祝創設20周年! キューン20日間の饗宴は、真心ブラザーズとゴスペラ―ズから好スタート!!
真心ブラザーズ,ゴスペラーズ | 2012.04.20
キューンミュージック(旧キューンレコード)。ASIAN KUNG-FU GENERATION、奥田民生、ゴスペラーズ、チャットモンチー、NICO Touches the Walls、PUFFY、HOME MADE 家族、ユニコーン、LAMA、L’Arc?en?Ciel(50音順)……と、当サイトにも登場しているアーティストの他に、グループ魂や電気グル―ヴ、真心ブラザーズなど、個性的なアーティストたちが所属するレーベルである。
このキューンミュージック、通称“キューン”が、本年、設立20周年を迎えた。これを記念して、レーベルが企画したライヴ・イベントが「キューン20イヤーズ&20デイズ」だ。恵比寿リキッドルームにて、20日間連続でライヴを行うこのイベント。出演するのは、もちろん全て同レーベル所属のアーティスト達である。そして、この「キューン20イヤーズ&デイズ」の初日を飾ったアクトが、次の2組。そう、ゴスペラーズと真心ブラザーズ(出演順)だ。
真心ブラザーズは、レーベル創始時からの生え抜き、ゴスペラーズも所属歴15年以上。キューンの歴史とともに、音楽を鳴らし続けてきたアーティストたちである。
最初に登場したのは、ゴスペラーズ。会場が暗転し、ステージを覆っていた黒い幕が、スルスルと左右に開いていく。その途中、村上てつやの歌う、誰もが知るこのワンフレーズがリキッドルームに響いた。
♪愛してる?♪ゴスペラーズの代表曲の1曲、アカペラの「ひとり」で、「キューン20イヤーズ&デイズ」20日間の幕はあがった。一転、続くは、バンドサウンドもゴージャスなポップ・チューン「靴は履いたまま」。曲に合わせて、メンバー5人が、一斉にターンをキメる。曲の最後は、この日だけのスペシャルバージョンで、5人同時に、胸元からスッと片手を前方に差し出し ♪We Sing For Ki/oon(キューン)♪と、ハーモニーにメッセージをのせた。リーダーの村上てつやが、次曲の狭間に叫ぶ。
「おめでとう20周年!今日はこれから始まる20日間の宴のスタートです!まずはこの曲で?♪ひとつになるのさ?♪」
ボサノヴァやサルサなどワールド・ミュージックのフレーバーが爽やかなアップ・チューン「一筋の軌跡」へ。エンディング直前。この曲でリードボーカルを務める酒井雄二が「真心ブラザーズのファンの方もどうぞご一緒に!どうぞ歌ってください!」と、♪ラララララ?♪とメロディを歌いながら促すと、客席もすぐにライドオン。最後には、観客だけでの大合唱となった。
4曲目「ミモザ」が終わるとMC。5人全員が参加し、話を進めて行く。その概要を紹介しよう。話題は、レーベル名の変遷からスタート。キューンソニー、キューンレコード、キューンミュージックと変遷を紹介し、今だから言える所属アーティストの本音(?)として、「レーベル名からソニーがとれた時には、(世間体的に)”どうかな?”と思った(笑)」と笑いをとる。その後「キューンは、気運⇒キューンになった」などのトリビア、開場?開演までのBGM曲を、メンバーそれぞれ“私のキューン”として、今までキューンから発売された曲を選んだなど、レーベルの歴史とその思い出を織り交えながら、トークを展開。そして最後を、こう締めくくった。
「ゴスペラーズにとって、キューンミュージックのいちばんは、僕たちをデビューさせてくれたことです」
この言葉を受け、デビュー曲のアカペラ「Promise」を披露した。ライヴは早くも後半へ向かう。ホーンセクションのマウンテンボーイズ(現在、真心ブラザーズのライヴバンド“MB’S”としても活躍中。もちろん、この日の真心のステージにも出演!)を呼び込み、元々テンポ感あるアカペラの曲をハイスピードのジャズにリアレンジした「いろは2010」へ。ちなみにマウンテン・ボーイズの1人は、村上の大学時代の同級生。さらには、キューンに所属していたアーティスト、ビンゴボンゴの元メンバーでもあり、この日のイベントのために、村上が自ら声をかけ、出演が実現したとか。5人のハイテンション&エネルギッシュなパフォーマンスに導かれ、客席のボルテージも上昇していく。「この熱いバトンを、みんなにつないでいかないといけない! 最後、決めるぜ?!」と村上のシャウトを受けたラストナンバーは、5人が全員リズムに合わせジャンプし、ヘッドバンキングするファンキーでアグレッシヴな1曲「FIVE KEYS」。♪始まったか 始まったらしい 始まったか 手の鳴る方へ♪ という歌詞に合わせ、5人が手を叩く。会場も両手を頭上にあげ、手を鳴らし、“20日間の宴”の始まりを彩った。
約15分のセットチェンジを経て、真心ブラザーズ。彼らのバックバンド“MB’S”と共に、YO-KING、桜井秀俊がステージに姿を表す。最初に会場に響いたのは、桜井秀俊のギター。フィード・バックする歪んだその音色に、空気がガラリと変わる。ライヴのオープニングを飾ったのは「新しい夜明け」。曲調、そして後半のクラップで、観客を巻き込んでいく、ハッピー&ピースフルな1曲。エンディングのコーラス・ワークには、ゴスペルに通ずるような壮大感もあり、真心ブラザーズ流のお祝いモード全開といった印象だった。2曲目「BABY BABY BABY」が終わったところで、最初のMC。「みなさま、ようこそ!真心ブラザーズが愛するキューンミュージックが、20周年!」とYO-KING。「本来ならばミュージシャンとレコード会社が祝えばいいのに、こうして皆さんを巻き込んで、お金まで使わせ……」と話が展開。そこに「いきなり歯に衣着せぬ言葉で…(笑)」と、桜井がやんわりとフォロー&つっこみをみせ、客席は大爆笑。さらに「初日から濃いですが」という桜井の言葉を受け、YO-KINGが「アンコールのリハーサルから、濃すぎたよね」と、まさかのアンコール予告。会場、爆笑。その空気に対して、我関せずな様相で、YO-KINGがこう締めくくった。「僕達もこの場を楽しむので、皆さんも楽しんで行ってください!」。薄いブルーのムービングライトがステージを照らす。桜井のギター、そのイントロが、優しく強く漂い、一気に空間を上がっていく。「空にまいあがれ」だ。サビに合わせて、満員の観客も両手を高く挙げ、彼らの楽曲にレスポンスした。
