3日間に渡って行われた「L’ULTIMO BACIO Anno’11」。その1日にフィーチャリング!
L’ULTIMO BACIO Anno’11 | 2012.01.19
恵比寿ガーデンホールの冬の恒例イベント“ルルティモ・バーチョ2011”の2日目に登場したのは、ELTとは別のゆったりとした表情を見せるソロの持田香織と、各方面から絶賛を浴びるポップセンスの持ち主、大橋トリオ。注目のダブルネーム・ライブを楽しみに、暮れのガーデンプレイス名物のバカラ製特大シャンデリアの脇を通って、音楽好きの大人たちが集まってくる。まるでクリスマス・パーティーのような飾りつけをしたホワイエでは、シャンパンやワインがサーブされ、オーディエンスがリラックスしたところで開演時間が来た。
オープニングアクトの前川紘毅は、アコギの弾き語りをキーボードがサポートする編成で破綻のないステージを務め、いよいよ持田香織のライブだ。
持田のセットは超シンプル。バックは、キーボードのDr.KYONと、ベーシストの渡辺等の二人。だが、その二人の繰り出すサウンドの多彩さに、後で驚かされることになる。
オープニングの「green」がいい。Dr.KYONのピアノと渡辺のチェロが奏でる必要最小限のサウンドが、持田のコケティッシュな魅力を充分に引き出す。そんな“音楽の魔法”で、ライブがスタート。続く「Night Cats」は、ウッドベースに持ち替えた渡辺のジャズ・ビートで始まる。それにスキャットで応える持田は、途中でドレスのフィットを直すなど、会場と同じくらいリラックスして楽しそうだ。
「こんばんは、 持田香織と申します。わずかな時間ですが最後まで楽しんでいただけたらいいなと思います」。
「雨のワルツ」はサウンドの変化が見事だった。Dr.KYONのエレピのみで持田が歌い始め、途中で渡辺のウッドベースが加わると、Dr.KYONはピアニカに持ち替える。歌に沿った楽器のバリエーションに持田が敏感に反応して、ロマンティックなメロディをさらに膨らませる。この他、渡辺はマンドリンやグロッケン(鉄琴)を演奏。全8曲で4つの楽器を弾きこなす大活躍で、ニュアンス豊かな持田のボーカルをサポートして、素晴らしいセッションになった。
一方、大橋のバックも3人ながらいろいろな楽器が入れ替わり登場して、大橋サウンドの特徴である“生演奏の楽しさ”を届ける。レコーディングではほとんどの楽器を大橋自身が演奏しているのだが、ライブではそうはいかない。だからこそ、ギターやピアノを弾きながら歌う大橋の、他の楽器とのヴィヴィッドなアンサンブルが楽しめる。この日もそんな楽しみの多いライブになった。
ドラムス、ウッドベース、マンドリン(ギターも弾く)、そして大橋の4人は、全員、いつものトップハット姿で登場。1曲目の「クラムチャウダー」で、大橋はエレキギターを持ってセンターマイクで歌う。ジャージーなメロディが、一瞬にして“大橋ワールド”をガーデンホールに現出させる。
そして次の「THE MUSIC AROUND ME」が最高だった。よくスウィングするグルーブに乗ってピアノを弾きながら歌う大橋は、今、最もノッているミュージシャンらしく、活き活きとしている。バックのギターとの掛け合いやエンディングのアドリブでのスキャットは、音楽の持つ自由さや解放感をそのまま体現していて、快感と共に感動をオーディエンスに与えていた。
バックの演奏もいい。中でもキーマンはドラムスと見た。終演後、楽屋で大橋にそのことを聞いてみると、「基本的に楽器は全部自分でやるんだけど、今回のドラムスの神谷洵平くんは、“僕のできないことができるドラマー”。だから一緒に演奏するのが楽しい。彼のやっているバンド“赤い靴”も、すごくいいですよ」と語ってくれた。
そんな神谷のナイスなグルーブが再び炸裂したのは「WINTERLAND」。客席もハンドクラップで応じて、盛り上がる、盛り上がる。
そうして、アンコールではクリスマスらしく鈴を鳴らしながら大橋と持田の二人が登場したから、オーディエンスは大喜び。
「最後は僕のピアノと二人の歌のみで、しっとりと」と言って、大橋がプロデュースした持田作品「静かな夜」が始まった。持田の ♪テュルリラ♪ というリフレインが、とても大人に響く。豊かな音楽が彩ったこの日のライブの集大成のようなアンコールに、客席はゆったりと浸ってこの日のイベントは幕を閉じたのだった。
【 取材・文:平山雄一 】
【 撮影:堀清英 】
セットリスト
- 君のいない左側
- ヒミツキチ
- 守るべき人
- 言えない約束
- green
- Night Cats
- 雨のワルツ
- タオ
- Don’t Wait Too Long Cover
- Drop
- Every Day Love(日々の愛)
- クラムチャウダー
- THE MUSIC AROUND ME
- KISS OF LIFE
- THE CHIRISTMAS SONG
- この雨みたいに泣いてみたかったけど
- BING BANG
- WINTERLAND
- アネモネが鳴いた ENCORE
- 静かな夜