フィッシュマンズ(ゲストボーカル・原田郁子、の子)とサカナクションによる、夢の共演。
フィッシュマンズ,サカナクション | 2012.05.11
4月15日「TOKYO FM&JFN presents EARTH×HEART LIVE 2012」が、さいたまスーパーアリーナで開催された。出演したのは、フィッシュマンズとサカナクション。両方とも“魚”にちなんだ名前を持つバンドである。
このイベントは、4月22日のアースデーにちなみ、地球環境の保護と保全をテーマに、1990年にスタートし、毎年行われている恒例企画。今年は“東日本大震災で被災した沿岸地域の生態系の快復と、海とともに生きる人々の暮らしの復興”をテーマに開催された。
最初にステージに登場したのは、フィッシュマンズ。1987年に結成され、初期はレゲエをベースにしたサウンドとポップなメロディで注目された。以降、ダヴやエレクトロニカを取り入れたサウンドに。その世界観は、テクノや後に音響系と呼ばれるジャンルのリスナーにも支持され、バンドの評価を高めた。1999年、ボーカル佐藤の急逝により活動を休止したが、2005年以降は、結成時からのメンバーであるドラムスの茂木欣一(現・東京スカパラダイスオーケストラ)がボーカルを務めたり、ゲストボーカルを迎えるなど、ライヴ活動を再開。2011年には、チケット・ソールドアウトの中、日比谷野外音楽堂でのワンマンライヴを大成功に納めた。
この日のゲスト・ボーカルは、前述した日比谷野音のライヴにも登場した原田郁子(クラムボン)。そして、の子(神聖かまってちゃん)。1曲目は「SEASON」。ボーカルは茂木。ロマンチックでメランコリックなメロディが響いていく。総勢7名が送りだすサウンドは、ビックバンドのゴージャスな印象か。と思えば、途中から一転。ひとつの音をディレイして響かせ、レゲエ、ダヴへと、見事に異空間へシフトしていった。続く「土曜日の夜」でボーカルをとったのは、の子。サイケデリックな照明の中、♪ だって今夜は土曜日の夜?♪と歌った後、の子は、マイクを通してこう言った。
「今日、日曜、だけどな!」
なんとも正直、そしていかした台詞だなと、思わず笑ってしまった。茂木欣一のMC。
「サカナクションとフィッシュマンズでライヴやるんで、このスーパーアリーナを思いっきり泳ぎ切りたいと思います」と挨拶した。続いて、軽快なピアノのフレーズが特徴のポップチューン「あの娘が眠ってる」へ。間奏でノイジーなギターを鳴らしていたの子は、持っていたギターをバーンと床に叩きつけ、そのまま前に出てきて、クラップで観客を煽った。ステージバックから、無数のムーヴィングライトが、白光を描き出す。それはまるで、海中をのぼっていく、気泡のようだった。その中を左手をひらひらさせながら、気持ちよさそうに揺れていた原田郁子が、言葉を紡ぎ出す。「WEATHER REPORT」。歌とリーディングの中間のような、独特の歌い回し。サウンドの中を言葉が漂い、流れ、ゆっくり沈み、ふわりと舞いあがっていく。サビではどこまでも伸びていく、透明感と浮遊力ある歌声も披露。エンディングでは、エレクトリック・ヴァイオリンの抒情的なサウンドが大きく響き、トランス感も濃厚な圧倒的な世界を作りあげた。
6曲終わったところで、茂木が再びマイクをとった。
「みんな、楽しんでる?」という会場への呼びかけに、即座に「はいはい! 楽しんでる!」と反応したのは、の子。この様子に、ステージ上で、メンバー全員が大爆笑。の子の「行こうぜ! きんちゃん!」の声を受け「MERODY」。タイトな演奏で聴かせるミディアムチューン。ボーカルを務めたの子が、この曲の終わりで、ステージから飛び降りるというサプライズも。
最後は、茂木、原田、の子の3人で「100ミリちょっとの」を。非常にレアなコラボレーションを披露し、フィッシュマンズは笑顔でステージを後にした。
転換の間、ステージ上空&左右に設置された巨大ビジョンに、主催者を含め、何組かのメッセージが流れる。
“魚つながり”でアナログフィッシュ、サカナくんなどが登場し、本イベントのテーマ東日本大震災で被災した沿岸地域の生態系の快復と、海とともに生きる人々の暮らしの復興”について、それぞれの言葉で、しっかりとメッセージを届けた。
1曲目「RL」のサウンドにのせ、「EARTH×HEART LIVE 2012、サカナクション!」という山口一郎の言葉ともに、サカナクションのライヴがスタート。メンバーが順番にステージに登場し、スタンバイする。ボーカルの山口は、ステージ中央に歩み出ると、オフィシャルグッズのタオルを目の前に掲げ、そして、叫んだ。
「いくぜー!」
