『INOUEISEKI VOL.11』、オリジナリティ溢れる4組が出演
INOUEISEKI Vol.11 | 2012.04.12
オープニングアクトで登場したのは、5人組バンドOTOTOIGROUP。1曲目「T-S-U-B-O」を皮切りに穏やかなアンサンブルをじっくり広げた。曲が展開するにつれてサウンドの色合いが変化し、起伏たっぷりに響き渡る様は短篇映画のよう。紅一点の岩崎由季(Vo&G)・諸井靖明(Vo&B)の柔らかな歌声も、とても心地よい。ひたすら精緻な演奏を聴かせた彼らだが、演奏中に時折、実に楽しそうに笑顔を浮かべる姿が印象的であった。「最後まで楽しんでください」、島がメンバーを代表して挨拶し、最後に聴かせたのは「100Record」。どこか幻想的であった他の曲とは風味の異なる、爽やかな疾走感を堪能させてくれた。
「よろしく!」と一言挨拶し、アコースティックギターを手にした長澤知之。1曲目は「マカロニグラタン」。透明感とパンチ力を兼ね備えた歌声が素晴らしい。パーカッシヴなギタープレイを交えて歌い上げた「けやき並木道」。密やかな爪弾きの冒頭を経て、力強く高鳴っていった「捨て猫とカラス」……奏でるギターと歌が一体となり、エモーショナルに迫るあらゆる曲に、ひたすら息を呑まされた。新曲「センチメンタルフリーク」を披露した後、この日の彼のステージで最初の長めのMC。「久しぶりのライヴなので緊張しています。チューニングは合間を埋めているだけでして……」と照れくさそうに語り、5曲目「カスミソウ」へ。穏やかな響きの中から力強いメロディを突きつけるこの曲も、胸に熱く迫るものがあった。そしてラストは「俺はグビ」。スピード感たっぷりのサウンドに誘われ、観客の間から起こった手拍子。全身全霊で歌い、ギターを奏でる彼の熱量を存分に体感させられるクライマックスとなった。
ギターのクリーントーンの爽やかな響き、内田万里(Vo&Key)が奏でる印象的なフレーズ、絶妙なグルーヴで大いに盛り上げたふくろうず。ジワジワと光量を増すかのように展開する1曲目(新曲)の時点で、場内はすっかり彼らの世界となっていた。程良いテンポで駆けた「マシュマロ」。シャープなノリの良さ、フワフワとした浮遊感が融合した「S.O.S.」などを演奏し終えると、安西卓丸(B&Cho)が語った。「最近引っ越したんですけど、トイレのセンサー式の電気が消えるのが早いんですよ。テクノロジーに頼り過ぎるのも良くないのかな……」。ぼやき気味のMCが観客の笑いを誘った後に聴かせたのは、初披露だという新曲。明るい躍動感で盛り上げてくれる曲であった。不敵に高鳴るアンサンブルが場内の熱気を上昇させた「トゥーファー」。そしてラストは「砂漠の流刑地」。残響を効果的に交えて構築されるサウンドの壁が圧巻。多彩な曲で楽しませてくれたふくろうずであった。
大トリで登場したのは、東京カランコロン。「みなさん、こんばんは!」、勢いよくステージに駆け込んで来たいちろー(Vo&G)が元気よく挨拶すると「CAN’TSTOP運命線」がスタート。ダンサブルなサウンドがワクワク感を強力に誘う。いちろーが観客を煽ると、力強い手拍子が湧き起った。タイトル未定の新曲、4月にリリースする最新シングルの収録曲「true!true!true!」と「×ゲーム」。ミュートしたギターのミステリアスな風味、せんせい(Vo&Key)の鉄琴のプレイも交えて、独特な浮遊感を醸し出した「ラブ・ミー・テンダー」。魅力的なナンバーが次々披露され、本編ラストは「少女ジャンプ」。軽快なスネアの連打でスタートし、パワフルに駆け抜けていった。せんせいが実に楽しそうに身体を揺らしながら歌い、いちろーの歌声も熱く合流して幕切れた後、熱烈な拍手が観客の間から起こった。一度は笑顔で手を振りながらステージを後にしたが、歓声に応えて再登場したメンバー達。アンコールで聴かせてくれたのは「マリメッコとにらめっこ」。穏やかな昂揚感が場内いっぱいに広がり、大きな拍手と共に『INOUEISEKIVOL.11』は締め括られたのであった。
【取材・文:田中大】
【撮影:山本拓未】