ここで、キューンと自分達の歴史のスタートに触れたMC。キューン創立時には、既にデビューし、3枚のアルバムを発売していた彼ら。キューンに移籍後、初めて作ったのが、4枚目のアルバム『善意の第三者』。このアルバムから「旅の夢」を演奏。シンプルなメロディを力強く、会場に響かせた。
「キューン20イヤーズ&デイズ」は、20日間のライヴだけでなく、様々な企画と連動している。そのひとつがオーディション。その中から、真心ブラザーズが“真心賞”として選んだのが、シンガーソングライターの増子周作だった。真心の2人が、その増子を紹介し、ステージに呼び込む。増子は、真心ブラザーズの2人(なんとドラムはYO-KINGが担当)とMB’Sをバックに、彼のオリジナル曲「今夜僕ら」を熱唱。その堂々とした姿に、ステージからも客席からも、温かく、大きな拍手が送られた。
このパフォーマンスを受け、YO-KINGがこんなひとことを。「白眼がドロドロしていなかった。10代の白眼って、こんな綺麗だったんだ……」。爆笑する会場に、とどめのこの言葉。「それでは、ここからベテランの濁った眼でいきたいと思います。濁っていながらも、ニューアルバムを出します。(客席から大歓声&拍手)濁れば濁るほど、笑顔の大切さがわかります。濁れば濁るほど、笑顔でいたいと思います。聴いてください」と、ニューアルバムに収録される「Keep on smiling」へ。滑らかにスウィングするようなビートに反応する観客のテンションの波。メロディと一緒に、体の中で上下を繰り返すそのバイオリズムが、自然に客席全体を揺らして行く。
ライヴは後半へ。ステージが真っ赤なライトに包まれ、「拝啓、ジョン・レノン」が飛び出す。真心ブラザーズの音楽への情熱が、目の前で、次から次へと爆発し弾ける、攻撃的で、今でも斬新さを保持したロックンロール・ナンバーだ。リリース当時、真心ブラザーズに対する巷のイメージが一変したのを思い出す。その後、彼らはキューンとともに歴史を重ね、幾多のキラー・チューンを世に送り出した。そのひとつが、フィリーソウル色が爽快なブライトチューン「EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG」。真心ブラザーズの、音楽への情熱が、まばゆい太陽の光のように、目の前でキラキラと乱反射する。音楽への変わらぬ情熱を、まったく違った形で表現している……そう感じる2曲が続いた、本編のエンディング。このふり幅あるセットリストに、このグループの音楽性の豊かさを感じるのと同時に、それよりも強く、変わらぬミュージシャン・シップと心意気を観た。
アンコール。YO-KINGの予告どおり(?)、真心ブラザーズ、ゴスペラーズがステージに登場。全員、お揃いのTシャツ(「キューン20イヤーズ&デイズ」用に作られたTシャツ)で「ENDLESS SUMMER NUDE」を。YO-KING⇒全員⇒北山⇒村上⇒酒井⇒安岡⇒全員⇒黒沢⇒全員⇒全員⇒酒井⇒安岡⇒全員……と順番に歌い、最後は、村上の「YO-KING!」という掛け声の後、YO-KINGが高らかにメロディを紡ぎ、豪華なボーカル・リレーを締めくくった。最後の最後は、前述の増子をステージに呼び戻し、この日の出演者全員で「どか?ん」を絶叫。感謝の気持ちと、予感と期待、それぞれのテンション……そんな様々な要素が交差し、結構ぐちゃぐちゃな(混沌というよりは、まさにぐちゃぐちゃ?)エンディングだったが、20日のお祭りの開幕を告げるには、ふさわしい光景だったのではなかろうか。最後の曲が終わっても、なかなかステージをはけようとしなかったアーティストたち。そして頬を上気させ、興奮をひきずりながら、会場を後にした満員の観客の笑顔が、それを証明していた気がした。
20日の宴は始まったばかり。キューンミュージックさん、20日間に渡る様々な興奮を、しっかり刻み、次のシーンへつなげてくださいね。
20周年、おめでとうございます。
なお、当サイトでは、このイベントのライヴレポートを今後も掲載予定です。お楽しみに!
【取材・文:伊藤亜希】
リリース情報
セットリスト
ゴスペラーズ
- ひとり
- 靴は履いたまま
- 一筋の軌跡
- ミモザ
- Promise
- あたらしい世界〜U’ll Be Mine
- 永遠に
- いろは 2010
- FIVE KEYS
真心ブラザーズ
- 新しい夜明け
- BABY BABY BABY
- 空にまいあがれ
- 「今夜僕ら」ボーカル増子周作、演奏真心ブラザーズ+MB’S
- 旅の夢
- Keep on smiling
- Song of You
- 拝啓、ジョン・レノン
- EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG ENCORE
- ENDLESS SUMMER NUDE w/ゴスペラーズ
- どか〜ん w/ゴスペラーズ、増子周作