旋回するブルーのライト。薄闇の中に浮かぶ山口のシルエットが、腰でリズムをとりながら、スッと右手を上げる。ダイナミックなリズムが大音量で客席に流れ込んで行く。「モノクロトーキョー」。Aメロからサビへの展開、そのコントラストが見事なダンスナンバー。ステージから放たれた、レッド、ブルー、イエローのライトが、海中を自在に泳ぐ楽園の魚を彷彿させ「セントレイ」。このパワー・チューンに、観客が一斉に、バウンドする。すっかりサカナクションのペースだ。興奮する客席を前に、山口のMC。「改めましてサカナクションです」と挨拶した後、気持ちを素直に言葉にした。
「メンバー一同、フィッシュマンズを聴いて育ってきた世代です。まさか一緒のステージに立てるとは思っていませんでした。だから今日はメンバー気合い入ってるんで、みなさん、楽しんで行ってください!」
中盤。リズムの妙でトランス感がじわじわと増長する「years」、楽曲全体に、漆黒の大海原がたゆたうような隆起を感じさせる「流星」と続いた後は、「エンドレス」へ。ギター無しで歌った山口は、最後、両手を強く握りしめ、シャウトした。
イントロのワンフレーズで大歓声があがる。後半へ向け、サカナクションが作り出す、リズムの饗宴のスタートだ。「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」、続いて「ホーリーダンス」と畳みかける。メンバー全員が、ステージ前方で縦一列に並び、サングラスにヘッドホンをし、飛び交うレーザー光線の中で、リズムを構築していく、アシッドなナンバー「DocumentaRy」。彼らが、サウンドで作り出したフィジカルなバイオリズムが、会場をひとつにして躍らせて行く。立て続けに「ルーキー」、まだまだ踊れ、もっとあがれと「アルクアラウンド」、そして最後は、トライバルなサウンドを木霊させ「アイデンティティ」で、観客のテンションを振り切った。
サカナクションとして、今、求められるステージをコンパクトにまとめ、しっかりやりきった、ある意味、鉄板の構成だったと思う。そして、鉄板で、フロアを爆発させた。そこに、彼らのライヴバンドとしての実力と、モンスターバンドとしての将来性を感じた。
アンコールに応え、再びステージに姿を表したサカナクション。「アンコールありがとう」と、山口がマイクをとった。この日のイベントの主旨を説明した後「音楽ができる事って、いろいろあると思う」と前置きし、こう話を続けた。
「みなさんの背中を押すとか、自分のために曲を作るとか。でも僕は、純粋に音楽を楽しむ時は楽しんだほうがいいと思う。音楽を楽しむことで、自然に誰かの役に立ったり、何かを支えることになったりしたら、そんな素晴らしいことはないと思います」
そして、フィッシュマンズと同じステージに立たせてくれたイベントと、観に来てくれた皆さんに感謝したいと述べ、さらに言葉をつないだ。
「(みんなが観に来てくれることで)地球環境が取り戻せるというのも、音楽の力だと思う。僕らも一生懸命音楽を作っていきますし、新しい音を運んだり、ライブを届けたり、みなさんの力になれたらいいなって思っております」
最後は「マジメくさくて申し訳ないんですけど」という言葉の後、こう締めくくった。
「今後もミュージシャンは一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします」
大歓声と大きな拍手の中、演奏されたのは「ナイトフィッシングイズグット」。ゆったりとしたメロディが、力強く、さいたまスーパーアリーナを泳いでいった。
このイベントの模様は、WOWOWライブチャンネルにてオンエアされる。
6月17日、「ミュージックスタイル JAPAN フィッシュマンズ×サカナクション」として、22時30分から放送予定。お見逃しなく。
【取材・文:伊藤亜希】
リリース情報
[フィッシュマンズ]Amazing Melodies
2012年04月11日
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2. BRAND NEW DAY
3. MIRAGELAND
4. G.W.A.(GREAT WHITE AIR)
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SAKANAQUARIUM2012“ZEPP ALIVE”
2012/05/31(木)ZEPP SAPPORO
2012/06/05(火)ZEPP NAMBA(OSAKA)
2012/06/06(水)ZEPP NAMBA(OSAKA)
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2012/06/19(火)ZEPP TOKYO
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