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実力派バンドの競演で今年の音楽シーンを浮き彫りにした「スペチャ!るギグ2」

スペチャ!るギグ | 2011.03.02

 スペースシャワーTVの人気チャート番組“スペチャ!”のVJ 臼田あさ美がキャスティングに参加。彼女が大好きなアーティストやバンドを招くイベントの第2回目が行われた。昨年はサンボマスター、the telephones、ミドリが出演して大好評。今年はくるり、清竜人、THE BAWDIESの3組に加えて、オープニング・アクトにThe SALOVERSが登場する。その鋭いメンツ揃えに、会場のZepp TOKYOは超満員に膨れ上がったのだった。

 開場時に登場したThe SALOVERSがオーディエンスをしっかりと熱くさせたところで、BGMが「ソウルメン」に変わり、濃厚なR&B/R&Rの雰囲気が漂い出す。そこにトップバッターのTHE BAWDIESが現われたから、会場はもう、ワーワーキャーキャーの大騒ぎ。

 スーツにタイの4人が「I,M A LOVE MAN」を皮切りに、ダンサブルなロックンロールを立て続けに演奏する。「僕らのこと、知らなくてもいいじゃないですか、楽しむだけじゃないですか」とた たみ込むROYのMCも快調で、アッという間にZeppをひとつにする。

センターに陣取る ベース&ボーカルのROY,その左右にTAXMAN,JIMの二人のギタリスト、そして後ろにはドラムのMARCYというTHE BAWDIESの黄金比率は、さらに磨きがかかっている。

 ひとくちにロックンロールといっても様々なタイプがあるが、THE BAWDIESはそれらを変化を付けて聴かせてくれる。原初的なブルースに根ざす黒っぽいもの、白人が洗練させたスピーディなものなどを独特のバランスでセットリストに配分する。それは、彼ら自身の生来のグッドセンスでもあり、ライブという場で直感的に見に付けた 実力でもある。

英語詞の歌とグルービーな演奏のスタイリッシュさ、分かりやすい日本語の「どうですか?」口調のMCのギャップ が、スリルも笑いもリスペクトも含めて、THE BAWDIESのすべての魅力の根源にあると痛感したライブだった。

 

清竜人が登場すると、Zeppの雰囲気がガラっと変わる。バンドからソロ・アーティストという変化以上に、繊細な 内面を描くという清の歌のアプローチに、会場に緊張が走る。それでもフロアから「かわいいー!」と声がかかると、清はにっこり。エレ キギターを抱えて、「えー、歌います」とややシャイにコメントして「ワールド」を歌い始めた。

 ナイーブな歌詞を反映するように、地声と裏声の切り替えが見事だ。また、そうした清の歌唱を活かすバック・ミュージシャンの演奏もいい。特にASA-CHANGのドラムが、効果的なアクセントを付ける。そんな清とバックの息が合っていたのは「プリーズリピートアフターミー」で、クラシックの演奏を聴くような快感があった。

 新曲「ボーイ・アンド・ガール・ラヴ・ソング」を、清はピアノを弾きながら歌う。ギターの弾き語りもよ かったが、ピアノで歌の説得力がさらに増す。触れれば壊れてしまいそうな危うさが、これまでの清にはあった。だが、このストレートなラブソングを歌う清に大きな変化が訪れたようだ。それはいい意味での“子供返り”と言っていい。女性シンガーソングライターの小谷美紗子が 「私は小学生の頃の“善悪”を、今も基準にしている」と言っているが、清にも同じ感性を感じる。大人になることをいったん脇に置いて、自分の現在の真実を追う決心を固めたアーティストの強さがひしひしと伝わってきた。

“吸う息”も歌にしてしまう清のボーカルの個性と、彼の新たな次元への開幕を確認したライブとなった。

 イベントのトリは、くるり。ツアー真っ最中のくるりは、そのツアーの成果をそのまま持ち込んだステージになった。

 メンバーは、いつもの3人に加えて、フジファブリックの山内総一郎がギタリストとして参加している。ライブはその山内の鋭いコード・カッティングから始まった。

 オープニングは、豪快な展開のインストだ。探り合いなしで、お互いの“今日”をダイレクトに音で確認する。そのまま突入した「目玉のおやじ」で岸田繁が♪茶碗をみがいておけよ♪と感情を爆発させてシャウトすると、会場は大いに沸く。ニュー アルバム『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』からのアップチューンが、のっけから炸裂だ。

 4曲目まで一気呵成。しかも、演奏と歌はどんどん精度を増し、ウィーンで録音したアルバム『ワルツを踊れ』収録の「ハヴェルカ」でこの日最初のピークが訪れる。現在ツアー中という好状態がもたらす、最高のスタート・ダッシュだ。

 その勢いで演奏した、民謡「鹿児島おはら節」が面白かった。日本独特の音階が、くるりの感性で再構築される。ヨーロッパ音楽のエッセンスをくるり流に昇華した「ハヴェルカ」から一転してディープな和サウンドに移行するくるりの実力と、アイデアの振幅を見せつけられて、フロアは棒立ちで聴き入ったのだった。

「今日はThe SALOVERSの『Night in gale』を聴いてて、泣いてしまいました。刺激されるんですよね」と岸田がこのイベントの感想を彼らしい言葉で述べる。今年のくるりは、未知のバンドとのジョイントに積極的だ。それは、くるり自身が変化を欲していることの表れであると同時に、ステージに立つ限り、キャリアも実績も関係なく、同列だという覚悟でもある。

 ラストは「ロックンロール」。思い切り“たった今のくるり”を堪能したライブだった。

 余談だが、終演後、「山内くん、上手だね」と言うと、岸田にすぐさま「上手なだけじゃないですよ」と釘を刺された。そのとおり。演奏が上手なのは当たり前、その上で何を表現するかに集中する。それはこの日、出演したすべてのバンドに言えることでもある。

ピュアな臼田あさ美のセレクトしたバンドたちの、優れたパフォーマンスに触れて、身の引き締まる思いでZeppを後にしたのだった。

【 取材・文:平山雄一 】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 清 竜人 THE BAWDIES くるり The SALOVERS

INFORMATION

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スペチャ!るギグ2~あさ美ふたたびロックナイト~
3/29(火)19:00~

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