豪華アーティストが多数登場、自身も出演した槇原敬之トリビュートコンサート
槇原敬之 | 2011.04.08
デビュー以来、リスナーを楽しませ続け、他のアーティストに大きな影響を与えてきた槇原敬之の、20周年記念にふさわしい温かなコンサートだった。
ステージの真ん中に置かれたグランドピアノの前に、武部聡志が座って弾き始める。いきなりの槇原の登場に、アニバーサリーの気持ちを込めて集まったディープなオーディエンスたちは当然、騒然。そんな歓声をさっと静まらせる槇原の「NG」を歌う声はさすがだった。まだ寒風が吹きすさぶ街から会場に入ってきた観客の心を、さっと温める。そんなシンガーの呼吸を熟知した武部のピアノも素晴らしい。
「去年、武部さんから直々に『トリビュート・アルバムを作りたい』というお話をいただいて、ありがたいと思いました。素晴らしいアーティストが参加してくれたので、みんなの顔が見たいじゃん。感謝してます。今夜限りのスペシャル・ライブを思い切り楽しんでください」と槇原が、ライブのスタートを笑顔で宣言する。
最初にかりゆし58が現われ、ボーカルの前川真悟が「僕らがここに立ってる理由は会場のみなさんと一緒で、マッキ―が好きだからです」と言って「冬がはじまるよ」をロックなテイストで歌う。会場は、この沖縄から来た“We Love Mackey”仲間を大歓迎する。この後miwaが登場して、かりゆし58と「モンタージュ」を一緒に歌い、「父の影響で槇原さんを聴き始めました」と言うと、会場から温かい笑いが起こる。さらにソロで「北風」を歌う。以降、進行はそれぞれのアーティストが“槇原体験”を語りながら、ソロとセッションが続いていく。
ハートフルなパフォーマンスが続く中で、前半はさかいゆうが非常に印象的だった。まず“ソウルマン・マッキー”に敬意を表して福原美穂と「彼女の恋人」を歌う。さかいのピアノがとてもいい。「高知から上京してきて、東京という怪物を前にしたときの不安と希望を、この曲を聴くと思い出します。泣かないで最後まで歌えるかな。男として、プロフェッショナルとして、歌わさせていただきます」と前置きして歌った「遠く遠く」が凄かった。槇原はラブソングの名手だが、それ以上に“切ない不安と希望”を描かせたら名手中の名手。その代表曲を、さかいは実体験と重ね合わせて見事に弾き語ったのだった。
中村中、一青窈のザ・ピーナツのようなデュオでの「Hungry Spider」、キマグレンとそれまでの出演者全員が揃った「どんなときも。」など楽しいアクトが続く。後半に移るときに、再び槇原がひとりで「ANSWER」を歌う。
後半はJUJUからスタート。続くゴスペラーズの村上が語り出す。「去年、“ミュージックフェア”で、僕と北山とJUJUさんと槇原さんで、ビリー・ジョエルの『ロンゲスト・タイム』という曲をアカペラでやったんですが、それをキッカケにアルバムに参加したりコンサートに呼んでいただいたり、この1年で槇原さんを身近に感じられるようになって嬉しいです」。『ロンゲスト・タイム』は村上が高校時代にアカペラに興味を持つキッカケになった曲でもあり、その縁の深さと嬉しさは想像に難くない。そんなメンバーたちが思いを込めて歌った「うん」は、アカペラのイントロに始まって最後まで、とても丁寧でハイグレードなボーカリゼーションとなった。
終盤は槇原が再度ステージのセンターに立って、JUJU、ゴスペラーズと共に「不安の中に手を突っ込んで」を歌って、本家ソウルマンの面目躍如のパフォーマンスを決める。
アンコールは最新シングル「林檎の花」で、出演者全員が心をひとつにして歌い継いだ。
この歌は東北地方をテーマにした作品で、もし機会があれば槇原敬之のオフィシャルHPトップかブログを読んでほしい。そこには槇原敬之の、現時点での思いが書かれている。
心から亡くなった方々のご冥福と、被災者の方々の日常の一日も早い回復をお祈りいたします。
【 取材・文:平山雄一 】