bitch
- Superstar
- カリスマヒーロー
- Chicken Heart
- 赤いレモンティー
DREAMS COME TRUE
- LOVE CENTRAL
- その先へ
- LIES, LIES.
- ANOTHER JUNK IN MY TRUNK
- POISON CENTRAL
- FALL IN LOVE AGAIN
- ねぇ
- Eleanor Rigby (David T. Walker)
- せつなくなぃ?
- 生きてゆくのです♡
- GODSPEED!
- 風切って行こう!
- MY DARLIN' DOGGYS♪
- THE ONE
- En-1.WINTER SONG ? DANCING SNOWFLAKES VERSION ?
- En-2.Miwa a cappella Song